(1) 考査問題
令和2年度構造設計ー級建築士講習
修了考査(法適合確認)
問題1
一貫構造計算プログラムを用いたモデル化と構造計算に関する以下の設問に解答せよ。
[ No.1 ]
次に示す鉄筋コンクリート造耐力壁を含む架構の応力解析モデルに関する以下の@〜Bの設問に解答せよ。
図1に示すような鉄筋コンクリート造耐力壁(EW)付きラーメン架構がある。1階の連スパン耐力壁を1層分の壁梁として上部構造の荷重を支持し、その荷重を全てA、E通りに設けた杭基礎に伝達する計画としている。この架構は、一貫構造計算プログラム内で、図2のようにモデル化される。この解析モデルを用いて、鉛直荷重時応力解析と長期の断面検定を実行する。その際、1FLと2FLの剛床仮定を解除する。
図1 耐力壁付きラーメン架構
↓ モデル化
図2 応力解析モデル
ただし、耐力壁は図3に示す線材(壁エレメント置換モデル)としてモデル化され、同図中に示すとおり断面検定されるものとする。
壁 柱:耐力壁の壁板と等価な断面性能を有する柱材(せん断力に対して耐力壁として断面検定)
付帯柱:柱と同じ断面性能を有する両端ピンの柱材(軸力に対して断面検定)
付帯梁:梁の断面性能を100倍した梁材(断面検定の対象外)
剛な梁:断面性能が無限大の両端ピンの梁材(断面検定の対象外)
※ここに、断面性能とは、軸断面積A、せん断断面積As、断面二次モーメント I をさす。
↓ モデル化
図3 耐力壁の壁エレメント置換モデル
@ 壁エレメント置換モデルにおいて、付帯梁の剛性を増大(ここでは断面性能を100倍)させるのはなぜか、その理由を述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
このモデル化では耐力壁の上下に想定している剛な梁および付帯柱の端部がピン接合となっているが、耐力壁の周囲に取りつく柱や梁などに生じる応力を適切に算定するため、耐震壁と付帯柱ならびに付帯梁による拘束条件を適切に評価するために付帯梁の曲げ剛性を増大させておく必要がある。
A 鉛直荷重時応力解析における、解析モデルの不都合点を一つ挙げ、その不都合点を解消する改善策を述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
解析モデルは水平荷重による水平方向の曲げ・せん断力の算定の用のモデルとしては適切であるが、1階の耐震壁はA通りとE通りのみで支持され壁梁となっているため、鉛直荷重時の算定における鉛直方向の曲げ・せん断力に対する剛性については適切にモデル化されていない。
このような架構の場合は、耐力壁を板要素や鉛直方向のせん断剛性を同じとしたブレース置換によってモデル化して対応する。
もしくは、同様な考え方で適切にモデル化するためには、壁柱の代わりに壁梁、剛な梁の代わりに剛な柱、付帯梁ではなく付帯柱の剛性を増大させたモデル(現在のモデルを90゜回転させた形状)とする方法で対応する。
B 長期の断面検定における、断面検定上の不都合点を一つ挙げ、その不都合点を解消する改善策を述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
壁梁の長期応力による上端と下端の付帯梁に生じるはずの軸力が剛な梁に流れてしまうため軸力が生じない。
このような架構の場合は、耐力壁を板要素や鉛直方向のせん断剛性を同じとしたブレース置換によってモデル化して対応する。
もしくは、同様な考え方で適切にモデル化するためには、壁柱の代わりに壁梁、剛な梁の代わりに剛な柱、付帯梁ではなく付帯柱の剛性を増大させたモデル(現在のモデルを90゜回転させた形状)とする方法で対応する。
[ No.2 ]
図4に示すような鉄筋コンクリート造耐力壁(1〜3階、A-B間)付きラーメン架構がある。この架構の鉛直荷重時応力解析において、柱の軸変形を非考慮(軸剛性を無限大)とした。柱の軸変形を非考慮としたことについて、その課題(問題点・留意すべき事項等)を三つ簡潔に述べよ。
なお、基礎は十分な剛性を有しており、不同沈下は生じず、図のように柱脚はピン支持にモデル化できるものとする。
図4 耐力壁付きラーメン架構の応力解析モデル
※鉛直荷重時は柱の軸変形は考慮しない。
答え
[ 解答解説 ]
@ 実際は1〜3階のA、B通りの柱の軸剛性が耐震壁の影響で大きく、他の通りよりも軸変形は小さいため、軸変形で梁に生じる部材角による梁応力、柱軸力ならびに基礎反力が正しく算定されない。
A 実際は高層部A-C間のB通り柱がA、C通り柱よりも大きく軸変形するため、軸変形で梁に生じる部材角による上層階の梁応力、柱軸力ならびに基礎反力が正しく算定されない。
B 実際はD通り柱よりもC通り柱の1・2階柱の軸変形が大きいため、軸変形で梁に生じる部材角による2階、3階C-D間梁応力、柱軸力ならぴに基礎反力が正しく算定されない。