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2021年03月09日

原盤集めること大変だったなあ。。。

2000年に発売されたPlayStation用ソフト『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』(以下、ドラクエVII)。発売から20年以上が経過した今もなお、リメイク版などを通じて遊び継がれている傑作です。さて、そんな『ドラクエVII』はシリーズ屈指の「鬱ゲー」との呼び声が高いのもまた事実。他のシリーズだってもの悲しい話はたくさん登場するのに、なぜ『ドラクエVII』がことさらそのような評価を得ているのでしょうか。ストーリー面から、システム面から、「鬱ゲー」たるゆえんを解説していきます。

【画像】子供の頃は気にしなかった『ドラクエ』の鬱要素

●ドキドキの冒険心を出鼻でくじく…「ウッドパルナ」編のマチルダ

『ドラクエVII』の鬱ゲーたるゆえん。それは序盤の村「ウッドパルナ」編ですでに集約されていると言ってもよいでしょう。その理由を解説するためにも、まずは『ドラクエVII』が他のナンバリングがどのように異なっているかをおさらいする必要がありそうです。

 まず他ナンバリングと違う点は世界設定です。主人公たちは魔物もいなければ敵国も存在しない「平和な世界」に住んでいます。さらに冒険へと駆り立てる動機もまた「魔王を倒さねば」といった使命感ではなく「遺跡を探検しよう」という実に無垢な好奇心です。そしてこのワクワクに満ちた導入部こそ『ドラクエVII』における最高の“ミスリード”的演出となります。

 そして謎解きアドベンチャーのような遺跡を抜けた先に待ち受けるのが「ウッドパルナ」編。魔物が跋扈(ばっこ)する封印された小島での物語です。そこで出会ったマチルダという女戦士の助けを借りて「おやおや『ドラクエ』らしくなってきたぞ」と冒険を進めていけば、最初に出会ったマチルダこそ実は人間を恨み魔物へと姿を変えた黒幕だと明かされるのです。ところがそのマチルダはまだ人間の心が残っており……主人公たちは断腸の思いで刃を交えなくてはならないという展開へと発展します。

 落差が、激しいのです。平和な世界における幼なじみとの「探検ごっこ」だったはずが、異世界へと放り出された直後にはもう「魔物とは? 悪とは?」という極めて高次元の問いかけがなされます。このスパルタぶり、さすがとしか言いようがありません。以降「モンスター=悪/人間=善」という二項対立への疑念が本作の重大なテーマとなります。

●魔物のいない世界に戻っても「鬱!」それが『ドラクエVII』クオリティ

『ドラクエVII』は世界を取り戻すまでの前半は「魔物がいる過去」と「魔物のいない現在」を行き来する構成となっていますが、これがまた胸をえぐるシステムなのです。

 前述の通り『ドラクエVII』では人間が魔物の姿にされている、あるいは逆というエピソードが繰り返されます。またフォロッド編の「エリー」やルーメン編の「チビィ」など人間側にいたことで、さらなる悲劇を招いてしまうエピソードも頻出します。

 さらに過去の問題を解決し、現在の世界に帰ってきたところで決して「めでたしめでたし」とならないのが『ドラクエVII』クオリティです。例えばグリンフレーク編ではあめふらしを倒すと石化した住民が元に戻りますが、そこから主人公は昼ドラさながらの愛憎劇に巻き込まれます。そこで一応の解決を図って現在に戻ってみれば、なんともやる瀬ない後日談を聞く羽目になります。また前述のルーメン編では「チビィ」の処遇によってひとつの街をプレイヤーが消失させてしまうことになります。そしてこの「後味の悪さ」の極めつけがファンの間では有名な「レブレサック」編と言えるでしょう。(本稿でその詳細は割愛いたします)

 最初は平和だったはずの主人公たちの世界。魔物がいる世界の問題を解決し、魔物のいない現在に戻ってきたが、救われない人もいる……もしかしたら諸悪の根源は魔物ではなく人間ではないのか? 物語を進めるうちに湧き上がるこの問いは最初にウッドパルナ編でマチルダが投げかけてきた問いの変形に過ぎません。魔物との戦いを通じて人の業を浮き彫りにしてしまう残酷さ。死力を尽くしても手が届かないやるせなさ。さらに言えば自分たちが「探検」さえしなければずっと平和だったのでは? という自責(ここでサブタイトルにある“エデン”という言葉がずしりと意味を帯び始めます)。こうした原罪意識とともに紡がれていく高い文学性こそが鬼才・堀井雄二氏が生み出した「鬱ゲー」の正体なのかもしれません。もちろん、キーファに使った種が返ってこないことも含めて。
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