2024年08月21日
令和三年度修了考査 法適合確認(記述式)問題1
問題1
一貫構造計算プログラムを用いたツインタワー状の建築物の構造計算に関する設問[ No.1 ]、一貫構造計算プログラムを用いた場合のRC造壁のモデル化に関する設問[ No.2 ]、1階が鉄筋コンクリート造で2階及び3階が木造の立面混構造建築物の構造計算に関する設問[ No.3 ]について解答せよ。
[ No.1 ]
図1に示すような地上階平面をもつ10階建ての建築物がある。1階は全体が一体となっているが、2階以上がツインタワー状になっている。3階床以上にはタワーAとタワーBをつなぐ渡り廊下(図中「つなぎ部」)があるが、タワーB側にExp.Jを設け、XY両方向のローラー支承とすることで、構造的に完全に切り離している。この建築物を、一貫構造計算プログラムで形状どおりにモデル化し、図1に示す説明文に従いプログラムを実行した。ここで、各タワー単独の一次固有周期は、X方向では両者が完全に一致しているが、Y方向では若千異なり、タワー Aで1.00秒、タワーBで1.05秒とする。以下の@及びAの設問について解答せよ。
3〜R階床平面
1・2階床平面
くモデル化と地震力>
1、2階床を剛床、3階床以上をタワーA、Bの2剛床としてモデル化し、3階床以上のつなぎ部床の重量は、追加荷重として入力する。地震力は、2階以上ではそれぞれのタワーごとにAi 分布で計算し、X、Y方向別に、その階の重心位置に同方向に作用させる。
図1 略平面図と一貫構造計算プログラムの取扱い
@ この一貫構造計算では、Y方向地震時におけるつなぎ部床の検討が不足しているため、以下の手順で検討を追加するものとする。空欄(あ)〜(え)に適切な数字または語旬を入れよ。
・この一貫構造計算では、主に[ (あ) ]階のつなぎ部床スラブに生じる[ (い) ]に対する検討が不足している。
・つなぎ部床スラプに生じうる最も厳しい応力を計算するため、タワーAとタワーBが[ (う) ]のある動きをする場合を想定する。
・時刻歴応答解析を実施せず、耐震計算ルート3の静的解析のみで構造計算することとしたため、安全側に最も厳しい状態を想定し、タワーAとタワーBに[ (え) ]の地震力を作用させる。
・Exp.Jのクリアランスは、それぞれのタワーの最大応答時の変形の和を想定して、十分余裕をもたせて設定するとともに、つなぎ部床の落下防止にも配慮する。
答え
(あ):2
(い):力および変形
(う):位相差
(え):逆向き もしくは逆位相
A このような検討が必要となる理由を、タワーAとタワーBの一次固有周期の観点から述べよ。
答え
一次固有周期が、タワーA側1.00秒、タワーB側1.05秒の場合、1次固有周期で振動すると、21秒で1周期分違い、10.5秒で逆位相になる。そのため、時刻歴応答解析を実施せず、静的解析のみで設計する場合、比較的容易に逆位相になりうることを念頭に置く必要がある。
[ No.2 ]
図2は耐震計算ルート2-1により設計される中低層のRC造剛節架構の中に配置されたRC造壁で、両側に壁高さ分の縦開口があるために、耐霰壁として扱えない壁である。層の水平剛性を高めるとともに水平耐力の余力を確保するため、梁との間にスリットを設けないこととし、この壁を一貫構造計算プログラムでモデル化する際、方立壁(雑壁)として扱い、壁の重量は荷重計算に考慮した。方立壁の水平剛性は応力計算では無視し、剛性率及び偏心率の計算においてのみ考慮した。剛性率及び偏心率の計算に用いる方立壁の水平剛性は、 n倍法を用い、nの値としてデフォルト値の1.0を採用し設定した。ここで、n倍法とは、雑壁の水平剛性Dwを、代表的な中柱の水平剛性Dcをもとに、図中の式で評価する方法のことである。
図2 両側に壁高さ分の縦開口のある壁
この壁の取扱いには不適切な点がある。壁の取扱いに関する以下の@〜Bの設問について解答せよ。
@ この壁のnの値の設定が適切か否か、その理由も含めて述べよ。
答え
否
方立壁の剛性は、断面積の比率だけでなく、上下の梁の拘束状況により剛性は変化する。また、方立壁の幅が広いほど上下の梁の変形拘束が大きく耐震壁並みの水平剛性を持つ場合もあり、 n=1とすると方立壁の水平剛性を過小評価する可能性があるため。
A この壁を適切に取扱う方法を具体的に述べよ。ただし、この壁と梁との間にスリットは設けないものとする。
答え
・方立壁の左右両側に通り軸を設け、上下の梁に取り付く耐震壁としてモデル化し評価する。
・周辺架構を含めた部分モデル等により方立壁の水平剛性を評価し、nの値を適切に評価する。
など
B 一貫構造計算以外に、追加検討すべき事項を一つ述べよ。
答え
・方立壁が取り付くことによる周辺柱梁の応力変動を別途検討し、適切にせん断設計を行う。
・縦開口(スリット)部のはりに生じるせん断力の評価とせん断設計(せん断破壊の防止)
・両側柱の変動軸力の評価とその影響を含めた断面算定
・両側柱の変動軸力等による基礎への影響の評価
などから一つ
[ No.3 ]
図3に示すような1階が鉄筋コンクリート造、2階及び3階が木造の立面混構造建築物の耐震設計に関する以下の@及びAの設問について解答せよ。
図3 鉄筋コンクリート造と木造の立面混構造建築物
@ 本建築物の設計用一次固有周期Tを昭和55年建設省告示第1793号第2に規定されている下式により求めよ。
T = h(0.02 + 0.01α)(秒)
ここに、h:建築物の萬さ(m)
α:木造部分の高さの合計のhに対する比
答え
α = (2.8 + 2.8 + 1.0 )/9.6 = 0.6875
設計用一次固有周期
T = h(0.02+0.01×α)= 9.6x(0.02+0.01x0.6875) = 0.258秒
A 本建築物の地震力算定用重量を表に示す。この建築物のように2階、3階に比べて1階の重量が大幅に大きい場合には、Ai 分布の算定に当たり、昭和55年建設省告示第1793号第3ただし書きの規定に基づき、1階部分の地震力算定用重量ΣWi を小さくすることができる。これを適用した場合の1階部分の地震力算定用重量ΣWi’を求めよ。
表 地震力算定用重量(kN)
答え
緩和規定による地震力算定用重量(kN)
W1+W2+W3 = 800+210+150
= 1160kN > 2(W2+W3) = 2(210+150) = 720 kN
より、
1階部分の地震力算定用重量を2階部分の地震力算定用重量の2倍とする。
1階部分の地震力算定用重量
ΣWi'= 2(W2 + W3) = 720kN
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