2008年01月12日
猫姫の舞踏 2
「今日もうまく行ったね、お姉ちゃん」
ブラン――白い方の「猫」が、ホクホクとした笑みを浮かべながら、ノアール――黒い方の「猫」に声をかける。
「そうね……」
だが、はしゃぐブランとは対照的に、ノアールは静かな足取りで、夜道を歩いている。2人の性格も、その毛色とそっくりなのだ。
「ねえ、コレ見てよ! 金貨だよ、金貨! 貴族まで、とりこにしちゃったんだね」
「へぇ」
ノアールは妹が差し出す金貨を手に取り、そこでようやく、明るい声を出した。
「3枚、か。いいわね、しばらくは落ち着いて暮らせるわ」
「そうだねっ」
ブランはまた、金貨を手にとって、それをポンポンと空中に投げ始めた。
「はいっ、これがブラン・フロウライトのお得意、キラキラジャグリングにござい……」「やめなさい、ブラン」
ノアールはブランの投げていた金貨を空中でパシパシとつかみ、ブランをたしなめる。
「まだ宿にも戻ってないのよ。夜道でそんなに目立つこと、しちゃダメ」
「え〜」
ブランは名残惜しそうに、姉の手を見つめている。
「えー、じゃないでしょ。この街はそんなに治安が良くないんだから。わざわざ襲われるようなこと、しないでよ」
「はいはーい」
姉の説教を、ブランはうざったそうに手を振って、聞き流す。
いつもならこれは、単なる「姉の心配性」で済まされたはずだったのだが、今回ばかりは勝手が違った。
二人の少し後ろで、いかにも柄の悪そうな男が3人、ブランの投げた金貨を見ていたのだ。男たちは顔を見合わせ、ニヤリと笑って――「猫」たちを追いかけた。
(黄輪)