新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2020年07月31日
塗装ドラムとカバリングドラム、どっちがいいのん?Part 2
こんにちは。元ドラム/カホン職人のTetstuyaです。現在は木工職人などやりつつ演奏活動をしています。
前回の続き、、今回は塗装ドラムのことについてです。
こちら、2011年頃発売されたYAMAHAクラブカスタムです。
実はこちら塗装なんですね。スワールフィニッシュと言ってました。これはこちら、、
ラディックのModOrangeという色、、カバリングです。これを塗装で再現した。。というのがYAMAHAクラブカスタムのスワールフィニッシュです。
『こんなことカバリングでええやん!』って、誰も言わなかったのが我々、職人集団(笑)
今考えると、全員が職人魂を持ってたんですね。やっぱりクレージーです。
どうやってやったかというと、スワールオレンジの場合は下地に黄色を塗って、乾燥後にオレンジを吹き付けて乾燥前にヒモで模様を付けます。
付け方は、ドラム胴を回転させて、ピンと張ったヒモをランダムに胴体に押し付けるというやり方。
当然、胴体の回転スピード、ヒモの太さや種類、押し付ける強さ、塗料の粘度や乾燥具合で、付き方が全然違います。
それを、、全く同じではなく、逆に全然違うわけでない、、見た目は同じように見える模様に、何百台、何千代も作ってたんですから、、。塗装の職人技スゴイっすね。
僕はどちらかというと木工職人でしたので、尊敬の眼差しで見ていました。
これでみるように、他の塗装ドラム(ラッカー仕上げの場合)もそうですが、基本的には塗料は分厚くのっています。もちろん、カバリング(1mm前後)ほどではないです。
塗装工程は塗って→磨いて→、、の繰り返しを3回くらい繰り返し仕上げています。ですので、極力薄い、、ですが、塗料はムッチャのっています(笑)
これは、次に紹介するオープンポア仕上げとの決定的な違いは『導管』が埋まっているということなんです。
塗装は(カバリングも)見た目をよくするという役割もありますが、ドラム胴体を保護するという役割もありますんで、導管が埋まってるっていうことは湿気など外気の影響をほとんど受けないってことになります。
スワール塗装は、ただ単純に色を塗るだけではなく、塗装によって装飾を加えることでドラムの個性を出していました。
こういう装飾を加えるのは、当時のアブソリュートシリーズでもエンボスド×××や、ピンクフレイクス、など、etc..でありました。
当時はこう言って塗装を加飾塗装と言っていました。
今思えば、YAMAHAしか無かった?(僕が知らないだけかもしれないが、、)
塗装の場合、上記のように木材を隠ぺいする塗装と、杢目を見えるようにするシースルー塗装というのもあります。
塗膜の厚さの多少の違いはあれど、やはり基本的には工程は同じです。
また、シースルー塗装の中に希少性の高い美しい木目を基調としたドラムもあります。
これはいわゆる『ツキ板』と呼ばれる加工で、ざっくりというと木材の表面化粧で薄くスライスした『銘木単板』を貼り付けた上からシースルー塗装をしています。YAMAHAでいえばPHXなどそうです。
ここまで説明すると
『あれ?カバリングだけじゃなく、塗装のほうも胴体にかなり塗膜がのってたら、結局は胴体の鳴りを妨げているんちゃうん?』と思われると思います。
そうではなくて、カバリングも塗装の塗膜も胴体と一体となって胴鳴りをしているんです。
ですので、カバリングと塗装という違いはもちろんのこと、厳密にいえばそれぞれの色によって、鳴り方、響きなど、違うんでしょうけど、違いのわかる人いないと思います。。たぶん!(笑)
もちろん、明らかに違うのであれば製品化しないでしょうし。。
商品にするときには各メーカーは試作しています。これでもか、これでもか、、というくらい(笑)
塗装の話ではないですが、接着剤を変えようという試作をしたときがあって、、、(ドラムが合板である以上、接着剤の層は何層もある、、例えば6プライの胴体ということは1プライ、1プライの間に接着剤の層があります)、、、いろんな接着剤を試す中で、ある接着剤では全然胴鳴りがしない!っていうこともありました。・・このときは結局、接着剤は変えなかった。。というより、僕が入社してから一貫して接着剤は同じものを使用していました。
試作では、音はもちろんのこと、長く使えるように過酷な状況下でも耐えれる仕様かどうかまでチェックしており、それこそ、ハギさん(YAMAHAドラムを作った人)が『何十年経っても評価されるドラムを作ってるんだ。ドラム作って数年のメーカーと訳が違う』
と、言ってた通りの取り組みです。
オープンポア塗装について
僕がYAMAHAドラムを製作している当時、オープンポア塗装といえばヴィンテージナチュラルという色です。
画像はつい先日、ツイッターで知り合った方からいただきました。ビーチカスタムアブソリュートのセットです。ビーチの杢目が際立って美しい。。
これは現在のAbsolute Hybrid Mapleにもラインナップとしてあります。ビーチほどは杢目がでませんが、杢目を生かした塗装です。
ヴィンテージナチュラル塗装ができた当初(メイプルカスタムの最初)は、”今までのドラムと胴体の鳴り方が違う”と、カタログに音の波形まで載せて違いをアピールしていました。
確かに、塗膜自体は薄いし、というより、塗膜って言っていいかどうか?わからんっていうくらいです。。
胴体に色を付けてるっていう感じです。
当然、木材の導管は埋まっていないんで、胴体の振動を妨げるものは無いし、それでいて、湿気などの環境の変化からドラムを守るっていうのは、今考えれば画期的ですね。
ただ、このヴィンテージナチュラル、欠点がありました。今は改良されていると思うけど、経年変化で色が濃くなっていくのだー。んで、ドラムセットの色がバラバラになるという(笑)
当初、ヴィンテージナチュラルは経年変化で色が変わりますよー、最初はバラバラの色も年数が経てば、色が揃ってきます。ということをカタログに書いてありました。
でも、、しばらく経つとクレームが来るんですよねー。『色が違う』って言って。
いや、、『カタログに書いてあるやん!色が変わっていくって、、もっと待ってたら色が揃うねん』って、思ってカタログを確認したところ、、
あれ?書いて無い!(笑)
いつの間にかカタログから削除されてました(笑)
後々、アブソリュートシリーズが始まったころから、UV塗装という工法を取り入れ、色も安定しクレームもなくなってきました。
確かに、、『色がバラバラだけどそのうち色が揃う』って、『いつやねん!』って話ですよね。そんなことよくカタログに書いたなぁー、、って思います。
メイプルカスタム発売当初1991年ごろ、、古き良き時代です(笑)
オープンポアの塗装は他にもあると思いますが、塗装工程のことなど各メーカーともに詳しく書いてあるわけでないので、見た目で判断するしかないですね。
ラッカー仕上げ、いわゆるグロス仕上げはツヤツヤ、テカテカ。僕らは鏡面仕上げと言ってました。文字通り、鏡のような面に仕上がります。スマホで写真撮った時に自分の姿が胴体に写るのであれば鏡面仕上げです。
オープンポアはオイルフィニッシュなどがそうですが、ツヤのない木材の質感を残した感じです。あまり塗装やカバリングで音が違うとか気にもされたことがないとは思いますが、同シリーズでカバリングと塗装の設定がある場合は、このようなことも少々考慮されたらいいと思います。
とはいえ、前述の通り大きな違いがないので、自己満足の世界かと思いますが(笑)
塗装の話で印象に残っているのはYAMAHAレコーディングカスタムのリアルウッド塗装です。
現在の新レコーディングカスタムにも設定されている色ですが、旧レコカスでも神保彰さんのモデルでドラムセット『YD9000AJ』を2010年ごろに作った話です。
これはまた次回に詳しく解説いたします。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
前回の続き、、今回は塗装ドラムのことについてです。
こちら、2011年頃発売されたYAMAHAクラブカスタムです。
実はこちら塗装なんですね。スワールフィニッシュと言ってました。これはこちら、、
ラディックのModOrangeという色、、カバリングです。これを塗装で再現した。。というのがYAMAHAクラブカスタムのスワールフィニッシュです。
『こんなことカバリングでええやん!』って、誰も言わなかったのが我々、職人集団(笑)
今考えると、全員が職人魂を持ってたんですね。やっぱりクレージーです。
どうやってやったかというと、スワールオレンジの場合は下地に黄色を塗って、乾燥後にオレンジを吹き付けて乾燥前にヒモで模様を付けます。
付け方は、ドラム胴を回転させて、ピンと張ったヒモをランダムに胴体に押し付けるというやり方。
当然、胴体の回転スピード、ヒモの太さや種類、押し付ける強さ、塗料の粘度や乾燥具合で、付き方が全然違います。
それを、、全く同じではなく、逆に全然違うわけでない、、見た目は同じように見える模様に、何百台、何千代も作ってたんですから、、。塗装の職人技スゴイっすね。
僕はどちらかというと木工職人でしたので、尊敬の眼差しで見ていました。
これでみるように、他の塗装ドラム(ラッカー仕上げの場合)もそうですが、基本的には塗料は分厚くのっています。もちろん、カバリング(1mm前後)ほどではないです。
塗装工程は塗って→磨いて→、、の繰り返しを3回くらい繰り返し仕上げています。ですので、極力薄い、、ですが、塗料はムッチャのっています(笑)
これは、次に紹介するオープンポア仕上げとの決定的な違いは『導管』が埋まっているということなんです。
塗装は(カバリングも)見た目をよくするという役割もありますが、ドラム胴体を保護するという役割もありますんで、導管が埋まってるっていうことは湿気など外気の影響をほとんど受けないってことになります。
スワール塗装は、ただ単純に色を塗るだけではなく、塗装によって装飾を加えることでドラムの個性を出していました。
こういう装飾を加えるのは、当時のアブソリュートシリーズでもエンボスド×××や、ピンクフレイクス、など、etc..でありました。
当時はこう言って塗装を加飾塗装と言っていました。
今思えば、YAMAHAしか無かった?(僕が知らないだけかもしれないが、、)
塗装の場合、上記のように木材を隠ぺいする塗装と、杢目を見えるようにするシースルー塗装というのもあります。
塗膜の厚さの多少の違いはあれど、やはり基本的には工程は同じです。
また、シースルー塗装の中に希少性の高い美しい木目を基調としたドラムもあります。
これはいわゆる『ツキ板』と呼ばれる加工で、ざっくりというと木材の表面化粧で薄くスライスした『銘木単板』を貼り付けた上からシースルー塗装をしています。YAMAHAでいえばPHXなどそうです。
価格:755,370円 |
ここまで説明すると
『あれ?カバリングだけじゃなく、塗装のほうも胴体にかなり塗膜がのってたら、結局は胴体の鳴りを妨げているんちゃうん?』と思われると思います。
そうではなくて、カバリングも塗装の塗膜も胴体と一体となって胴鳴りをしているんです。
ですので、カバリングと塗装という違いはもちろんのこと、厳密にいえばそれぞれの色によって、鳴り方、響きなど、違うんでしょうけど、違いのわかる人いないと思います。。たぶん!(笑)
もちろん、明らかに違うのであれば製品化しないでしょうし。。
商品にするときには各メーカーは試作しています。これでもか、これでもか、、というくらい(笑)
塗装の話ではないですが、接着剤を変えようという試作をしたときがあって、、、(ドラムが合板である以上、接着剤の層は何層もある、、例えば6プライの胴体ということは1プライ、1プライの間に接着剤の層があります)、、、いろんな接着剤を試す中で、ある接着剤では全然胴鳴りがしない!っていうこともありました。・・このときは結局、接着剤は変えなかった。。というより、僕が入社してから一貫して接着剤は同じものを使用していました。
試作では、音はもちろんのこと、長く使えるように過酷な状況下でも耐えれる仕様かどうかまでチェックしており、それこそ、ハギさん(YAMAHAドラムを作った人)が『何十年経っても評価されるドラムを作ってるんだ。ドラム作って数年のメーカーと訳が違う』
と、言ってた通りの取り組みです。
オープンポア塗装について
僕がYAMAHAドラムを製作している当時、オープンポア塗装といえばヴィンテージナチュラルという色です。
画像はつい先日、ツイッターで知り合った方からいただきました。ビーチカスタムアブソリュートのセットです。ビーチの杢目が際立って美しい。。
これは現在のAbsolute Hybrid Mapleにもラインナップとしてあります。ビーチほどは杢目がでませんが、杢目を生かした塗装です。
送料無料!!YAMAHA(ヤマハ)スネアドラム AMS1460 Absolute Hybrid Maple Vintage Natural ハイブリッドメイプルシリーズ ソフトケース付き!! 価格:43,890円 |
ヴィンテージナチュラル塗装ができた当初(メイプルカスタムの最初)は、”今までのドラムと胴体の鳴り方が違う”と、カタログに音の波形まで載せて違いをアピールしていました。
確かに、塗膜自体は薄いし、というより、塗膜って言っていいかどうか?わからんっていうくらいです。。
胴体に色を付けてるっていう感じです。
当然、木材の導管は埋まっていないんで、胴体の振動を妨げるものは無いし、それでいて、湿気などの環境の変化からドラムを守るっていうのは、今考えれば画期的ですね。
ただ、このヴィンテージナチュラル、欠点がありました。今は改良されていると思うけど、経年変化で色が濃くなっていくのだー。んで、ドラムセットの色がバラバラになるという(笑)
当初、ヴィンテージナチュラルは経年変化で色が変わりますよー、最初はバラバラの色も年数が経てば、色が揃ってきます。ということをカタログに書いてありました。
でも、、しばらく経つとクレームが来るんですよねー。『色が違う』って言って。
いや、、『カタログに書いてあるやん!色が変わっていくって、、もっと待ってたら色が揃うねん』って、思ってカタログを確認したところ、、
あれ?書いて無い!(笑)
いつの間にかカタログから削除されてました(笑)
後々、アブソリュートシリーズが始まったころから、UV塗装という工法を取り入れ、色も安定しクレームもなくなってきました。
確かに、、『色がバラバラだけどそのうち色が揃う』って、『いつやねん!』って話ですよね。そんなことよくカタログに書いたなぁー、、って思います。
メイプルカスタム発売当初1991年ごろ、、古き良き時代です(笑)
オープンポアの塗装は他にもあると思いますが、塗装工程のことなど各メーカーともに詳しく書いてあるわけでないので、見た目で判断するしかないですね。
ラッカー仕上げ、いわゆるグロス仕上げはツヤツヤ、テカテカ。僕らは鏡面仕上げと言ってました。文字通り、鏡のような面に仕上がります。スマホで写真撮った時に自分の姿が胴体に写るのであれば鏡面仕上げです。
オープンポアはオイルフィニッシュなどがそうですが、ツヤのない木材の質感を残した感じです。あまり塗装やカバリングで音が違うとか気にもされたことがないとは思いますが、同シリーズでカバリングと塗装の設定がある場合は、このようなことも少々考慮されたらいいと思います。
とはいえ、前述の通り大きな違いがないので、自己満足の世界かと思いますが(笑)
塗装の話で印象に残っているのはYAMAHAレコーディングカスタムのリアルウッド塗装です。
価格:49,500円 |
現在の新レコーディングカスタムにも設定されている色ですが、旧レコカスでも神保彰さんのモデルでドラムセット『YD9000AJ』を2010年ごろに作った話です。
これはまた次回に詳しく解説いたします。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。