2008年03月15日
猫姫の舞踏 17
改札を出て、三人それぞれにあたりをきょろきょろと見回す。
まずは今夜の宿を見つけなければいけない。
「うーん
ふたりとも、ちょっとここで待ってな
すぐ戻ってくっから、どこにも行くなよ?」
そう言い置いてカインがあっという間に姿を消した。
「なんか落ち着かないヤツだねぇ、カインって
おねぇちゃん、どうするの?
まくなら今だと思うけど・・・・置いてっちゃう・・・?」
「たぶんすぐに追いかけてくるでしょ
なんとなくだけど簡単にまいたりできるヤツじゃなさそうだわ
ちょっと信用してみよっか・・・」
「うわ!
どうしたの、おねぇちゃん!
まさか・・・あのお弁当で惚れちゃったとか?」
ブランがからかうのに、そのおでこを人差し指で弾いてにらむノアール。
「ブランじゃあるまいし、食べ物でつられたりなんかしないわよ」
(・・・・そう・・・・
なんとなくだけど信じてみたい気がする・・・
なぜだろう・・・・?)
そしてふと思い出した。
そう、カインはあの夢で何度も見た魔術師フォスに似ているのだ。
体型はかなり違う・・・カインは細身ながらも筋肉質でかよわさなどない。
顔が・・・どことなく面影のようなものが似ているのだ。
列車の中で夢を見たばかりのときにカインがそこにいたからそう感じたのかもしれない。
そうかもしれないけど・・・なんだろう・・・・
その人が持つ空気のようなものが共通しているように思えた。
なにより、「猫」としての自分の勘が、カインを信用してもいいと伝えていた。
たいして待つほどもなくカインが駆け戻ってきた。
「おっけー!
きょうの宿を見つけてきたぜ
歩いてすぐそこだ
メシ付きで格安で話つけてきた、いこうぜ」
「え・・・?」
ノアールもブランもあっけにとられながら
さっさと歩きだしたカインの後を追った。
「ちょっと待って!
部屋はちゃんと別々にあるんでしょうね?」
「あ・・・当たり前じゃねーか
俺は男なんだぜ・・・・」
意外なことにカインが真っ赤になっている。
ノアールは思わずくすりと笑ってしまった。
もしかしたらいい旅になるのかもしれない、という気持ちになった。
(キリン)