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日曜東京〜第32回ジャパンカップ(GT)

一昨日の「展望」のコラムでは、半ば冗談、半ば本気で「オルフェーヴルが大外になってほしい」などと書いてしまったが、まさか本気で大外に入ってしまうとは思わなかった。
しかし、これで馬券はガゼンおもしろいことになってきた。

おそらく内、中、外では、距離を無視したとしても、それぞれ「3馬身」ずつくらいは楽に差があると思う。
もちろん内に行けば行くほど有利である。
だから、おそらく最内を通りそうなビートブラックと、終始外めを追走しそうなオルフェーヴルは、オルフェーヴルの距離損を無視したとしても6馬身以上の差があるという計算になる。

当然ビートブラックとオルフェーヴルの力関係が6馬身程度におさまるはずはなく、距離損を考えてもおそらくオルフェーヴルはビートブラックには負けないはずである。
実際天皇賞・春ではビートブラックの奇跡的な勝利があったわけだが、あれを「奇跡的」と思う時点で、今回ビートブラックが先着することはほとんど考えられない。

ただ、ビートブラックよりも力がある馬が不利なくインを回ってきたとき、いくらオルフェーヴルと言ってもこれを負かすのは困難ということになる。
たとえばジェンティルドンナが終始インを回ってきたらどうなるか。

ジェンティルドンナの場合、先に行けば行けるだけに、今回の「15番枠」というのは少なくともありがたくなかった。
ただでさえテンションの高いタイプで、しかも先入れの奇数枠になってしまったからだ。

外枠を引いた時点で岩田騎手は先行策も視野に入れたはずだが、しかしあのテンションで、異常に盛り上がるスタンド前の外枠発走、スタート後から気合いを入れて先行させるには非常に勇気が必要である。

それに、ジェンティルドンナが早めの競馬になるとすると、有力各馬もみな早めの競馬になり、考えられている以上にスローには落ちにくい可能性もある。
(金曜夕方)現在、ジェンティルドンナはオルフェーヴルと差のない2番人気である。

岩田騎手、コメントでは「逃げても勝てる」などと強気な発言をしているようだが、私は、ジェンティルドンナは行かないと思う。
というより、岩田騎手にはそこまでの度胸はないと思う。

とすると、予想された通りのスローになる。
ビートブラックがどの程度離して逃げるかにもよるが、今年のジャパンカップ、同じ外枠でも楽に先行できそうなトーセンジョーダン(8枠16番)から入る。

正直状態は不安だったが、追い切りの様子を見ると万全とまでは言えないものの、思われている以上に今回は内容がともなっていたかな、という印象。
おそらく爪の不安も解消されつつあるのではないか。

注目は鞍上のスミヨン騎手。
池添騎手が凱旋門賞でオルフェーヴルから降ろされてしまい、今回再びコンビを組むにあたって、「池添騎手に意地を見せてほしい」という意見があちこちで聞かれるが、しかし考えてみればこれも妙な話で、一番意地を見せたいのは池添ではなく、実はスミヨンのはずである。

凱旋門賞の大舞台に急きょ抜擢された、池添騎手とは比べ物にならないくらい技も名声もある(とされる)ジョッキーが、わずか2戦でオルフェーヴルから降ろされてしまったのである。
しかも、スミヨンは日本のファンから凱旋門賞の騎乗を厳しく糾弾されるさなかである。

それに当の凱旋門賞では、誰よりも信頼していると思われたオルフェーヴルに、形としては完全にソッポを向かれてしまったのだ。
オルフェーヴルによってプライドを傷つけられ、顔に泥を塗られたのは池添ではない――
それは誰あろう、スミヨンのほうである。

私はスミヨンこそ黙ってはいないと思う。

そして、昨年に比べれば展開はあまり向きそうもないかな・・・という不安があり、正直あまり今年は乗り気ではないのだが、昨年本命にしたジャガーメイルを今年も狙う。
イン有利で前半スローであれば好位キープに問題はなく、天皇賞ではちょっとはさまれる不利がありながらあの内容だから、相手が強くてもここは絶好の走りごろではある。

府中巧者でノーマークの強みを生かせれば、さすがに頭まではどうかと思うが、いちおう今年は対抗の評価にする。

そして、限りなく本命に近い単穴がオルフェーヴル。
力関係を論じるのはナンセンスだし、馬場差はちょうどいいハンデだろう。
ただ、オルフェーヴルは「怪物」などと言われているし、まあ確かにそれは否定できない部分もいろいろな面でみせてくれてはいるが、しかし別にオルフェーヴルは「オバケ」などではなく、生きたサラブレッドである。

オルフェーヴルを「化け物」や「怪物」というこの世のものとは思えないようなとらえ方で見るのではなく、「生物(「せいぶつ」、「なまもの」ではない)」としてとらえたとき、同じ2400mを走るのに20秒も異なる馬場差を生身のサラブレッドが克服できるとはどう考えても思えないのである。

ディープインパクトにも同じことが言えるが、いや、あのときのJCのメンバーと今回のメンバーはあまりにもレベルが違いすぎる。
ハーツクライが致命傷を負ったまま出走したあのJCは、ディープインパクトを除けばほぼGVのレベルだった。

もちろん単純な能力比較ではあまりにも力が違いすぎるから圧勝のシーンも十分あるが、しかしこのオルフェーヴルという馬、過去の三冠馬、あるいはそれ以外の名馬たちと比べると、「ずいぶん難しい馬になってしまった」という印象がぬぐえない。

ソレミア陣営はそれを感じとっての例の発言だったと思う。
正直、私もそれが不安なのである。
それは、もうオルフェーヴルという馬は「(人間から見て)まともに走る」ことに価値を見出していないのではないかと、そんな気がしてしまう不安である。

そして、何よりもそういうオルフェーヴルにファンは魅力を感じているし、逆に、たとえ圧勝したとしても、人間に対して妙に従順になってしまったオルフェーヴルの姿をいつか目の当たりにするのではないかということも、同時に不安なのである。

まあ私はせいぜい20年ちょっとというひどく浅い競馬キャリアではあるが、少なくともこんなふうにいろいろと考えさせられた馬というのは、今までにいなかった。
オルフェーヴルという馬は、走れば走るほどどんどん理解不能になり、そしてどんどんひき寄せられてしまうのである。

もしかしたらこれがラストランになるかもしれない。
そして、実は私はもうこれ以上オルフェーヴルを走らせる必要などないとも考えている。
もしかしたら最後になるかもしれないオルフェーヴルの走りを、勝ち負けは別として、しっかりとこの目に焼き付けたいと思う。

押さえの筆頭はビートブラック。
やはりこの馬は府中の最内枠に入ったら怖い。
「まともなオルフェーヴル」がいないとすると、実はこの馬にもチャンスはわずかでもあると思う。

そして当然ルーラーシップ(7枠13番)、ダークシャドウ(5枠10番)、間隔を敢えて開けたローズキングダム(6枠12番)の変わり身、そして最後に、正直状態がよいとはまったく思えないものの、凱旋門賞馬ソレミア(7枠14番)の「奇跡再び」をちょっと期待してみたい。

この距離のほうが合うとされるフェノーメノは、本当は少し長いと見ている。
注目のジェンティルドンナは、さすがにこのメンバーに入ってしまうと、勝ち負けまでは難しい気がするし、三冠牝馬に中途半端に「△」も失礼。
それに、2番人気ではとても買えない。

ダービー&天皇賞馬エイシンフラッシュ(4枠8番)は、展開は一番向きそうだが、上積みという点でやや見劣る気がする。
それならば、上がり馬のメイショウカンパク(4枠7番)と、足さばきを見る限り一番日本の馬場に適性がありそうな英国馬・ジャッカルベリー(6枠11番)を少し押さえたい。

◎ トーセンジョーダン
〇 ジャガーメイル
▲ オルフェーヴル
△ ビートブラック
△ ルーラーシップ
△ ダークシャドウ
△ ローズキングダム
△ メイショウカンパク




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