銀行株の行方で強気のミラー氏と弱気のホイットニー氏が真っ向対決
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003001&sid=aeXAYm5iCDME&refer=commentary
5月13日(ブルームバーグ):米レッグ・メイソン・バリュー・トラストの運用成績は、同ファンドを率いるビル・ミラー氏の銀行株見通しが正しいのか、それとも米オッペンハイマーの元アナリスト、メレディス・ホイットニー氏が銀行株下落を再び言い当てるのかにかかっている。
レッグ・メイソン・バリュー・トラストは2005年まで15年連続で米S&P500種株価指数を上回る運用実績を残した後、06年に低迷した。ミラー氏(59)は10年までは銀行株投資を選好すると語る。一方でホイットニー氏(39)は、米政府によるストレステストを受け、銀行株は「著しく過大評価」されているとの認識だ。
ホイットニー氏はオッペンハイマー在職時、信用市場の機能が失われ始めた07年にウォール街で最初に弱気派に転向した株式アナリストの1人として注目された。2月に同社を退社して投資顧問会社メレディス・ホイットニー・グループを起業した。
どちらの見方が正しいのかは、ミラー氏にとって大問題だ。ブルームバーグやモーニングスターのデータによれば、同氏はベアー・スターンズやフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)株の保有により、過去3年間で同業の誰よりも大きな損失を出した。ホイットニー氏が顧客に投資回避を勧めたシティグループやワコビア、UBSは昨年、時価総額の少なくとも3分の2を失った。
PNCファイナンシャル・サービシズ・グループの主任投資ストラテジスト、ウィリアム・ストーン氏はミラー氏が「正しければ、金融機関の大半は苦境を脱するだろう」と述べた上で、「経済がまた急激に悪化し、その悪循環が再びめぐってくるとなれば、メレディス氏が正しいということになる」との見方を示した。
ミラー氏はコメントを控えた。ホイットニーは電話取材や電子メールのメッセージに返答しなかった。
金融危機見誤る
割安株を対象とするバリュー株投資で知られるミラー氏のレッグ・メイソン・バリュー・トラストは08年の成績がマイナス 55.1%だった。同氏が大恐慌以来最悪の金融危機の深刻度合いを見誤ったためで、同年4月時点でミラー氏は投資家にあてた書簡で「金融株は底を付けた」との見方を示した。ベアー・スターンズが実質破たんしてJPモルガン・チェースに吸収合併されて約1カ月後のことだった。以来、S&P500種は34%下落。銀行株指数は53%下げた。
ミラー氏のファンドは今年に入ってからはプラス9.1%の成績となっている。同氏は先週、「金融株が他をアウトパフォームする可能性が最も大きい」と語り、ウェルズ・ファーゴやキャピタル・ワン・ファイナンシャル、アメリカン・エキスプレス(アメックス)を選好銘柄として挙げた。
S&P500金融株指数は3月6日に17年ぶり安値を付けてから 97%上昇。第2次世界大戦以降最長の米リセッション(景気後退)で金融機関が一段と破たんするとの懸念が後退したためだ。
ホイットニー氏は金融株が下落するとみている。ここまで反発するほど事業が改善していないとの分析だ。同氏は米経済ニュース専門局CNBCの今月11日のインタビューで、「銀行に内在する中核的収益力はごくわずか」だと述べた。先月にも今年1−3月期に黒字を計上した米銀は今後、「赤字」に逆戻りする公算が大きいとの見方を示している。
同氏が07年10月に予想したシティの減配は08年1月に現実となった。また、07年12月に、UBSの投資判断を引き下げていた。
DAデービッドソンの主任市場ストラテジスト、フレデリック・ディクソン氏はホイットニー氏の予測がこれまで正確だったため、金融株の上昇基調が維持されるとは思えないと語る。「彼女は銀行の問題を的確に指摘してきている。経済と銀行業界のために、わたしの見方が間違っていることを祈っている」と述べた。
翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:東京 蒲原桂子 Keiko Kambara kkambara@bloomberg.net Editor:Yoshito Okubo 記事に関する記者への問い合わせ先: Michael Tsang in New York at mtsang1@bloomberg.net .
更新日時 : 2009/05/13 15:46 JST