おうし座のものがたり
フェニキアのアゲノル王の娘エウロペは、とても美しい女性でした。ある日、侍女たちとともにエウロペが水浴びをしていました。その美しさに恋をした神々の王であるゼウスは、白い牡牛に化けてエウロペに近づいていきました。白い牡牛の存在に気付いた侍女たちは驚きましたが、牡牛がおとなしいことに気が付くと牡牛に近づき身体をなでたりし始めます。
エウロペも侍女たちの牡牛に対する様子に安心して自分も牡牛に近づきます。エウロペがこんなことを言います。「この牡牛はとてもおとなしいから、背に乗ってみようかしら」これはゼウスの思うつぼです。隙あらばエウロペを誘拐しようと目論んでいたのですから。
ゼウスの告白
エウロペが牡牛の背に乗ったと同時に、牡牛はものすごい勢いで走り出しました。エウロペは牡牛の背から転がり落ちないように必死でしがみつきます。あっという間の出来事に、侍女たちはオロオロするだけで何もできない状態でした。エウロペを乗せた牡牛はそのまま海の方へ走り続けます。
感の良いエウロペは『この牡牛は普通の牡牛と違う!』という事に気づきます。そして牡牛に尋ねました。「あなたは一体何者ですか?」
そして牡牛に化けたゼウスは答えます。「心配するな。私の名はゼウス。あなたを一目見て恋に落ちてしまったのだ。だから、私についてきてくれ。」そして、そのままゼウスはエウロペをさらってしまったのです。
ゼウスとエウロペの結婚
強引なまでのストレートな告白にエウロペもゼウスの気持ちを受け入れます。お互いに恋に落ちた二人はそのまま海を渡ってクレタ島にたどり着きます。そこで二人は結婚をし、一緒に暮らしたという事です。
ゼウスは妻になったエウロペの名を取り、クレタ島周辺の地域をヨーロッパと名付けました。エウロペの名前をローマ字読みをするとEurope(ヨーロッパ)と読めますよね。ヨーロッパの名前の語源はこの物語からともいわれています。
夜空のおうし座
おうし座の形は、一等星のアルデバラン・おおいぬ座のシリウス・こいぬ座のプロキオン・オリオン座のベテルギウスで構成されています。また、プレアデス星団「スバル」も含まれています。
もう一つのおうし座のものがたり
アルゴスのイナコス王とメリアの間には「イオ」という娘がいました。母のメリアは大洋の神オケアノスの娘です。イオは、ヘラ女神に使える女神官でした。このイオも美しい女性でした。そんな女神官を務めていたイオにゼウスは一目ぼれをしてしまいます。そして、イオを口説き自分の恋人にしてしまうのです。
しかし、ゼウスの妻であるヘラ女神はゼウスにとっても怖い存在だったようです。もしも、イオのことがバレたらと思うと怖くなり、妻の目を欺くためにイオを牝牛の姿に変えてしまいました。
この牝牛にされたイオの姿が、おうし座になったと云われています。
イオの受難
牝牛に変えられたイオを見て、ヘラは何かおかしいと疑い始めます。そして、ヘラはゼウスにイオが変身した牝牛をおねだりしてみます。ゼウスも妻が自分を疑っているのに気が付いたのでしょう。しぶしぶ牝牛をヘラに渡してしまいます。
ヘラはこの牝牛を百の目を持つ巨人・アルゴスに監視させました。アルゴスは、背中に3番目の目を持つとか全身に無数の目があると云われている巨人です。つまり、いつでもどれかの目は開いているので監視にはもってこいなわけです。しぶしぶ牝牛を渡したゼウスですが、恋人イオに会えないのはつらいわけです。そこで、ゼウスは死者の神ヘルメスを使いアルゴスを殺してしまいます。
アルゴスが殺されたことを知ったヘラは、今度はアブを使ってイオを苦しめます。アブに追われるイオは、アブから逃れるために世界中を走る羽目になってしまったという事です。
エジプトへ
アブから逃げ帰ったイオはエジプトにたどり着き、やっとゼウスに人間の姿に戻してもらいました。そして、二人の間には息子、エパポスが誕生します。ヘラがこの事を黙って見ているわけがありません。クレタ島のゼウスの守護精霊クレスたちにエパポスを誘拐するように命令しました。誘拐された息子をイオは探し出して、連れ戻すことに成功します。
こののち、再びエジプトに戻ったイオはテレゴノス王と結婚し、エジプトの女王となります。息子のエパポスは王の後を継ぎ、エジプト王になったと云われています。
最後は人間に戻れて、しあわせになれたようで良かったですね。ギリシャ神話ってなんかコント見たいですよね。
価格:4,150円 |
価格:5,610円 |