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2024年07月12日

令和元年度修了考査 法適合確認 問題1


問題1
一貫構造計算プログラムを用いた鉄骨造建築物の構造計算に関する次の設問について解答せよ。

く建築物概要等>
表1に建築物の概要と仮定条件を、図1に2階〜R階床梁伏図を、図2にX方向骨組の解析モデル図を示す。

表1 建築物の概要と仮定条件
用  途:事務所
構造種別:鉄骨造、
     基礎及び基礎梁は鉄筋コンクリート造
階  数:地上3階、地階なし
基  礎:直接基礎(独立フーチング基礎)
屋  根:アスファルト防水
    (単位床面積当たりの重量:150 N/m2
     押えコンクリート(厚さ t=80mm )
     鉄筋コンクリートスラブ(厚さt=150 mm)
     パラペット
    (単位長さ当たりの重量:4.5kN/m)
     非歩行(地震力用積載荷重:300N/m2
2・3階床:増しコンクリート(厚さt=10mm)
     鉄筋コンクリートスラブ(厚さt=150mm)
     鋼製デッキ捨て型枠
    (単位床面積当たりの重量:200N/m2
外  壁:押出成形セメント板
    (下地鉄骨含む単位床面積当たりの重量:
     1,000N/m2
使用材料:コンクリート 全て、
     設計基準強度Fc=24N/mm2
     鉄骨柱:BCR295、梁:SN400B
     柱脚 保有耐力接合を満足する露出柱脚
その他の仮定条件
@ 階段・間仕切壁等のない、全階均ーな事務室とする。
A 屋上突出物や外周からのはね出し架構はないものとする。
B 架構は、全階、X軸及びY軸に対して軸対象とする。
C 基礎を含めて、全ての部材の偏心はないものとする。



R01_1_問題1_図1 2階〜R階床伏図.jpg
図1 2階〜R階床梁伏図 (単位:mm)

R01_1_問題1_図2_Y1及びY2通り骨組の解析モデル図.jpg
図2 Y1及びY2通り骨組の解析モデル図 (単位:mm)


く計算結果>

表2に一次設計用地震力の計算結果を、図3にY1及びY2通りの地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力)を示す。

表2 一次設計用地震力の計算結果
R01_1_問題1_表2_一次設計用地震力の計算結果.jpg

R01_1_問題1_図3_Y1及びY2通りの地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力).jpg
図3 Y1及びY2通りの地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力)


[ No.1 ]
2階及び3階の単位床面積当たりの層重量の妥当性を、表3のとおり概算で確認した。表中の@〜Cに入る数値として適切な値を記入せよ。

R01_1_問題1_No.1_表3_2階及び3階の層重量の概算.jpg
表3 2階及び3階の層重量の概算


答え


[ 解答解説 ]

@ Fc=24N/mm2の鉄筋コンクリートの単位重量:24 (N/m2/mm)

A 2階及び3階のコンクリートスラブ厚さ:150 (mm)

B 24 × 150 = 3,600 (N/m2)

C 事務室用積載荷重(地震力用):800 (N/m2)





[ No.2 ]
表2の「一次設計用地震力の計算結果」を確認し、明らかに入カミスと考えられる不適切な数値を1点挙げ、不適切と考える理由を述べよ。また、適切な数値(概算値)を求めよ。ただし、 R階の外壁重量と鉄骨重量は、表3の「2階及び3階の層重量の概算」の値(N/m2)と同じとする。



答え


[ 解答解説 ]
(不適切な数値)
R階層重量 Wi(kN)の1,460

(不適切と考える理由)
表1より屋根の荷重条件は、2・3階床の荷重条件と異なっているが、表2ではR階の層重量が2・3階の層重量と同じとなっているため。

(適切な数値)
押えコンクリート(厚さt=80mm) 23 × 80 =1,840
アスファルト防水             150
鉄筋コンクリートスラブ(厚さt=150mm) 24 × 150 = 3,600
鋼製デッキ捨て型枠            200
天井・設備                300
外壁(下地鉄骨含む)           1,000
鉄骨                   1,000
非歩行(地震力用積載荷重)        300
(小計)                 8,390

R階層重量Wi(kN)の計算

床荷重     8,390 × 10 × 20/1000 =1,678
パラペット重量 4.5 × (10 × 2 + 20 × 2)= 270
(合計)             1,948 (kN)

以上より、R階層重量の適切な数値(概算値)は 1,948 (kN)

なお、屋根スラブでは水勾配を床スラブコンクリートの増打ちで対応する場合がある。そのような場合には、水勾配用増しコンクリート重最を見込む必要がある。





[ No.3 ]
図3の「地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力)」を確認し、表2の地震力を用いた計算結果として明らかに誤りと考えられる箇所を2点挙げ、誤りと考える理由を述べよ。また、これらの誤りが一貫構造計算プログラム使用時のデータの入カミスによるものであるとしたら、どのような入カミスがあったと考えられるかを述べよ。ただし、部材断面や柱脚回転ばねの剛性の入力及び一貫構造計算プログラムに誤りはないものとする。



答え


[ 解答解説 ]
(1)
(明らかに誤りと考えられる箇所)
  1階柱のせん断力
(誤りと考える理由)
  1階柱のせん断力の合計
  ( 95 +165 + 95 ) × 2= 710(kN)
  が、表2の1階の層せん断力 876(kN)になっていない。

(2)
(明らかに誤りと考えられる箇所)
  1階柱脚及び基礎梁の曲げモーメント
(誤りと考える理由)
  1階ピン支点周りの部材に生じる曲げモーメントが
  釣り合っていない。


(原因と考えられる入カミス)
(1) 1階柱のせん断力
・地震力を直接入力した際に誤って2階と同じ値を1階に入力した。
・2階節点に地震力とは逆向きの水平外力を誤って入力した。

(2) 1階柱脚及び基礎梁の曲げモーメント
・1階基礎梁節点に曲げモーメント外力を誤って入力した。




[ No.4 ]
次の枠内の記述は、構造設計者の耐震設計に関する総合所見である。この記述の不適切な点(誤り)を、構造特性係数Dsと関連付けて述べよ。

入カデータを適切な数値に修正し、この骨組の保有水平耐力を荷重増分解析により求めた。その結果、ある層の層間変形角が最初に1/100に達した時点の水平力が、必要保有水平耐力(Dsは全層0.25)を上回ることを確認した。これにより、極めて稀に発生する地震動を受けた場合でも、予想される最大層間変形角が1/100以下に収まることが確認できた。



答え


[ 解答解説 ]

Dsの値を設定する為には、先ずは架構に崩壊メカニズムが生じるまで荷重増分解析を行い、塑性ヒンジ発生位置、各部材の応力や破壊モード等を確認して部材毎のランクから層のランクを決定して、それに対応したDsを設定する必要がある。

対象建物の柱には冷間成形角形鋼管を用いていることから、崩壊メカニズム時の柱梁曲げ耐力比を確認して全体崩壊メカニズムか又は局部崩壊メカニズムかを判定し、塑性ヒンジ発生部材のランクに応じた層のランクからDsを設定する必要がある。なお、局部崩攘メカニズムの場合には該当する柱の耐力を低減して保有水平耐力を算定する必要がある。

しかし、総合所見では荷重増分解析において、ある層の層間変形角が最初に1/100に達した時点の評価でDs=0.25を設定して必要保有水平耐力を設定するとともに、その時点の水平力を保有水平耐力としている点が不適切である。

また、静的解析に基づく保有水平耐力時の最大層間変形角は、地震時の動的応答結果としての最大層間変形角と必ずしも一致しない為、予想される最大層間変形角が1/100以下に収まることが確認できたとの記述は不適切である。


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 2.3 鉄骨構造
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