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ペン牛といいます。子供の頃から怖い話が好きで、ブログを始めたいけどネタがない、と悩んでいたところ辞書からランダムに選んだ言葉を使って怖い話を書けないかと思いつき、やってみたら案外できることが判明、気がついたらブログを開設していた。こんなですが、どうぞよろしくお願いします。なお当ブログはリンクフリーです。リンクしてもらえるとすごく喜びます。にほんブログ村アクセスランキング、人気ブログランキング、アルファポリスに参加中です。 


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2016年10月15日

二百九十話 お題:愁傷(相手を気の毒に思うこと) 縛り:南京錠(巾着 の形をした錠前)、自己紹介(初対面の人などに自分の名前・職業・身分などを、自分で知らせること)、懲らす(懲らしめる)、初星(相撲で、初めての白星)

 友人の力士の話である。

彼は十両に昇進して初戦で初星をあげたのだが、それ以降は成績が振るわず悩んでいたという。
「潔く引退しようかとも思ったんだけど、お袋から勧められた強い心を手に入れるセミナーっていうのに通い始めたら全てが変わったんだ」
 セミナーの代表の男性は自己紹介で、
「このセミナーに通い続ければ、人よりも遥か高みに立つための強い心を必ず手に入れられます」
 と言った。彼は最初半信半疑だったが、セミナーの効果はすぐに現れた。
「特に効いたのが金属の箱の中に向かって自分の弱いところを叫んで、叫び終わったら蓋をして南京錠をかけるっていうワークなんだよ。それまでは強い相手とやる時はどうしてもビビっちまってたんだけど、気がついたらどんな相手とでも真っ向から相撲が取れるようになっててさ」
 セミナーのおかげで順調に白星を積み上げていった彼は、これで何もかも上手くいくと思っていたのだが、
「……相撲で勝てるようになった代わりに、俺の周りからどんどん人がいなくなっていくんだ。後輩を些細なことで懲らすようになったし、先輩に噛みつくことも増えた。この前なんかお袋を殴って骨折させちまったし、俺、怖くなってセミナーの代表に相談したんだけど」
 代表の男性は、強い心を手に入れるということはそういうことです、としか言わなかったという。
「……なぁ、お前は俺のことを見捨てないよな? 友達でいてくれるよな? もし俺のことを見捨てても、絶対に探し出してやるぞ。探し出して――俺、なんてこと言ってるんだ。こんなこと、こんなこと言うつもりじゃなかったのに」
 彼の狼狽ぶりは見ていて気の毒だったが、このまま友達づきあいを続けていると厄介なことになるだろう――さて、どうしたものだろうか。

posted by ペン牛 at 23:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い話
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