今年はもうヒラタケは出そうにない。ヒラタケはそろそろいいや、なんて思ってたんだけど、いざ出そうもないとなると、なんだかとても寂しい気がする。だから出そうもないと思いながら、出現率が高い「気持ちわりい道」に足を運んでいる。
不意に、やけに甘い香りを察知する。あ、あまーいと思ってその原因となっている対象物を探ると、そこにはこんな赤い実があった。あ、これはクサギってやつだと思い、私は思わず顔をしかめた。イケメンも台無しである。
クサギは「臭い木」だからそう呼ばれるっつー話をどっかで聞いた。もしくは見た。クサギの臭さは私もよく知っており、とてもあのあまーい香りと同一人物とは思えなかった。そこでもうちょっと探してみると・・・その隣に名もなき(いや、私の頭の中に名がなき)木があった。紫のかわいらしい実をつけていた。
なんやこれ?と関西人でもないのにそんなことを思ったが、こんな山んなかで答えを教えてくれる者などない。そんな者が急に現れたらとんでもなく怖いから、教えてくんなくてもいーやと思い、とりあえずつまんで食ってみた。甘い。香りにたがわぬ見事な甘さ。
でも果実らしい香りにはおよそ乏しかったのは少し残念。これ、あとで調べたらどうやらムラサキシキブという木の実だという。
甘い香りのおかげで、気持ち悪い道の割にはリラックスして歩いていたが、やはりこの道はひと筋縄ではいかない。何かと物騒な話が耳に届く今年のこのあたりの山だったが、個人的に今年最高級の恐怖を味わうことになる。
↑何者かがこのぬかるみで何らかの行動を起こしたらしいことがわかる。周囲の木や草が倒されている。
こんなところになんで水たまりがあるのかなーと考えながら日々この道を歩いているのだが、水たまりが周囲の土と混じって、完全な「泥」へと変貌していた。この場所だけではなく、道という道が何かでえぐられたような痛々しい傷痕を刻んでいた。
その正体を推測する重要な手がかりを見つけた。
↑中央部のくぼみはおそらく大型獣の後足のあとだろう。
↓そしてこの特徴的なフォルムの足跡。もちろん前足のあとだ。こんな足跡を残す動物はアイツくらいのものだ。
やっぱりねーと思った。十中八九イノシシである。「豚足」というやつに酷似する。まさか豚ってことはないだろう。やっぱりどう考えてもイノシシなのだ。この道、とにかく大型獣の気配が濃い。何かの足跡がたくさんあるのだが、それが多すぎてよくわからなかった。でもこれではっきりした。
この道の道幅は狭い。こんなところでイノシシと出くわしたら一巻の終わりだなぁ・・・
山を歩き自然に親しむのは楽しい。でもときおり不意に死のにおいを嗅ぎとることがあり、ヒヤッとする。しかも生々しい死のにおいだ。先日の雌鹿のように。とりあえず今年はもうこの道には行かないことにする。
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