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二階のオカマさん

彼がオカマさんかどうかは本当のところはわからない。
もしそうでなかったとしたら、今まで彼の人生で
かなりの誤解に苦しんだに違いない。
でも、彼の所作、話し方・・・私の知りうる限りの情報では
たぶん、そうだろう。
でも愛すべきオカマさん。
なんと言っても、礼儀正しい。他の誰よりも丁寧に挨拶してくれた。
にこやかに、いつも一言足してくれた。的確な表現で・・・
そして親切だった。マンションの駐輪場って結構、めんどうなところも
あります。二段式になっていて上げるのに骨が折れたりする。
ある日、私がヨイショ、と上げているとそこに出くわした彼、
あ!ボクの下のスペース、どうぞ使って。今使ってないから。
大変でしょ、毎回。 あぁ〜〜〜、なんていい人なんだ・・・

いつもルイヴィトンのセカンドバッグを小脇に抱えていたっけ。
無人の駐輪場なのに数分前まで彼がいたことを教えてくれる、残り香。
いつもの香水の匂いだ・・・かなり強烈だったっけ。

そう、彼は引っ越したのだった。
あれほど礼儀正しかったのに、最後の挨拶はせずじまい・・・
それがちょっと寂しかった。
彼と話すとき、何故か私まで彼と同じ口調になるのがおかしかった。

一人暮らしだった彼。
元気かなぁ・・・

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