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2019年02月10日
映画「身代金」誘拐犯人への逆襲劇
「身代金」(Ransom) 1996年 アメリカ
監督ロン・ハワード
脚本リチャード・ブライス
音楽ジェームズ・ホーナー
撮影ピョートル・ソボジンスキー
〈キャスト〉
メル・ギブソン レネ・ルッソ
ゲイリー・シニーズ デルロイ・リンドー
原題の「Ransom」はそのものズバリ「身代金」。
誘拐をテーマとした映画は日本でもたくさんあって、「誘拐報道」(1982年/監督・伊藤俊也)、「大誘拐」(1991年/監督・岡本喜八)。
中でも最もヒューマンなものとしては黒澤明監督の傑作「天国と地獄」(1963年)でしょうか。
ちょっと異色なところではウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」(1965年) なんかも誘拐映画のカテゴリーに入りますが、誘拐する目的として最も多いのが営利誘拐ですから、「コレクター」のように美女を誘拐して収集しようとする趣味の誘拐とは目的を異にします。
誘拐事件として日本人によく知られているのは、昭和38年3月31日に起きた、いわゆる「吉展(よしのぶ)ちゃん事件」で、犯人は4歳の少年を誘拐して両親に身代金を要求。
結局、犯人は逮捕されましたが、被害者の少年は2年後に白骨化した状態で発見されました。
誘拐事件にハッピーエンドはあり得ません。誘拐が成功すれば喜ぶのは犯人だけで、身代金は返ってこないし、最悪の場合は被害者は殺害されている可能性が高くなります。
映画「身代金」は、身代金そのものを題材にしているだけあって、従来の誘拐映画とはちょっと趣(おもむき)の違ったものになっています。
この映画のユニークなところは、誘拐された少年ショーンの父親トム・ミュレンが最悪の場合を想定してしまったところにあります。
★★★★★
最愛の息子が何者かに誘拐された。要求金額は200万ドル。息子は生きているんだろうか。とにかく要求された金額を支払うしかない。トム・ミュレンは航空会社の社長だからお金はあります。
しかし、受け渡し場所にFBIが現れ、受け渡しは失敗に終わります。
再び犯人からの要求。
もう一度受け渡し場所を指定される。
受け渡し場所へ向かう車の中でトムは考えます。犯人の要求通りに身代金を渡せば、きっと息子は殺されるに違いない。いや、もうすでに殺されているかもしれない。
これは無理な発想ではなく、現実には最悪のケースが多いのですから、トムがそう考えても無理はありません。
よし、こうなったら逆襲だ! 身代金なんか犯人にくれてやるものか。
トムはテレビ局へと直行して犯人へのメッセージを発表します。
「身代金はお前らへの懸賞金だ! 犯人逮捕の手がかりを教えてくれた者にこの金(200万ドル)を懸賞金として与える」
犯罪映画史上奇想天外な成りゆきに発展したこの映画は、まさにアメリカ映画だから可能なのでしょう。実際にこんなことをすれば捜査の妨げになるし、厳しい世論の反発が予想されます。現実に息子が殺されているという確証はないわけですし、犯人逮捕の賭けとするには、もし息子が生きていたとしたら、あまりにも危険すぎます。
この常軌を逸した行動を説得力のあるものにしてしまったのがメル・ギブソンの熱演と、その妻ケイトを演じたレネ・ルッソ。
常軌を逸した夫とは当然、意見の対立があって、正論を主張しながら夫と激しく対立するケイトの姿はこの映画の見せ場といってもいいと思います。
また、身代金が懸賞金に変わったことにより、犯人側にも動揺が広がります。
犯人グループの首謀者で悪徳刑事のジミー・シェイカー(ゲイリー・シニーズ)に対し、仲間うちでの裏切りが表面化してゆくことになります。
犯罪映画であってもエンターテインメントであり、小気味のいいテンポで見る者をグイグイと引っ張ってくれる正統派娯楽映画です。
監督ロン・ハワード
脚本リチャード・ブライス
音楽ジェームズ・ホーナー
撮影ピョートル・ソボジンスキー
〈キャスト〉
メル・ギブソン レネ・ルッソ
ゲイリー・シニーズ デルロイ・リンドー
原題の「Ransom」はそのものズバリ「身代金」。
誘拐をテーマとした映画は日本でもたくさんあって、「誘拐報道」(1982年/監督・伊藤俊也)、「大誘拐」(1991年/監督・岡本喜八)。
中でも最もヒューマンなものとしては黒澤明監督の傑作「天国と地獄」(1963年)でしょうか。
ちょっと異色なところではウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」(1965年) なんかも誘拐映画のカテゴリーに入りますが、誘拐する目的として最も多いのが営利誘拐ですから、「コレクター」のように美女を誘拐して収集しようとする趣味の誘拐とは目的を異にします。
誘拐事件として日本人によく知られているのは、昭和38年3月31日に起きた、いわゆる「吉展(よしのぶ)ちゃん事件」で、犯人は4歳の少年を誘拐して両親に身代金を要求。
結局、犯人は逮捕されましたが、被害者の少年は2年後に白骨化した状態で発見されました。
誘拐事件にハッピーエンドはあり得ません。誘拐が成功すれば喜ぶのは犯人だけで、身代金は返ってこないし、最悪の場合は被害者は殺害されている可能性が高くなります。
映画「身代金」は、身代金そのものを題材にしているだけあって、従来の誘拐映画とはちょっと趣(おもむき)の違ったものになっています。
この映画のユニークなところは、誘拐された少年ショーンの父親トム・ミュレンが最悪の場合を想定してしまったところにあります。
★★★★★
最愛の息子が何者かに誘拐された。要求金額は200万ドル。息子は生きているんだろうか。とにかく要求された金額を支払うしかない。トム・ミュレンは航空会社の社長だからお金はあります。
しかし、受け渡し場所にFBIが現れ、受け渡しは失敗に終わります。
再び犯人からの要求。
もう一度受け渡し場所を指定される。
受け渡し場所へ向かう車の中でトムは考えます。犯人の要求通りに身代金を渡せば、きっと息子は殺されるに違いない。いや、もうすでに殺されているかもしれない。
これは無理な発想ではなく、現実には最悪のケースが多いのですから、トムがそう考えても無理はありません。
よし、こうなったら逆襲だ! 身代金なんか犯人にくれてやるものか。
トムはテレビ局へと直行して犯人へのメッセージを発表します。
「身代金はお前らへの懸賞金だ! 犯人逮捕の手がかりを教えてくれた者にこの金(200万ドル)を懸賞金として与える」
犯罪映画史上奇想天外な成りゆきに発展したこの映画は、まさにアメリカ映画だから可能なのでしょう。実際にこんなことをすれば捜査の妨げになるし、厳しい世論の反発が予想されます。現実に息子が殺されているという確証はないわけですし、犯人逮捕の賭けとするには、もし息子が生きていたとしたら、あまりにも危険すぎます。
この常軌を逸した行動を説得力のあるものにしてしまったのがメル・ギブソンの熱演と、その妻ケイトを演じたレネ・ルッソ。
常軌を逸した夫とは当然、意見の対立があって、正論を主張しながら夫と激しく対立するケイトの姿はこの映画の見せ場といってもいいと思います。
また、身代金が懸賞金に変わったことにより、犯人側にも動揺が広がります。
犯人グループの首謀者で悪徳刑事のジミー・シェイカー(ゲイリー・シニーズ)に対し、仲間うちでの裏切りが表面化してゆくことになります。
犯罪映画であってもエンターテインメントであり、小気味のいいテンポで見る者をグイグイと引っ張ってくれる正統派娯楽映画です。