2008年03月23日
猫姫の舞踏 19
「あ・・・いや、無理に話さなくてもいいんだぜ
理由なんかどうでもいいさ」
「ううん
あなたはどうあっても一緒についてくるつもりみたいだしね
それならそれでわたしも腹をくくるわ
そして・・・そうするのなら・・・
カイン、あなたにも知っていてもらったほうが都合がいいかもしれない」
「ふむ・・・
たしかに俺はあんたらにくっついてくつもりだしな
いつまでって聞かれたらそれはわからんが・・・
当分の間はボディガードがわりでもやっとくぜ」
ふ・・・とノアールはさびしそうな笑顔を見せて
「わたしたちの旅の理由・・・
それは『探し物』よ
あるモノを探しているの」
「あるモノ・・・?
それがなんだか聞いてもいいのかな」
ノアールは失くしたり盗られたりしないように、いつも腰にがっちりと留めているバッグから、一枚の写真を取り出してカインに見せた。
やせてはいるが、優しい笑顔の女性が赤ん坊を抱いている。
「わたしたち姉妹の・・・母よ」
「おお こりゃべっぴんさんだな
じゃぁ、この赤ん坊がノアールか」
「そう・・・これはわたし
この写真が撮られたときは貧しいけど幸せな時間だったらしいわ
これから2年後にブランが生まれたの
そして・・・
ブランが生まれてからまた2年後・・・母は亡くなったわ」
「え・・・そうだったのか・・・
つらいこと思い出させちまったな 悪かったな」
「ううん
もうつらさは忘れてしまったわ
ただ・・ときどきむしょうに恋しくなるだけ・・・」
ノアールはさびしげな笑顔を写真の母親に向けていた。
「それじゃ・・さがしものってのは?」
「そう、いわゆる形見の品ってやつかな
わたしたちが探しているのはこれよ」
そう言ってノアールは写真の女性の胸元に光る首飾りを指差した。
「この首飾り・・・これをさがしているの」
(キリン)