2017年07月29日
4-4. 英国経済指標DB(2017年7月最終版)
英国の経済指標発表前後の取引はGBPJPYで行っています。
さて、2017年度のトレンド判断は、
がポイントです。
8月4日、IOD(経営者協会)が英政府に対し「EU離脱の合意内容を策定することを求めた」と報道されています。この合意内容は最終的なものでなく、過渡的なものでも構わない、ということのようです。秩序だった離脱を円滑に進めることを企業に保証するため、政策目標を具体化して欲しいそうです。
こんなだから、英首相は総選挙で勝ちたかったのでしょう。企業なら、成算が見通せない段階で合併や撤退を先に発表するのでしょうか。
6月総選挙の結果、与党が議席を減らしました。
英首相は、棚ボタ式に首相になったイメージ払拭を図り、EU離脱交渉の国内指導力強化を狙っていたものの、その目論見は外れました。前首相のEU離脱国民投票といい、英国はやらなくてもいい選挙を行って、ダメージを負うことが続いています。
政権基盤が弱いと、対EU交渉での譲歩が難しくなります。
経済指標は、4-6月期成長率が1.7%に鈍化しました。
多くの解説記事で個人消費低迷が原因に挙げられています。それは、小売売上高前年比が昨年10月をピークに低下傾向が続いていることで確認できます(6月は改善)。それでも、物価上昇率は賃金上昇率を上回り続けています。
物価は、6月分の上昇がやや鈍化したものの、それでもコアCPI前年比は+2.4%、CPI前年比は+2.6%なので大きな上昇です。
利上げの可能性が減って、成長率が今後更に鈍化する可能性を想定すると、GBPは売られる要素が増えつつあるのでしょう。
BOEは、そうそう簡単に政策変更しないという話があります。もちろん、これは過去の実績で、BOE総裁もMPC委員も実際には入れ替わっているのだから、こんな話を当てにはできません。
3月MPCでは、昨年7月以来の利上げ主張する委員が現れました。6月MPCでは利上げ主張委員が3名に増えました。昨年6月の国民投票以降のGBP安による物価が急上昇が利上げ派の主要論拠で、賃金上昇への悪影響(景気への悪影響)の懸念が様子見派の主要論拠です。
6月15日のMPC声明では「政策変更にあたっては、EUの新たな貿易協定締結やその移行期間設置の合意など、EU離脱交渉次第」という条件が挙げられました。6月下旬には、BOE総裁が利上げ検討の必要性について言及しました。但し、利上げに当たっては「物価上昇に伴う消費減速を企業投資が補えるか」を前提に挙げていました。
利上げ気運にブレーキをかけた訳です。
そして、利上げ気運の高まった8月1日のMPCでは、利上げ派理事が1名退任したこともあって、利上げ賛成派が2名に減りました。一気に翌朝までにGBPJPYは300pips近い下落となりました。
退任した利上げ派理事1名の代わりに、別の理事が利上げ賛成に回るかも知れない、という予想もあったので、発表までGBPが下がっていなかったのです。
(分析事例) BOE政策金利(2017年8月3日発表結果検証済)
直前10-1分足と直後1分足との方向一致率は68%なので、取引参加者は3回に2回の割合で発表直後の反応方向を当てています。英国は金融の国であり、予想分析もそこに乗って取引する人も、平均的な我々より平均的に上手なのかも知れません。
危ないので、大きな発表があるときは、追撃に徹した方が良いと思います。
先の総選挙での保守党公約は、移民削減(年間10万人未満)・2025年頃までの財政赤字解消・消費税を上げずに2020年までに法人税を17%まで引き下げ・高額役員報酬問題への歯止め・労働者の権利拡大・電気ガス料金の上限設定・キツネ狩り禁止法廃止の採決、等がありました。英国にとって都合が悪い内容ならEUと合意しない方がマシ、という首相発言も公約にあたるでしょう。
ところで、キツネ狩りが英国でそれほどのテーマだなんて、知っていましたか。そんなこと言ってる場合か、という気もします。
製造業の景況感が悪化し始めると、サービス業もそれを追いかける、という言い伝えがあります。近年、この法則に当てはまらない事例が多々見受けられます。
8月1日発表された7月分製造業PMI、8月3日に発表されたサービス業PMIは、ともに前回より改善しました。上昇再開と言えるほどの改善ではありません。
両指標ともに、昨年最悪期(EU離脱国民投票前後)よりも、まだかなり高い水準にあります。
(分析事例) 製造業PMI(2017年8月1日発表結果検証済)
(分析事例) サービス業PMI(2017年8月3日発表結果検証済)
製造業PMIは、反応方向を確認したら早期参加して、反応が伸びて利確の機会を待てば良いでしょう。
少なくとも最近のサービス業PMIは、EURGBPの月足の上下動と逆相関の関係が見受けられます。数日前に発表される製造業PMIの結果との相関は「無くはない」と言った程度しかありません(60%未満、50%以上)。
主要国でCPI(消費者物価指数)・RPI(小売物価指数)・PPI(生産者物価指数)が一度に発表されるのは英国だけです。CPIやRPIの発表結果が揃って改善/悪化すると、驚くほど大きく反応するので注意が必要です。
BOEの目標インフレ率は年2%程度です。既にコアCPIは+2%を上回っています。発表結果が市場予想を上回っても、必ずしも素直に陽線で反応するとは限らない水準に達しています。がしかし、物価上昇を抑え込むために、6月下旬にBOE総裁は利上げ検討開始についてコメントしました。これで指標結果と反応方向の一致が、まだ暫くは続くと見込めるようになりました。
7月18日発表結果は全体的に物価上昇率が鈍化しました。それでもコアCPI前年比は+2.4%、CPI前年比は+2.6%なので、鈍化と言っても大きな物価上昇が続いています。
(分析事例) 物価指標(2017年7月18日発表結果検証済)
過去の傾向は、早期参入・早期利確の追撃に適した指標です。指標発表から1分を過ぎてからは、初期反応の値幅を削ったり反転することの方が多くなっている点に注意しましょう。
反応が大きい指標なのであまり勧められませんが、直後1分足の事前差異との方向一致率が80%近くある指標です。指標発表前に事前差異と同方向にポジションを取得し、指標発表直後に跳ねたら利確であれ損切であれ、ポジションを解消するやり方も可能です。
多くのFX会社の経済指標カレンダーに示されている失業保険受給者数では反応しません。少なくとも直近の2-3年のデータを整理すると、平均所得(含ボーナス)の市場予想との多寡によって反応方向が決まりがちです。
7月12日発表では、平均時給が前回結果を下回り、失業率と失業保険申請件数が前回結果より改善しました。市場予想との関係で、反応は陽線となりましたが、内容はあまり良くありません。3-5月の実質賃金は、相変わらず物価上昇率を下回っていることを指摘する解説記事がありました。
(分析事例) 雇用統計(2017年7月12日発表結果検証済)
指標発表直前に比較的大きく動き、その方向が発表直後の反応方向を3回に2回程度当てているという怪しい指標です。発表から1分を過ぎると、どちらに反応するかがわからない指標なので、追撃は早期参加・短期利確が基本です。
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は2.0%となっていました。最新の見通しでは、2017年が1.7%、2018年が1.5%です。対する米国は2017年・2018年ともに2.1%(4月時点で2017年は2.3%)で、EUはともに1.9%・1.7%となっています。
EU離脱国民投票後、一時は成長がマイナスになるという解説記事さえあったものの、2016年はかなり好調でした。それだけに2017年は成長鈍化と見込まれていました。ひょっとすると、その兆しが現れ始めたのかも知れません。
6月30日、GDP確定値は前期比+0.6%・前年比+2.0%で、改定値と同値でした。+2%の経済成長は米国同期の+1.4%より優位でした。政策絡みでもFRBの次政策が「資産規模縮小で利上げでない」一方、BOEは「利上げの検討を向こう数か月以内に始める(6月28日BOE総裁発言)」ですから、GBPUSDはもう少しの上昇余地があると思われました。
がしかし、7月26日に発表された4-6月期GDP前年比速報値は1.7%で、1-3月期確定値+2.0%を下回りました。+1.7%というのは悪い数字ではありません。市場では、発表直後こそ陽線で反応したものの、その後は反転陰線で反応しました。
この数字では8月3日のMPCで利上げ派が強く出られないと捉えられたからでしょう。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月26日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年5月25日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月30日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
他の国の実態指標ではあり得ないほど大きく反応します。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、平均的には指標への反応が、上に小さく下に大きくなると思われます。
(2-1) 小売
7月11日に発表された6月分BRC(英小売連合)小売売上高調査前年比は2か月ぶりにプラス転換していました(+1.2%)。
7月20日に発表された6月分小売売上高指数前月比・前年比とコア小売売上高前月比・前年比は、全て前月を上回っていました。指数・コア指数ともに前年比が昨年末から明らかに低下傾向でした。来月発表で今月発表結果を上回れば、その傾向が上昇転換したようにもグラフ印象が変わります。
8月発表予定の7月集計分の良し悪しを考察する指標が発表され始めました。
8月4日に発表された7月分ハイストリート既存店小売売上高前年比△0.6%でした。ハイストリートというのは、表通り店舗のことで、細かな定義はよくわかっていません。7月下旬の天候はあまりよくなかったそうです。
(分析事例) 小売売上高指数(2017年7月20日発表結果検証済)
本指標は、発表結果の良し悪しを、直前10-1分足の方向が示しがちです。がしかし、反応の持続性に不安があるので、追撃はほどほどにしておかないと痛い目に遭いかねません。
(2-2) 生産
7月27日、英政府は2040年以降にガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する旨、発表しました。知らなかったのですが、与党保守党は2050年までにほぼ全ての自動車から排気ガスを無くすことを公約に掲げていたそうです。既に仏国が同様政策を発表していたことも知りませんでした。
この政策は巨大な社会インフラ投資と自動車メーカーの設備投資と石油需要の縮小を意味します。2040年なんてまだまだ先のことです。がしかし、つい20年前に起きた携帯電話普及や、15年前に起きた液晶TV普及や、つい5年前に起きたLED照明普及を覚えているでしょうか。工業製品は普及率が一線を超えると、一気に価格低減と普及率急増が起きて旧製品を駆逐します。
2040年なんて、そんなに時間が要らないかも知れません。
7月7日に発表された5月分鉱工業生産指数前月比は、自動車生産が昨年2月以来の大幅減少となったことを受けて低下しました(△0.1%)。この結果は上述の新政策発表とは関係ありません。鉱工業生産指数は、1月にマイナス転換してから(4月分を除き)ややマイナス状態が続いていました。但し、直近では昨年11月分(+2.1%)・12月分(+1.1%)が大きかっただけで、2015年1月分から今回発表までプラスだったことは13回(全29回)と半数以下です。もともと長期凋落傾向があったのではないでしょうか。
(分析事例) 鉱工業生産指数(2017年6月9日17:30発表結果検証済)
事前差異・事後差異・実態差異のマイナス率が各85%・70%・78%と、異常な偏りが見受けられます。これは、調査期間において、市場予想は前回結果より低めに偏っており、発表結果は前回差異よりも市場予想よりも低くなりがちだった、ということです。
(2-3) 住宅
ほぼ反応しないので、取引は行いません。
7月13日に発表されたRICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数は+7でした。長周期の波が観察され、前回の波の底はEU離脱国民投票直後の2016年7月でした(+6)。その後11月に直近ピーク(+30)をつけてから現在は下降中です。来月は2016年7月の波底を下抜けるかに関心があります。
一方、7月17日に発表されたライトムーブ住宅価格前月比は2か月ぶりにプラス転換(+0.1%)しました。ライトムーブも全体的には2017年2月を直近ピークに、価格上昇率が低下傾向になっており、マイナス再転換を予感させています。
7月7日に発表された5月分貿易収支は△119億GBPの赤字でした。英国貿易収支は月々の上下動があるものの、長期的にその上下動は赤字拡大側に推移しています。
さて、2017年度のトレンド判断は、
- 6月総選挙でメイ首相の立場がどれぐらい強まるか
→与党議席減で首相進退論が出たり、閣内不協和の報道がでています - BOEが物価高にいつどの程度の対策を講じるか
→6月までに利上げ派のMPCメンバーが3名に増えたものの、成長率とインフレ率上昇が鈍化しています - ブリグジット交渉進展内容
→9月独総選挙が終わるまで、劇的進展は期待できません
がポイントです。
8月4日、IOD(経営者協会)が英政府に対し「EU離脱の合意内容を策定することを求めた」と報道されています。この合意内容は最終的なものでなく、過渡的なものでも構わない、ということのようです。秩序だった離脱を円滑に進めることを企業に保証するため、政策目標を具体化して欲しいそうです。
こんなだから、英首相は総選挙で勝ちたかったのでしょう。企業なら、成算が見通せない段階で合併や撤退を先に発表するのでしょうか。
【4-4-1. 7月概観】
6月総選挙の結果、与党が議席を減らしました。
英首相は、棚ボタ式に首相になったイメージ払拭を図り、EU離脱交渉の国内指導力強化を狙っていたものの、その目論見は外れました。前首相のEU離脱国民投票といい、英国はやらなくてもいい選挙を行って、ダメージを負うことが続いています。
政権基盤が弱いと、対EU交渉での譲歩が難しくなります。
経済指標は、4-6月期成長率が1.7%に鈍化しました。
多くの解説記事で個人消費低迷が原因に挙げられています。それは、小売売上高前年比が昨年10月をピークに低下傾向が続いていることで確認できます(6月は改善)。それでも、物価上昇率は賃金上昇率を上回り続けています。
物価は、6月分の上昇がやや鈍化したものの、それでもコアCPI前年比は+2.4%、CPI前年比は+2.6%なので大きな上昇です。
利上げの可能性が減って、成長率が今後更に鈍化する可能性を想定すると、GBPは売られる要素が増えつつあるのでしょう。
【4-4-2. 政策決定指標】
BOEは、そうそう簡単に政策変更しないという話があります。もちろん、これは過去の実績で、BOE総裁もMPC委員も実際には入れ替わっているのだから、こんな話を当てにはできません。
(1) 金融政策
3月MPCでは、昨年7月以来の利上げ主張する委員が現れました。6月MPCでは利上げ主張委員が3名に増えました。昨年6月の国民投票以降のGBP安による物価が急上昇が利上げ派の主要論拠で、賃金上昇への悪影響(景気への悪影響)の懸念が様子見派の主要論拠です。
6月15日のMPC声明では「政策変更にあたっては、EUの新たな貿易協定締結やその移行期間設置の合意など、EU離脱交渉次第」という条件が挙げられました。6月下旬には、BOE総裁が利上げ検討の必要性について言及しました。但し、利上げに当たっては「物価上昇に伴う消費減速を企業投資が補えるか」を前提に挙げていました。
利上げ気運にブレーキをかけた訳です。
そして、利上げ気運の高まった8月1日のMPCでは、利上げ派理事が1名退任したこともあって、利上げ賛成派が2名に減りました。一気に翌朝までにGBPJPYは300pips近い下落となりました。
退任した利上げ派理事1名の代わりに、別の理事が利上げ賛成に回るかも知れない、という予想もあったので、発表までGBPが下がっていなかったのです。
(分析事例) BOE政策金利(2017年8月3日発表結果検証済)
直前10-1分足と直後1分足との方向一致率は68%なので、取引参加者は3回に2回の割合で発表直後の反応方向を当てています。英国は金融の国であり、予想分析もそこに乗って取引する人も、平均的な我々より平均的に上手なのかも知れません。
危ないので、大きな発表があるときは、追撃に徹した方が良いと思います。
(2) 財政政策
先の総選挙での保守党公約は、移民削減(年間10万人未満)・2025年頃までの財政赤字解消・消費税を上げずに2020年までに法人税を17%まで引き下げ・高額役員報酬問題への歯止め・労働者の権利拡大・電気ガス料金の上限設定・キツネ狩り禁止法廃止の採決、等がありました。英国にとって都合が悪い内容ならEUと合意しない方がマシ、という首相発言も公約にあたるでしょう。
ところで、キツネ狩りが英国でそれほどのテーマだなんて、知っていましたか。そんなこと言ってる場合か、という気もします。
(3) 景気指標
製造業の景況感が悪化し始めると、サービス業もそれを追いかける、という言い伝えがあります。近年、この法則に当てはまらない事例が多々見受けられます。
8月1日発表された7月分製造業PMI、8月3日に発表されたサービス業PMIは、ともに前回より改善しました。上昇再開と言えるほどの改善ではありません。
両指標ともに、昨年最悪期(EU離脱国民投票前後)よりも、まだかなり高い水準にあります。
(分析事例) 製造業PMI(2017年8月1日発表結果検証済)
(分析事例) サービス業PMI(2017年8月3日発表結果検証済)
製造業PMIは、反応方向を確認したら早期参加して、反応が伸びて利確の機会を待てば良いでしょう。
少なくとも最近のサービス業PMIは、EURGBPの月足の上下動と逆相関の関係が見受けられます。数日前に発表される製造業PMIの結果との相関は「無くはない」と言った程度しかありません(60%未満、50%以上)。
(4) 物価指標
主要国でCPI(消費者物価指数)・RPI(小売物価指数)・PPI(生産者物価指数)が一度に発表されるのは英国だけです。CPIやRPIの発表結果が揃って改善/悪化すると、驚くほど大きく反応するので注意が必要です。
BOEの目標インフレ率は年2%程度です。既にコアCPIは+2%を上回っています。発表結果が市場予想を上回っても、必ずしも素直に陽線で反応するとは限らない水準に達しています。がしかし、物価上昇を抑え込むために、6月下旬にBOE総裁は利上げ検討開始についてコメントしました。これで指標結果と反応方向の一致が、まだ暫くは続くと見込めるようになりました。
7月18日発表結果は全体的に物価上昇率が鈍化しました。それでもコアCPI前年比は+2.4%、CPI前年比は+2.6%なので、鈍化と言っても大きな物価上昇が続いています。
(分析事例) 物価指標(2017年7月18日発表結果検証済)
過去の傾向は、早期参入・早期利確の追撃に適した指標です。指標発表から1分を過ぎてからは、初期反応の値幅を削ったり反転することの方が多くなっている点に注意しましょう。
反応が大きい指標なのであまり勧められませんが、直後1分足の事前差異との方向一致率が80%近くある指標です。指標発表前に事前差異と同方向にポジションを取得し、指標発表直後に跳ねたら利確であれ損切であれ、ポジションを解消するやり方も可能です。
(5) 雇用指標
多くのFX会社の経済指標カレンダーに示されている失業保険受給者数では反応しません。少なくとも直近の2-3年のデータを整理すると、平均所得(含ボーナス)の市場予想との多寡によって反応方向が決まりがちです。
7月12日発表では、平均時給が前回結果を下回り、失業率と失業保険申請件数が前回結果より改善しました。市場予想との関係で、反応は陽線となりましたが、内容はあまり良くありません。3-5月の実質賃金は、相変わらず物価上昇率を下回っていることを指摘する解説記事がありました。
(分析事例) 雇用統計(2017年7月12日発表結果検証済)
指標発表直前に比較的大きく動き、その方向が発表直後の反応方向を3回に2回程度当てているという怪しい指標です。発表から1分を過ぎると、どちらに反応するかがわからない指標なので、追撃は早期参加・短期利確が基本です。
【4-4-3. 経済実態指標】
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は2.0%となっていました。最新の見通しでは、2017年が1.7%、2018年が1.5%です。対する米国は2017年・2018年ともに2.1%(4月時点で2017年は2.3%)で、EUはともに1.9%・1.7%となっています。
(1) 経済成長
EU離脱国民投票後、一時は成長がマイナスになるという解説記事さえあったものの、2016年はかなり好調でした。それだけに2017年は成長鈍化と見込まれていました。ひょっとすると、その兆しが現れ始めたのかも知れません。
6月30日、GDP確定値は前期比+0.6%・前年比+2.0%で、改定値と同値でした。+2%の経済成長は米国同期の+1.4%より優位でした。政策絡みでもFRBの次政策が「資産規模縮小で利上げでない」一方、BOEは「利上げの検討を向こう数か月以内に始める(6月28日BOE総裁発言)」ですから、GBPUSDはもう少しの上昇余地があると思われました。
がしかし、7月26日に発表された4-6月期GDP前年比速報値は1.7%で、1-3月期確定値+2.0%を下回りました。+1.7%というのは悪い数字ではありません。市場では、発表直後こそ陽線で反応したものの、その後は反転陰線で反応しました。
この数字では8月3日のMPCで利上げ派が強く出られないと捉えられたからでしょう。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月26日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年5月25日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月30日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
(2) 実態指標
他の国の実態指標ではあり得ないほど大きく反応します。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、平均的には指標への反応が、上に小さく下に大きくなると思われます。
(2-1) 小売
7月11日に発表された6月分BRC(英小売連合)小売売上高調査前年比は2か月ぶりにプラス転換していました(+1.2%)。
7月20日に発表された6月分小売売上高指数前月比・前年比とコア小売売上高前月比・前年比は、全て前月を上回っていました。指数・コア指数ともに前年比が昨年末から明らかに低下傾向でした。来月発表で今月発表結果を上回れば、その傾向が上昇転換したようにもグラフ印象が変わります。
8月発表予定の7月集計分の良し悪しを考察する指標が発表され始めました。
8月4日に発表された7月分ハイストリート既存店小売売上高前年比△0.6%でした。ハイストリートというのは、表通り店舗のことで、細かな定義はよくわかっていません。7月下旬の天候はあまりよくなかったそうです。
(分析事例) 小売売上高指数(2017年7月20日発表結果検証済)
本指標は、発表結果の良し悪しを、直前10-1分足の方向が示しがちです。がしかし、反応の持続性に不安があるので、追撃はほどほどにしておかないと痛い目に遭いかねません。
(2-2) 生産
7月27日、英政府は2040年以降にガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する旨、発表しました。知らなかったのですが、与党保守党は2050年までにほぼ全ての自動車から排気ガスを無くすことを公約に掲げていたそうです。既に仏国が同様政策を発表していたことも知りませんでした。
この政策は巨大な社会インフラ投資と自動車メーカーの設備投資と石油需要の縮小を意味します。2040年なんてまだまだ先のことです。がしかし、つい20年前に起きた携帯電話普及や、15年前に起きた液晶TV普及や、つい5年前に起きたLED照明普及を覚えているでしょうか。工業製品は普及率が一線を超えると、一気に価格低減と普及率急増が起きて旧製品を駆逐します。
2040年なんて、そんなに時間が要らないかも知れません。
7月7日に発表された5月分鉱工業生産指数前月比は、自動車生産が昨年2月以来の大幅減少となったことを受けて低下しました(△0.1%)。この結果は上述の新政策発表とは関係ありません。鉱工業生産指数は、1月にマイナス転換してから(4月分を除き)ややマイナス状態が続いていました。但し、直近では昨年11月分(+2.1%)・12月分(+1.1%)が大きかっただけで、2015年1月分から今回発表までプラスだったことは13回(全29回)と半数以下です。もともと長期凋落傾向があったのではないでしょうか。
(分析事例) 鉱工業生産指数(2017年6月9日17:30発表結果検証済)
事前差異・事後差異・実態差異のマイナス率が各85%・70%・78%と、異常な偏りが見受けられます。これは、調査期間において、市場予想は前回結果より低めに偏っており、発表結果は前回差異よりも市場予想よりも低くなりがちだった、ということです。
(2-3) 住宅
ほぼ反応しないので、取引は行いません。
7月13日に発表されたRICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数は+7でした。長周期の波が観察され、前回の波の底はEU離脱国民投票直後の2016年7月でした(+6)。その後11月に直近ピーク(+30)をつけてから現在は下降中です。来月は2016年7月の波底を下抜けるかに関心があります。
一方、7月17日に発表されたライトムーブ住宅価格前月比は2か月ぶりにプラス転換(+0.1%)しました。ライトムーブも全体的には2017年2月を直近ピークに、価格上昇率が低下傾向になっており、マイナス再転換を予感させています。
【4-4-4. 収支関係指標】
7月7日に発表された5月分貿易収支は△119億GBPの赤字でした。英国貿易収支は月々の上下動があるものの、長期的にその上下動は赤字拡大側に推移しています。
以上
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