2018年09月22日
一緒に学ぼう世界史のポイント 87 《イタリアの統一》
世界史講義録より
一緒に学ぼう世界史のポイント 87 《イタリアの統一》
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イタリアの統一
イタリアの統一
イタリアは、統一国家が形成されずに中世以来分裂状態が続いていましたが、19世紀になるとイタリア人としての民族意識が高まり、統一運動が活発に為って居ました。以前にも触れましたが、ウィーン体制時代にはカルボナリ党やマッツィーニの青年イタリア党が独立・統一の為の活動をして居ました。
独立と云うのはどう云う事かと云うと、イタリアの小国は神聖ローマ帝国時代以来ドイツの影響下に置かれて居た。19世紀に為っても、ハプスブルク家のオーストリアに従属している国が多かったのです。
ヴェネツィアやミラノにはオーストリア軍が駐屯していて、反オーストリア的な政治運動に睨みを利かせている。自由主義的運動や統一運動が活発化すると必ずオーストリア軍が出動して弾圧する、と云うパターンが続いていた。又、フランスもイタリアに大きな政治勢力が出現することを嫌って、イタリアに干渉することが多かった。
1848年の二月革命の時にイタリア各地で独立・統一運動が盛り上がるのですが、この時もオーストリアとフランスの干渉で全ての運動が失敗して居ます。ローマ共和国が成立した時はフランスが軍隊を派遣してこれを潰して以後、ローマにはフランス軍が駐屯しました。
ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
サルディニア王国1849年以後 イタリア統一の中心と為って来るのがサルディニア王国です。この国はフランスと国境を接する半島北西部とサルディニア島を領土に持つイタリアの中では比較的大きな国。ナポレオン１世時代にはフランスに支配されて封建的な古い制度は無く為って居るイタリアの中では最も近代的な国でした。
1848年にはオーストリア軍と戦い領土拡大を図りましたが敗北。しかし、この頃からサルディニア王国が中心と為ってイタリアを統一するのが一番現実的だと多くのイタリア人は考えていた。
1849年 サルディニア王国に新しい王が即位します。ヴィットーリオ＝エマヌエーレ２世と云う。彼は、自由主義的改革による近代化とイタリア統一を目指します。その為に首相に任命されたのがカヴールと云う人物。イギリスの議会を見学したこともある自由主義的立場の政治家です。
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カヴールは、イタリアからオーストリア軍を排除しなければ統一は絶対に不可能だと考えました。それはその通りです、しかしサルディニア王国の軍事力ではオーストリア軍と戦って勝てる見込みは無い。そこでフランスを味方に着けようと考えた。フランスと同盟を結べばオーストリアに勝てます。そこでカヴールは、あの手この手の外交作戦でフランスに接近する。
フランスは1849年以降ルイ＝ナポレオンが支配者です。初めは大統領に当選するのですが、ヤガテ皇帝に即位してナポレオン３世と名乗って居る。カヴールはナポレオン３世の好意を得る為に、1853年のクリミア戦争に１万５千のサルディニア軍を派遣した。
ナポレオン３世からすれば、サルディニアの様な小さな国が援軍を出して呉れて有難いです。気にも止めていなかった小国だがナカナカ見処あるじゃないかと云う訳。当然イギリスもサルディニア王国に好意を持つ。クリミア戦争への参戦はサルディニア王国に取っては大きな負担でしたが、イギリス・フランスの二大国に接近出来た事は大きな成果でした。カヴールは、クリミア半島での戦争がイタリア統一の第一歩だと激励して兵士を送り出したそうです。
クリミア戦争で恩を売ったカヴールは、遂にナポレオン３世と同盟を結ぶ事に成功した。オーストリアと戦争した場合にフランスが援軍を送ることに為った。交換条件として、サルディニアはフランス国境に近いサヴォイアとニースと云う二つの地方をフランスに割譲すると云う条件付きですが。
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こう云う準備を進めた上で1859年 サルディニア王国はイタリア統一戦争を開始しました。サルディニア軍は東隣のロンバルディアに攻め込みます。ここにはオーストリア軍が駐屯して居て更に援軍も送られて来るので、この戦争は事実上オーストリアとの戦争です。
オーストリア軍22万対するサルディニア軍は７万・フランス軍は12万8000。フランスの援助が無かったら勝負に為らないのがハッキリ判りますね。サルディニアとフランス連合軍はオーストリア軍を破り、ロンバルディアはサルディニアに併合されます。
これに呼応して、パルマ、モデナ、トスカナ各国で反オーストリアの反乱が起こります。これ等の国々では、住民投票によってサルディニア王国への編入が決まり、トントン拍子に統一が進むのを見てナポレオン３世は不安に為った。こんなに簡単にサルディニア王国が領土を拡大するとは思っていなかったんですね。
フランスの南に行き成り巨大な統一国家が出来るのは得策では無い。そう考えたナポレオン３世は、オーストリアと単独で講和条約を結んでイタリアから撤退してしまった。フランスの援助が無ければ戦争は不可能です。ヴェネツィアを除く北部イタリアを併合しただけでサルディニアの統一戦争は中断してしまった。
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ここに登場するのがガリバルディで、青年イタリアのメンバーとして以前から統一運動で活躍していた人物です。この人が全く個人的に義勇兵約1000人を集めて２隻の船でサルディニアの港からシチリア島に向けて出発した。1860年５月６日のことです。イタリア半島の南部からローマに向かって進軍しイタリア統一を完成させるのが目的です。
彼の部隊は、そのメンバーの数から千人隊もしくはガリバルディのトレードマークである赤いシャツから赤シャツ隊と呼ばれています。
シチリア島はイタリア半島の南半分にあるナポリ王国の領土で、丁度この時ナポリの支配に抵抗する農民反乱が起きていた。シチリアに上陸したガリバルディと千人隊は農民達の支援を受けてナポリ王国軍を追い払い島を占領してしまった。その勢いで対岸であるイタリア半島先端に上陸し半島を北上して、何とナポリ王国を滅ぼしてしまった。ガリバルディは更に北上しローマ教皇領に攻め込もうとします。
イタリア半島の真ん中は、フランク王国のピピン以来ローマ教皇領と為っていて特殊な場所です。何しろ教会の領土なので単純に武力で征服する訳にはいかない。ローマ教会の信者はイタリア人だけで無く全ヨーロッパにいて、ローマに対しては特別な感情を持っているからここを武力征服してローマ教皇を敵に回せば国際問題に発展しかねない。
現に1860年のこの時点では、フランス軍がローマに駐留している。だからサルディニア王国もここには手が出せ無かった。教皇領の存在がイタリア統一の大きな障害に為って居たのです。ガリバルディがローマに進軍してフランス軍と戦闘に為ったら困ると考えたのがカヴールです。フランスはイタリア統一戦争から手を引いていますが、ローマで武力衝突すれば、逆に統一を潰す方向で軍事介入して来るかも知れない。
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カヴールは、サルディニア国王ヴィットリーオ＝エマヌエーレ２世自身に出陣を願い、サルディニア軍を率いてイタリア半島を南下します、ガリバルディを止める為です。
10月26日 ヴィットリーオ＝エマヌエーレ２世は、ナポリの北にあるテアーノと云う場所まで遣って来てガリバルディと会見します。ガリバルディはこの直前に行われた住民投票で、ナポリ王国のサルディニア王国編入が決まった事を王に報告し、自分が占領した土地を王に献上した。言ってみれば、ここでイタリア半島の統一がほぼ完成した訳です。
だから、二人の会見は劇的なものとして幾つかの絵に描かれています。二人が握手していたりする。実際には、この場でガリバルディはローマ進撃の許可を得ようとするのですが、王はこれを禁止し彼の義勇軍をサルディニア正規軍に編入してしまったので、ガリバルディに取っては失意の会見だったらしい。
このあとガリバルディは政治の表舞台を去り、カプレラ島と云う小さな島で畑を耕しながら余生を送った。ヴィットリーオ＝エマヌエーレ２世に取っては、青年イタリア出身で民衆に物凄い人気のあるガリバルディは危険人物に思えたようです。アア、青年イタリアは基本的には共和政を目指していましたからね。
思いもかけないガリバルディの活躍で、ローマ教皇領とオーストリア支配下のヴェネツィアを除きイタリアの大部分がサルディニア王国によって統一された。そこで、ヴィットリーオ＝エマヌエーレ２世は、1861年イタリア王国の成立を宣言し、初代イタリア国王に即位しました。イタリアと云う国家が生まれたのはこんなに最近なんです。
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この後ヴェネツィアは1866年に、教皇領は1870年にイタリア王国の領土に編入された。1870年以降にローマがイタリアの首都と為ります。但し教皇領は完全に亡くなった訳では無くて、小さいながらも現在もあります。ローマ市内のローマ教皇庁の建物がある場所がそれでバチカン市国と呼ばれています。
イタリアの統一に話を戻すと、ヴェネツィア編入以後もオーストリアとの領土問題は残ります。これを「未回収のイタリア」と云う。オーストリア領のティロルとトリエステがイタリアの領土であるとして返還を要求し続けたのです。この問題は第一次世界大戦まで持ち越されます。
政治的にイタリアは統一されましたが、長い間の分裂で北と南は経済的には大きな格差が出来て居ました。北イタリアは工業が発展して豊か、南イタリアは農業中心で貧しい農村が多かった。統一後も格差は埋まらず現在まで続く問題と為って居ます。
南イタリア、特にシチリア島からは沢山の貧しい農民が豊かな生活に憧れてアメリカへ渡った。アメリカ映画に好く出て来るマフィアと云うのはイタリア移民が多い。夢を持ってアメリカに来たが、既にイギリス系アメリカ人が政治経済の主流であり、英語も満足に話せ無いイタリア移民はアメリカ社会の底辺から出発し無ければ為らなかった。そんな中で同郷出身者同士で結束して犯罪に走ったのがマフィアの元だそうです。
アメリカの代表的マフィア「アル・カポネ」参考図書紹介・・・・もう少し詳しく知りたい時は
世界の歴史(22)近代ヨーロッパの情熱と苦悩 谷川稔 他 著 結構広い時代をカバーしていますが、ウィーン体制以後のヨーロッパ全体の流れをつかむには適している。
イタリアの統一 おわり 次のページへ 《ドイツの統一》
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