親子で楽しむ読み聞かせ絵本

むかしむかし、浦島太郎という若者がいました。太郎はとても優しく、心の良い人で、村のみんなにもよく親切にしていました。ある日、太郎が海岸を歩いていると、何かが鳴いている声が聞こえました。「あれ、何だろう？」と思って声のする方へ行ってみると、なんと、亀が大きな岩に引っかかって動けなくなっていました。

「助けてあげよう！」太郎はすぐに亀を助けてあげました。「ありがとう」と亀は言いました。亀は感謝の気持ちを込めて、太郎に言いました。「お礼をさせてください。今すぐ私の家に行きましょう。」そう言うと、亀は海へと泳いでいき、太郎も後を追って海に入りました。

亀は太郎を背中に乗せて、海の中へとどんどん進んでいきました。太郎は少しびっくりしましたが、亀が案内する海の中の世界はまるで夢のようでした。海の中には美しい魚や珊瑚が輝いていて、太郎はとても楽しみました。

そして、亀が連れて行ったのは「竜宮城」という海の底にある素晴らしいお城でした。竜宮城には、海の神様である竜宮の王とその姫たちが住んでいました。王様は太郎を歓迎して、豪華なおもてなしをしてくれました。美味しい料理や楽しい舞踏があり、太郎はすっかりその世界に夢中になってしまいました。

竜宮城で楽しい日々を過ごしているうちに、太郎は家のことをすっかり忘れてしまいました。ある日、竜宮の王様が言いました。「太郎さん、あなたはそろそろ帰らなければなりません。」太郎は少し驚きましたが、王様が言う通り、家に帰る時が来たのです。

「でも、もう少しここにいたいな」と思った太郎でしたが、王様から渡された「玉手箱」を受け取って、亀と一緒に家へ帰ることにしました。王様は「この箱は決して開けないように」と言いました。

太郎が故郷に戻ると、そこはまるで別の世界のように変わっていました。町は大きくなり、家も高くなっていました。しかし、太郎の家はまるで昔のままで、家の人々もみんな姿を消してしまっていました。

太郎は不安になり、気を紛らわせようと玉手箱を開けてみることにしました。「王様が言っていたけど、ちょっとだけ開けてみよう」と思ったのです。しかし、玉手箱を開けた瞬間、白い煙がふわっと立ち上り、太郎はその煙に包まれてしまいました。

煙が消えると、太郎は見知らぬ場所に立っていました。そこは、まるで夢のような場所で、太郎は自分がもう人間の世界にはいないことに気づきました。そして、太郎は思いました。「ああ、竜宮城で過ごした時間は、もう遠い昔のことだったのだ」と。

玉手箱の中から出たものは、実は「歳月」を意味していたのです。太郎は、竜宮城で過ごした日々がすでに長い時間が経ってしまったことを、やっと理解しました。そして、太郎はその後も幸せに過ごすことができたのです。

おしまい。