前回「ヒラタケではないけどなんだかよくわからんきのこ」という感じで載せた写真があった。シモフリシメジに似ている・・・などと書いたが、これは重大な間違いである。なぜ重大かというと、あれ、なんだかわからないもクソもなく、ものすごく有名なきのこで、しかも「食ったら死ぬかもしれないきのこ」だからである。
きのこもそうだが、写真もまったくのど素人である私は、サイズ感など完全に無視して、記憶だけで「確かこれはあんとき撮ったきのこだな」などと思いながら掲載している。これは軽率であった。小さいきのこだとなかなかうまく写らないから、ドアップで撮影しようという意図が見える・・・
あのきのこ、強毒のニガクリタケである。ヤナギマツタケに似ているとも書いたが、実際見れば恐ろしく似ていない。「なんだかわからない」という理由で食った時点で、はっきり言って食った人間が悪いが、「このウソつきブログめ」といっておばけにどろどろ出てこられるのも迷惑極まりないので、これは訂正しておきたい。
傘色がシモフリシメジに似ていたのでついつい「シモフリシメジに似たなんだかわからんきのこ」と書いてしまったが、これはみんながよく知り、どこにでも出る強毒・ニガクリタケであると認識してください。
で、正真正銘の「シメジっぽい木に生える不明種きのこ」の写真を掲載しようとしたのだが、その写真がどっかいっちゃって見つからないので、夏の間に撮影して掲載するタイミングを失ったモエギアミアシイグチを、今回の話とは一切の脈絡を持たず突如掲載しようと思う。
↑たぶん私が入る山で最も多く発生するきのこ・モエギアミアシイグチ
↓「モエギ(萌黄)」の由来が柄の色に見られる。有毒とされるが毒なんかねえよと言ってバクバクくってピンピンしている人もいるという不思議なきのこと人
まあいずれにしても、ヒトってぇのはこうやって毒きのこを食っちまうんだろうなぁということがおわかりいただけたのであれば、これはこれで収穫であった。転んでもタダでは起きない探求心は我ながら見上げたものである。ただ、写真の見間違いだからそんなのんきなことを言っていられるというのもまた事実。
万一ホンモノの毒きのこを食っちまったら転んだまま起き上がるどころか、のたうち回り七転八倒、八転九倒しなければならないだろう。ヘタをすればそのまま息絶えちゃうなんていうことだって当然考えられる。くわばらくわばら。
で、ここからも前回の内容を引きずって、大好評(←いやウソ)の「山の恐怖シリーズ」に話を振る。
(前回までのあらすじ)
雌鹿が死んでるー!→ぎゃああああ!鳥だあああああ!!!→ヒチコックとオーメンだーーー!!!→茶色の鳥でけえ!→あの鳥はフクロウかもしれないけどそれにしてもでけえな→ところでなんで鹿は死んだの?
という流れでお話したと思う。その最後の「なぜ鹿は死んだのか」というところに別の恐怖が潜んでるんですよ、という話で、この結論が今回。
鹿が死んでいたのは、延々と続く岩壁が終わる地点の崖下。おそらく転落死だろう。鳥が群がっていたので鹿の直接の死因はわからない。あの状況で鳥に混じって検死する気にはなれない。そんなことしたら絶対オーメンおばさんになってトラックにはねられて私が死んでいた。
鹿が転落する理由は何か。一番可能性が高いのは、何かに追われていて逃げ場がなくなり、イチかバチかでダイブを試み失敗したというケース。じゃあいったい何が鹿を追っていたのか。あの崖上に入る道を私は知っているが、あんなとこに入り込む人間はまずいないはず・・・やっぱり、ヒト以外の大型獣が鹿に迫った結果と考えるのだ妥当だろう。
つまり、クマ・イノシシ説が有力。しかしイノシシが鹿を襲うなんていう話は聞いたことがないから、確率的にはクマかなという気がする。
↑クマ、イノシシなど大型獣捕獲用檻。直接的な恐怖ではないが、何かの間違いでこの中に入ってしまったら・・・と考えるととんでもねえ恐怖。自然の中の無機質な檻の不吉な存在感が際立つ。
クマやイノシシが出るということは、当然これを駆除する人々が何らかの動きをとる可能性が高い。たとえば猟銃。銃声を聞いてあわてて逃げ出して転落・・・の可能性も考えられる。クマやイノシシではなく、もしかしたら猟師に狙われた鹿だったかもしれない。ただこの場合、狙われたのは転落現場からかなり離れているはず。転落を確認できる場所で狙ったのであれば、鳥が群がる前に猟師が鹿を持ち去るはずだから。
↑流れ弾に当たって死ぬ・大けがする事例は毎年数例ある、日本のどこかで必ず。山に入る人間にとって宿命的な脅威だ。
それと、鹿の目の構造がどうなっているかわからないが、「目の錯覚で誤って転落」の可能性もある。説明は難しいが、私も実はそういう種類の恐怖を感じたことがかつてあった。初めて入った山深い場所だと、遠近感や距離感といった潜在的な感覚に狂いが生じることがある。目前の木々と、崖を挟んで向こう岸の木々が「陸続き」に見えることもあるのだ。
崖を挟んで向こう側に行こうと思ってしまうレベルの錯覚なら、ヒトの場合普通にある。突然目の前に空間が現れてキモを冷やしたことはこれまでに何度かあった。
もしこのケースに相当するのであれば、鹿もきっとさぞかし怖かったと思う。でも実はこの種の危険は人間にとっても「山で起こる恐怖」なのだ。こえーよー!!!
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