2018年05月12日
ユダヤの歴史 その3
ユダヤの歴史 その3
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◇パレスチナ問題
そして現代、ユダヤ人迫害の問題は形を変えより深刻に為って居る、パレスチナ問題・中東問題に発展し、宗教的憎悪を超えて、ユダヤ民族とアラブ民族のハルマゲドン（最終戦争）さえ予見させる。既に、迫害や虐殺の次元を超えて居るのだ。では、どう云う経緯でこんな状況に陥ったのか？
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事の発端は、イギリスの２枚舌外交。1916年イギリスのエジプト高等弁務官マクマホンとアラブの指導者フサインとの間に書簡が交わされた。この協定は、アラブがオスマン帝国に反乱を起こす見返りに、第一次世界大戦後、イギリスがアラブ国家の独立を約束すると云うものだった。
アカデミー賞７部門を獲得した映画「アラビアのローレンス」はこの歴史を描いて居る。広漠たる砂漠、戦い・陰謀・裏切り・友情 ・・・ 男のロマンを書き立てる筋立てで、映画史にその名を刻んだ。
イギリスは、アラブに対しこの様な甘い約束をする一方で、1917年ユダヤ人にも同じ様な約束をした。バルフォア宣言である。パレスチナにユダヤ人国家の建設を容認すると云うものだった。イギリスは、このユダヤ人国家を通してパレスチナに支配力を保持する積りだった。しかし、何処からどう見てもダブルブッキング。その後何が起こるかは火を見るより明らかだ。
ユダヤ人とアラブ人の根幹を為すのは、ユダヤ教とイスラム教。詰り、一神教だ。一神教の神は一つであり、他の神々は全て偽りの神と為る。神と悪魔、善と悪、勝利か敗北か、完全な二元論が支配するのがこの世界だ。
彼等は、日本人が好む妥協や落とし所と云うものが無い。生存を賭けた戦いなのだから、仕方が無いのだが。だから中東紛争は歴史の必然なのである。
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ユダヤ人が迫害される理由
〜ドレフィス事件〜
◇悪魔島
「タイムトンネル」は1960年代に放映された海外ドラマである。アリゾナ砂漠の地下深くに人間を過去や未来に送り込む装置が開発されたと云う、所謂タイムマシンもの。処が、装置は未だ完成して居らず、不安定で故障し捲(まく)り。タイムトラベラーのダグとトニーは命からがら時空を旅するのだった。
トニーとダグは、何時もタイムトンネルの気紛れで時空移動させられるのに、行き先は決まって「歴史上有名な事件」。マァ、これはこれで、科学と歴史が大好きな少年にしてみればワクワクドキドキ。処が、１話だけ全く理解出来無いエピソードがあった。
第1シーズン第9話の「悪魔島」だ。時代は19世紀後半、実際にあった歴史的事件らしいが、ストーリーはサッパリだし知っている歴史キーワードも皆無。結局、分からず仕舞いで話は終わってしまった（ゼンゼン面白く無かった）。
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その意味不明のストーリーとは ・・・
タイムトンネルの毎度の不調で、トニーとダグは小さな島に時空移動させられる。その時、6人の政治犯が島に着いたが、2人が海に飛び込んで行方を晦ます。そこで、居合わせたトニーとダグが、逃げた2人と間違われ収監される。
看守にしてみれば、6人と云う数字が合ってれば好い訳で、そもそもこんな島に一般人がウロツク筈が無い。と云うのもこの島は流刑地だったのである。
トニーとダグは、そこで、特別待遇の囚人「ドレフュス」と出会う。この軍人は誠実で正義感の強い人物と云う設定で、皆で脱走しようと誘っても乗って来ない。自分は無実で、脱走すれば自分が有罪だと認める事に為ると云う。
周囲の囚人達の接し方から、ドレフュスは只者では無い事は判るのだが、名前は聞いた事は無いしストーリーも繋がら無い。大体、皆が逃がして呉れると云うのに、ヘンに格好着けて嫌みなオッサン位にしか思え無かった。
◇反ユダヤ主義
タイムトンネル第9話「悪魔島」の悪魔島は実在した島である。南アメリカ北部のフランス領ギアナに在る小島で、フランスの重罪犯人や政治犯の流刑地であった。この刑務所は1852年に設立され1953年まで囚人が居た事が判っている。
タイムトンネル第9話「悪魔島」に登場するドレフュスも実在の人物で、19世紀末に起こった「ドレフュス事件」のキーパーソンである。「ドレフュス事件」は「反ユダヤ主義」の象徴的事件で、高校の世界史にも登場する。只、日本では殆ど知られていない。
「反ユダヤ主義（Anti-Semitism）」とは、ユダヤ人に対する差別・敵意・迫害を意味する。ドレフュス同様、日本で殆ど知られていないのは、ユダヤ人もユダヤ教も日本と接点が無いからである。
一方、キリスト教が本流の欧米では反ユダヤ主義は古い歴史を持つ。ユダヤ人迫害の歴史は2000年前にも遡るのである。
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◇ドレフュス事件1・スパイ疑惑
1894年フランスでスパイ疑惑が持ち上がった。フランス陸軍内部にドイツに機密情報を流している人物が居ると云うのだ。漏洩した機密文書の明細書の筆跡はフランス陸軍参謀本部付きのアルフレッド ドレフュス大尉のものと思われた。処が、何故かフランス軍部は事を急いだ。
簡単な捜査の後、1894年ドレフュス大尉は軍法会議に架けられた。ドレフュス大尉は終始無罪を主張したが結果は有罪、終身刑が宣告された。軍籍を剥奪され収監されたのが先の悪魔島であった。
タイムトンネル第9話「悪魔島」は「ドレフュス事件」をモチーフにして居たのである。ドレフュスは1895年から1899年迄この島に収監された。ドレフュスの妻と兄は、ドレフュスの無罪を訴え再審を要求したが世論は冷たかった。
この事件には2つの謎があった。フランス軍部が碌な捜査もせず、ドレフュスを有罪にし事件の解決を急いだ事。冤罪（えんざい）かも知れ無いのに世論が全く反応し無かった事。この謎は、足った一つの事実に起因して居る ・・・ ドレフュス大尉はユダヤ人。
一方、この事件で、フランスの世論はドレフュス以外にも向けられた。軍部は機密漏洩を許す程マヌケだし、ユダヤ人は忠誠心の欠片も無い売国奴だと。時代は19世紀末、ヨーロッパでは反ユダヤ主義が蔓延して居た。
反ユダヤ主義者や国粋主義者達は、この事件をチャンスと見て反ユダヤ・キャンペーンに打って出た。ユダヤ人がフランスを売ったのだと。ユダヤ系フランス人の中には、ドレフュスに同情し救援の活動を行う者もあったが所詮多勢に無勢であった。
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◇ドレフュス事件2・真犯人
処が、新しくフランス陸軍情報部長に任じられたピカール中佐は、真犯人がエステラジー少佐である事を突き止めた。もし、事実が明るみに出れば軍のメンツは丸潰れ。軍は全力を挙げて事実の揉み消しに掛かった。
先ず、真相を知るピカールを左遷。次に、ドレフュスの兄に告発され、軍法会議に架けられたエステラジー少佐を無罪放免とした。恐怖の虜と為った軍は更に暴走する。ピカール中佐を文書偽造で告発したのである。
ドレフュスに取って最悪の展開だった。処が、文豪ゾラがドレフュス事件を一変させる。ゾラはフランスの小説家で、自然科学の実証性を文学に導入した自然文学の先駆者として知られて居た。
1898年1月13日新聞「オーロール」に「我弾劾す」と云うゾラの告発文が掲載された。その中で、ゾラは軍法会議は軍部に捻じ曲げられた偽りの審判と糾弾した。ゾラの告発は世論を大きく動かした。そして再審に向けて運動が始まったのである。
これに対し、軍部や王党派やカトリック教会等の保守勢力は猛反発した。軍部にしてみれば軍法会議の蒸し返しは軍の威厳に関わるし、カトリック教会に取って主イエスを十字架刑に科したユダヤ人は2000年来の敵である。
だがどんな理由をこじ付け様が詰まる処は人種差別。とは言え、この時点では反ドレフュス派は未だ優勢であった。ゾラは名誉毀損で告訴されイギリスへの亡命を余儀無くされたのである。
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◇ドレフュス事件3・再審
ドレフュス大尉の再審を求めるドレフュス派とその反対派の抗争は、やがて国政にまで及んだ。当時フランスでは、共和制を支持するグループと王党派グループの対立があったが、これにリンクしたのである。
実は、1789年に始まるフランス革命で、フランス共和制が確立した訳では無い。その後も、政治的混乱が続いたのである。1793年1月ルイ16世とその王妃マリー アントワネットが断頭台で処刑された後も、王党派は未だ大きな力を持って居た。
そもそも、ドレフュス事件が起こる20年前に第3共和制が成立したばかりであった。詰り、フランス革命勃発後、100年間も王党派と共和党派の抗争が続いたのである。
1898年8月ドレフュス有罪の決め手と為った証拠が偽造だった事が判明した。更に、1899年2月にはドレフュス派のルーベが新大統領に就任、劣勢だったドレフュス派の巻き返しが始まった。1899年8月再審が始まり、軍は徐々に追い詰められて行った。最早、軍が執着するのはメンツだけだった。
勿論、メンツを守るには有罪しか無いが、一方で、世論も気に為った。国民から又マヌケ呼ばわりされては信頼の回復はもうムリ。こうして、裁判は苦し紛れの妥協案で決着する事に為った。
ドレフュスは再び有罪と為ったものの、刑期は終身刑から10年の刑へと減らされたのである。軍に取っては唯一の落し処だった。処が、ドレフュスは納得し無かった。改めて再審請求を提出したのである。
将(まさ)に、ドラマ「タイムトンネル」のドレフュス同様信念の人であった。一方、このドタバタにウンザリしたフランス政府は、ドレフュスに対し大統領の特赦を与える事にした。有罪はそのままで、軍の顔を立て、特赦でドレフュスを釈放すると云うのである。処が、ドレフュスは一歩も引か無かった。完全無罪を主張し続け、1906年7月ドレフュスは遂に無罪を勝ち取る。
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◇ドレフュス事件4・結末
ドレフュス事件は他愛も無いスパイ事件から始まったが、容疑者がユダヤ人だった事から政治抗争にまで発展した。更に、普及が始まった新聞の助けもあり世論が大きな力を持つ事も証明された。この事件で、大衆の影響力を見誤ったカトリック教会は地位を大きく失墜させ、王党派は政治生命を完全に断たれたのである。
結局、ドレフュス事件は、フランス共和制を盤石にしフランスの歴史まで変えたのである。処で、フランス革命はあれだけ有名なのに、何故、ドレフュス事件は日本では知られていないのか？ユダヤ教やユダヤ人にバイアスが掛かって居ないからだろう。ユダヤ人の歴史は日本人に取っては遠い世界なのかも知れない。
その4 につづく
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