逆に、確定申告しなければ節税を放棄したことになります!
確定申告は、株式運用に掛かる高い税金が軽減できる貴重な仕組みです!
株取引に掛かる税金は、証券会社で「特定口座で源泉徴収」を選択していれば、基本的には、確定申告の必要はありません。
しかし、申告義務は無くても、確定申告すれば、大抵の場合、利益を上げたとしても、または、損をしたとしても、徴収された高い税金を取り戻せて節税することができます。
確定申告には、株式運用者が節税できる仕組みが用意されています。
従って、特定口座で源泉徴収を選択されている方でも、節税のチャンスが多々溢れていることを知って、機会を逸しないよう、確定申告に関心を持たれることをおすすめします。
確定申告には、株取引にかかる高い税金を節税できる仕組みが用意されています!
1.株式の売買や配当には約20%もの高い効率が掛けられている
株式等の取引で得た利益や配当・分配金等には、運用者の所得や生活実態に関わらず一律に20.315%(所得税15.315%、住民税5%)もの高い税率が掛けられています。
現在の低金利下において、資産運用には株式投資や投信運用に注力せざるを得ない中、一般会社員や年金生活者にとって、20%もの一律税率は非常に重い負担です!
課税対象 | 所得税 | 住民税 | 計 |
上場株式の利益・配当 | 15.315%(0.315%は復興税) | 5% | 20.315% |
2.確定申告には、株式運用者が節税できる仕組みとして「総合課税方式」と「分離課税方式」が用意されている
確定申告には、株式運用に伴う高い税金が節税できる仕組みとして、「総合課税方式」と「分離課税方式」の2つの課税方式を用意しています。
「分離課税方式」
「分離課税方式」は、「株式売買で被った損失」と「他の利益や配当など」と「損益通算」して利益を圧縮し税軽減ができる仕組みです。
「総合課税方式」
「総合課税方式」は、配当を給与等の所得と同扱いとし、給与等と合算した総所得に給与等の所得税率(累進税率)を適用し、さらに、「※配当控除」の税額控除が受けられ、税軽減ができる仕組みです。
※配当は、もともと企業が法人税を既に支払った原資であるため、配当受け取り時に税を課すので二重課税となります。
このため、給与等と同取り扱いにすれば「配当控除」の適用で二重課税が解消されるというものです。
従って、この2方式のいずれかを利用して税金の節税が図れることになります!
3.「特定口座で源泉徴収選択」でも、確定申告をすれば、大きな節税チャンスが得られる!
「特定口座で源泉徴収選択」であっても、証券会社が節税してくれるのは、「口座内での売買損益と配当との損益通算」のみとなります。
つまり、他口座との損益通算や繰越控除との損益通算、損の繰越などは、証券会社では行ってくれません。
証券会社が行う特定口座内での節税(売買損益や配当との損益通算)範囲 売買に伴う損と益との損益通算は、口座内であれば、取引ごとに損益通算がなされ、常に通算利益に対する税徴収額に改まります。 配当については、年度末に売買損があれば配当と損益通算され、配当の税徴収額が決定されます。 これらの結果をもって、証券会社が、年初に本人に代わって納税してくれます。 |
従って、次のようなケースは、自分で確定申告しないと、税の軽減を図ることはできません。
確定申告することで節税できる4つのケース
逆に言うと、以下のケースがあっても、自分で確定申告をしないと、節税効果は受けられず、節税チャンスを放棄してしまうことになります。
@「年間損益が損となったが、益となった別口座がある」ケース
⇒分離課税方式を選択し、損益通算で利益を圧縮する
「複数の特定口座を持っていて、配当を含めても損となっている口座がある一方、他口座では配当を含めて利益を出し高い税金が徴収されている。」という場合は、
確定申告の分離課税方式を利用することによって、口座間での損益通算が可能となり、利益圧縮により税が軽減ができます。
A「年間損益が損となったが、益となった別口座がない」ケース
⇒分離課税方式を選択し、損を繰り越す
「配当を含めても損となっているが、相殺する相手が無い」という場合は、
確定申告の分離課税方式を利用すれば、「繰越控除」として「損」をくり越すができ、以降3年間は、配当を含めた利益と相殺して節税に利用することができます。
➂「年間損益が益となったが、過去の繰越控除の損がある」ケース
⇒分離課税方式を選択し、益を過去の繰越控除と損益通算して益を圧縮する
「損益通算しても配当含めて利益が残ったが、過去の「繰越控除」がある」という場合は、
確定申告の分離課税方式を利用すれば、過去の繰越控除(損)と損益通算して節税ができます。
C「年間損益が益となり、損益通算できる他口座や繰越控除がない」ケース
⇒総合課税方式を選択し、配当を給与等所得と見做して所得税率を適用し「配当控除」を受ける
「配当含めて利益が出たが、相殺できる損となった他口座や繰越控除がない」という場合は、
確定申告で総合課税方式を利用すれば、株取引の損益には一切触れず、「配当」を「給与所得等」と同等の所得と見做して、給与所得等と合算して累進の所得税率が適用され、さらに、「配当控除」という税額控除が受けられます。
4.特定口座内で対応できない損益通算や繰越控除による節税は、確定申告しないと消滅する!
先ほどご紹介しましたが、年間で利益が出た場合も損となった場合も、確定申告すれば、節税できるケースがほとんどです。
しかし、損益通算や繰越控除等は、その年度において確定申告しなければ、大抵の場合、節税機会は消滅してしまいます。
従って、永年、確定申告されてこなかった場合は、大きな節税チャンスを放棄してきたことになります。
特に、確定申告義務がない会社員や年金者で、「特定口座で源泉徴収選択」の方の多くは、確定申告されていない方が多いのではないでしょうか?大変もったいない話です。
U.「総合課税方式」と「分離課税方式」の利用法
確定申告には、節税の仕組みとして、「総合課税方式」と「分離課税方式」の2通りの申告方法があり、実際の申告には、どちらか一方しか選択できません。
なお、以降は、「特定口座」かつ「源泉徴収選択」を前提として説明させていただきます。(「一般口座」でも、基本的考え方は変わらないと考えます)
1.「総合課税方式」のしくみと留意点
◯株取引による損益には一切触れず、配当のみ着目した申告となる
つまり、「年間の株取引結果は、大きな利益がでた」、あるいは、「損益通算による還付金メリットよりも総額課税方式による配当控除のメリットの方が大きい」等の場合、配当に限定して節税できる仕組みが「総合課税方式」です。
◯税額の計算は、下の算式のようになります
配当を「配当所得」として「給与等の所得」と合算した上で、社会保険料や基礎控除等の「所得控除」を差し引いた金額(「課税所得」という)に、その「課税所得」水準に該当する「累進所得税率」を乗じて「所得税額」(「確定前の所得税」という)を算出します。
その「確定前の所得税」から「配当控除(配当の10.00%の金額)」が「税額控除」され実負担となる「確定所得税」が算定されます。
算式(@→A) @ {(給与等の所得+配当所得)- 社会保険等の所得控除}×累進所得税率 =確定前の所得税 A 確定前の所得税 - 配当控除(配当金額の10%分) =確定所得税 |
◯なお、確定申告で総合課税を選んだ場合、住民税への影響に留意が必要!住民税では「住民税申告不要制度」の検討が不可欠です!
確定申告で総合課税を選択した場合、そのままだと住民税で不利益が生じます。
住民税にも「配当控除制度」があり、住民税も「総合課税方式」が適用されると、配当の「0.28%」が「配当控除」となり、実際に配当受け取り時に納めた「5%」よりも低い控除しか受けられなくなる不利益が生じます。
このため、この不利益を排除できるように、住民税には、「住民税申告不要制度」が認められる様になっています。(詳細は後述します)
2.「分離課税方式」のしくみと留意点
◯株取引の損益や配当収入に焦点を絞り、「損益通算」や「繰越控除との相殺」などで節税が図れる仕組みとなります
つまり、「年間の株取引の結果、配当を含めても大きなマイナス(赤字)だった」、あるいは、「総額課税方式による配当控除のメリットよりも、損益通算による節税メリットの方が大きい」等の場合において、配当を含む売買損益に限定して損益通算による利益圧縮で節税できる仕組みが「分離課税方式」です。
◯申告は、今年度の損益(含む配当)結果に基づいて、次の3つのケースがあれば損益通算を行い利益圧縮効果を出す
@他の口座があれば、他の口座と損益通算して利益(含む配当)を圧縮する
A他の口座等で損益通算しても損が残る場合、損を繰越して翌年以降の損益通算に使う ➂過去の繰越損があれば、それと相殺して本年の利益(含む配当)を圧縮する
◯確定申告で分離課税方式による過去の繰越控除との損益通算を行っても、介護保険料算定には、過去の繰越控除が反映されない場合があるので「住民税申告不要制度」の検討が必要注意
確定申告で「今年度の利益(含む配当)」と「過去の繰越控除」とを損益通算した場合、介護保険料算定においては、過去の繰越控除が反映されずに、今年度の利益のみが所得とみなされて算定基礎に算入され保険料に跳ね返る恐れがあります。
従って、その場合、損益通算メリットと比較して損益通算すべきか、あるいは、住民税において、「住民税申告不要制度」使うべきかは検討が必要となります!
3.「総合課税方式」と「分離課税方式」の対比表
以上をまとめて対比表にすると次のようになる。
税軽減の方法 | 節税の仕組みと選択理由 | |
総合課税方式 | 「累進所得税率」の適用と 「配当控除」による税額控除 | ◯株取引結果には一切触れず、配当を「給与等所得」に合算して所得税を算出した後、配当額の10.28%が「配当控除」として税額控除される。 選択理由:株取引で利益が出ていて、損益通算や繰越控除の必要がない場合、又は、所得税率と配当控除メリットの方が大きい場合。 |
分離課税方式 | 「損益通算」による利益圧縮 | ◯給与や年金その他の所得とは関わりなく、株取引で生じた損益による「損益通算」や「繰越控除等の相殺」等による利益圧縮で税が軽減される。 選択理由:配当控除メリットよりも「損益通算メリット」が大きい場合。 |
最後に
株式運用には、取引による利益及び配当に対し、一律に20%(所得税15%、住民税5%)もの高い税金がかかります。
株式運用には、利益や配当が得られる一方損を被ることも多くあります。
このため、損益通算により、利益圧縮して節税できる仕組みが用意されています。(分離課税方式)
一方、配当については、二重課税問題があることと、配当に掛かる所得税15%は、所得が低く、累進所得税率が15%より低い所得層には重税となります。
このため、配当については、給与所得等と同等と見做して給与等と合算の上、給与等の累進所得税率を適用し、かつ配当控除が受けられ、節税できる仕組みが用意されています。(総合課税方式)
このように、株式投資運用に対しては、実際の運用成果や低所得者への過重負担とならないよう、確定申告で節税できる仕組みが用意されています。
しかしながら、確定申告しないと節税効果が得られない仕組みとなっています。
特定口座で源泉徴収であっても、常に、確定申告で節税可能かどうかをチェックすることが大切です。
貴重な節税チャンスを逃さないよう是非etaxを利用してチェックされることをおすすめします。
ーーーーーーーーーーーーーー 完 ーーーーーーーーーーーーーー
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