鳥が構造物に衝突する事故を「バードストライク」と言う。主に航空機と鳥が衝突する事例を指す事が多い。この他、鉄道、自動車、風力発電、送電線、鉄塔、灯台、ビルなどでも起きている。
航空機に於ける「バードストライク」は離陸動作中或いは着陸動作中の速度が比較的遅く、高度が低い時に起こり易い。
ハドソン川に不時着したUSエアウェイズのエアバスA320型機事故で、米運輸安全委員会は回収したフライトレコーダーを解析した結果、両エンジンが不時着直前に同時に動かなくなっていた事が判明したと発表した。
これは、同機が管制官に「鳥とぶつかって両エンジンの推進力が無くなった」と伝えた内容を裏付ける。また、回収された主翼フラップ部分などから羽毛や軟らかい物体が衝突した形跡などが見つかったそうだ。
「バードストライク」は屡起こるが、双発機の両エンジンが同時に止まるのは異例とされる。鳥を吸い込んだエンジンは内部が壊れ推進力を失うが、通常は残るエンジンで飛行を続け、出発空港に引き返すか、近くの空港に臨時着陸するのが殆どである。
航空機の「バードストライク」は国内に於いても深刻な問題である。
空港の多くは臨海部にあり、水鳥の生息域と重なることから、「バードストライク」はたびたび起きている。これによるエンジンの損傷や航空機の空港への引き返しなどによる損失は毎年国内だけで数億円程度あるといわれる。「バードストライク」を防ぐため、各航空会社や空港は様々な対策を講じているが、これといった有効策がないのが現状。
主要空港では、花火で脅して空港に近づけないようにしたり、実弾を使って駆除している。また、高知空港などではハヤブサを放し、空港周辺から鳥を追い払う試験が行われた事があるが、これも効果が上がらなかったため実用化には至っていないとの事である。
ある航空会社ではエンジンに目玉マークを描いて鳥が近寄るのを防ごうと試みたが、効果が上がらなかったそうだ。
国土交通省によると日本でも2007年には1320件の報告があり、うちエンジンに吸い込んだ事例は約230件。ただ、「バードストライク」が原因で墜落したり、死傷者が出たりする事故は国内では発生していない。
テクノロジーの進化により、ジェットエンジンが高性能になったにも関わらず、「バードストライク」の有効策が無いのが現状だとすれば、何とも皮肉な話だ。高度な科学技術と裏腹に思わぬ落とし穴が潜んでいると思うと怖い。
鳥と人間の望ましい共栄・共存の姿は描けないのだろうか。思えば鳥も気の毒である。