2008年02月28日
猫姫の舞踏 15
しゃべる余裕もなく半分ほど食べたブランが
「んぐ。。。それにしてもこのお弁当おいしいなぁ
おなかがすいてたってこともあるけど・・・
すっごいおいしいよ〜」
「たしかに・・・
わたしもおなかすいてはいたけど
それを差し引いてもかなりおいしいわ
お店なんてどこも開いてなかったのに
どこにこんなお弁当売ってたの?」
「ふふ・・・だろだろ?
あれよ、昨夜帰ってからそれ作るのに結局一睡もしてねえんだ
次の駅までだって2時間はあるしな
ちょっとごめんよ・・・・よいしょっと」
カインはそういうと向かい合って食べているふたりの隣に入り込み
座ったと同時に小さくイビキをかきはじめた。
「ちょ・・・ちょっと
ずうずうしいわね あっちいきなさいよ!」
ノアールが眉をしかめて追い出そうとするがもう眠ってしまっている。
「なんなのこいつは・・・意味わかんないやつねもぉ!
ブラン、次の駅でこいつ置いて降りるからね!」
「ちょっとまってよおねぇちゃん
いまこの人さ
『これ作るために一睡もしてない』って言わなかった?
ってことはこのお弁当、この人が作ったんだよ!?」
「え・・・そういやそんなこと言ったわね・・・」
「すごぉぉぉぉい!
こんなおいしいもの作れるなんてすごいよぉぉ
もう連れてっちゃおうよ
毎日おいしいごはん食べれるんだよ?」
「なにバカなこと言ってんのよブラン
ますます得体が知れないわ
とにかくこのまま寝せておいて、次でそっと降りるわよ」
「ちぇ・・・
昔から『料理のうまい人に悪い人はいない』って言うのにー」
「そんなコトワザ聞いたことないわよ」
苦笑しながら次の駅で降りたあとのことを考え始めたノアールは
小さなため息をついた。
(さて。。。どうしようかな
次の町にはあまりいい宿もなかったはずだし・・・
とりあえず一泊だけして明日また早朝に予定の町へ向かうかぁ)
ふと向かいを見ると、おなかがふくらんだブランが居眠りを始めていた。
ノアールもうとうとと眠くなる。
(んー・・・おなかいっぱいだと眠くなっちゃうなぁ
朝はやかったしなぁ・・・ふあぁぁ)
ほんのちょっとだけ・・・と窓に頭をつけてうとうとしてしまう。
次の駅への到着を告げる車内アナウンスで目が覚めた。
「いけない!
つい眠っちゃったわ・・・ブラン!」
「おいおい・・・よく眠ってんだ、寝せといてやれよ
目的の町まではまだ半日かかるんだろ」
「カイン・・・!
起きてたの!?」
「もちろんさ
ふたりが眠ってんのに、護衛の俺が寝てちゃ役にたたねえや
まぁ、ちょっとでも異様な空気がありゃすぐ目は覚めるがな」
「護衛って、なに言ってんのよ・・・
一緒にいくなんて一言も言ってないからね
お弁当ひとつでまるめこまれたりしないわ」
「ちぇ・・・
まぁ、とにかく次の駅で降りるのはやめときな
あそこはろくな町じゃねぇ
あとをどうするにしろ、いまはこの子寝せといてやろうじゃないか
あんたも空気には敏感だろ
俺は悪さしない、約束するから少し眠りな」
ブランの寝顔を見ていると起こすのもかわいそうに思えた。
どっちみち、カインは一筋縄でいける男ではなさそうだ。
予定の町までになんとか考えればいいと思いなおしてノアールは再び目を閉じた。
(キリン)