2016年10月05日
二百八十話 お題:番う(二つのものが一組みになる) 縛り:切羽詰まる(ある事態などが間近に迫ってどうにもならなくなる)、戦雲(戦争)、レーゾンデートル(存在理由)、若木(生えてからまだ年数の経っていない木)、X(未知の物事)
小学校の頃の同級生の家に遊びに行った時のことである。
彼の家の縁側から庭を眺めていると、金木犀の若木に真っ赤な鳥が止まっているのを見つけた。彼に、あの鳥はずいぶん珍しい色だな、と言うと、
「あぁ、あれか。時々うちに来るんだよ。名前は……なんだったか。ど忘れしたが、中々面白い言い伝えのある鳥なんだよ」
私がどんな言い伝えなんだ、と聞くと、
「なんでもあの鳥は、雄と雌が番うと戦雲を呼ぶとかで不吉な鳥扱いされてたんだが、ある種類の人間には幸運を呼ぶ鳥として好まれたんだ。さて、どんな人間が好んだと思う?」
私は少し考えてから、わからないな、と言った。彼は得意げな顔になって、
「武器商人だよ。まぁ当然といえば当然だ。戦争が起これば起こるほど彼らはもうかるんだから。もっとも、鳥からしたらどう扱われようと迷惑なだけだろうけどな」
私が、人間というのはつくづく身勝手だよ、と言うと、彼は、
「全くだ。人の生を喜ぶ人間もいれば、死を喜ぶ人間もいる。私には想像もできないが、武器を売ったり人を殺したりして生きている人間は何をレーゾンデートルにして生きてるんだろうね……あぁ、そうだ。君に頼みたいことがあったんだ。息子が雑誌の懸賞のクイズが解けないと泣きついてきてね。この怪盗Xからの挑戦状とかいうクイズなんだが、子供向けのクイズの割にはずいぶん手強くて、しかも締め切りが明日までらしい。すまないが、解くのを手伝ってくれないか? 息子ときたら切羽詰まるといつも僕を頼るから困ったもんだよ」
口では困ったもんだよ、と言っておきながら顔がニヤけている彼を微笑ましく思いつつ、私はその怪盗Xからの挑戦状に挑むことにした。
彼の家の縁側から庭を眺めていると、金木犀の若木に真っ赤な鳥が止まっているのを見つけた。彼に、あの鳥はずいぶん珍しい色だな、と言うと、
「あぁ、あれか。時々うちに来るんだよ。名前は……なんだったか。ど忘れしたが、中々面白い言い伝えのある鳥なんだよ」
私がどんな言い伝えなんだ、と聞くと、
「なんでもあの鳥は、雄と雌が番うと戦雲を呼ぶとかで不吉な鳥扱いされてたんだが、ある種類の人間には幸運を呼ぶ鳥として好まれたんだ。さて、どんな人間が好んだと思う?」
私は少し考えてから、わからないな、と言った。彼は得意げな顔になって、
「武器商人だよ。まぁ当然といえば当然だ。戦争が起これば起こるほど彼らはもうかるんだから。もっとも、鳥からしたらどう扱われようと迷惑なだけだろうけどな」
私が、人間というのはつくづく身勝手だよ、と言うと、彼は、
「全くだ。人の生を喜ぶ人間もいれば、死を喜ぶ人間もいる。私には想像もできないが、武器を売ったり人を殺したりして生きている人間は何をレーゾンデートルにして生きてるんだろうね……あぁ、そうだ。君に頼みたいことがあったんだ。息子が雑誌の懸賞のクイズが解けないと泣きついてきてね。この怪盗Xからの挑戦状とかいうクイズなんだが、子供向けのクイズの割にはずいぶん手強くて、しかも締め切りが明日までらしい。すまないが、解くのを手伝ってくれないか? 息子ときたら切羽詰まるといつも僕を頼るから困ったもんだよ」
口では困ったもんだよ、と言っておきながら顔がニヤけている彼を微笑ましく思いつつ、私はその怪盗Xからの挑戦状に挑むことにした。
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