騎士きどり　knight kidori

父の病院に寄ってきた。

父は案の定、
孫たちが遊びに来てくれた話を
孫（姪っ子）と同じ顔して嬉しそうに喋りまくった。

下のチビは、病室に入ってきてすぐに
ベッドに飛び乗ってきて、
はしゃぎまくったらしい。

しかし、上の子は、
びっくりするくらい、喋らなかったそうだ。

「ますます大人しくなった」

みんなで暮らしていた時は、
上の子はじぃじと大の仲良しで、
同じポーズをとった写真もたくさんある。

逆に下の子は、じぃじと暮らしていた記憶はほとんどないはず。

上の子も、
思い出、はもうないのかもしれないね。
忘れてしまったかも。
だけど、周囲の大人の関係性は分かるから、
じぃじと仲良くするのに遠慮があるのかな。

でも、私とじぃじと
姪っ子ズの四人で食事に行ったりすると
めちゃめちゃはしゃぐから、
やはりママの顔色を見ているのだろうな。


あんたを、とてもとても可愛がっていたじぃじなんだよ。

それを、私はこれから、
彼女の負担にならないような量、
負担にならないような内容で、
少しずつ伝えていけたらいいな。


白状な私は、まだ父の日のプレゼントを用意できてなくて
お菓子とか買って行った。

「また、改めて用意するから楽しみにしててね」
と言いながら、どこかのレジに置いてあった『ご自由にどうぞ』のメッセージカードだけ渡した。

お父さんありがとう
これからも元気でね
みたいなカード。

「ありがとう、看護師さんが
いいねえって言うよきっと」
そう言って、嬉しそうに
ベッドの横の壁に
それを貼っていた。


職場でのイライラも聞いてもらったので、その日は1時間ほど父のそばにいた。
普段は、30分まで駐車場が無料なのでバタバタ帰るけど、今日はゆっくりしていたから、
父が駐車場まで見送りに来てくれた。

いつも来たがるけど、
1分を争って走って帰るから、
間に合わなくなるからここでいいよと病室で別れていたんだ。

今日は、駐車場まで来てもらった。
フラフラと歩きながら
「カラ子ちゃんが来てくれるから助かる。
誰も来てくれなかったら、もう…」
と言った。

洗濯物とかも自分で管理しているし
買い物も困ってないし
それは精神的なものなんだろう。

そのセリフを重いと思わないこと、
「毎日顔を出さなくちゃ」と思わないこと、
喜んでくれてなによりだ、行ける時はまた行こう、って思うこと。
父の言葉にドキリとしたけど、
自分に言い聞かせた。

小雨が降っているのに
車の横まで来て、
私が清算して出庫するまでずっと、
手を振って見送ってくれました。

また、くるからね。
プレゼント持ってくるからね。

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