2016年09月26日
二百七十一話 お題:傍線(文や語の横に強調・注意などのために引く線) 縛り:鳥の子餅(祝儀用の、平たい卵形の紅白の餅)、宝庫(貴重なものを多く含んでいるもの)、デキシー(十九世紀末にアメリカ南部で生まれた最も初期のジャズ)、悲痛(あまりに悲しくて心が痛むこと)、馴染み(なれ親しんで知っていること)
最近まで入院していた友人から聞いた話である。
「学生の頃の話なんだが、大学の側の商店街にとんでもないレコードショップがあったんだよ」
そのレコードショップは気をつけていても見落としかねないほど地味な佇まいで、中は貴重なレコードの宝庫だったという。
「1960年代のデキシーのレコードのオリジナル版がほぼ完璧な保存状態でゴロゴロ置いてあるような店だったからなぁ。ただ、店の中に妙な貼り紙がしてあってさ」
その貼り紙には、
『犬を連れての入店、絶対にお断り! もし犬を連れて入店された場合永久入店禁止の上これまで購入された全ての商品を回収させていただきます』
と書いてあったという。
「犬を連れて店に入ることなんてないから特に気にしてなかったんだけど、ある時大学の友達から、妹をそのレコードショップに連れていってやってほしい、って言われたんだよ」
友達の妹は目が不自由で、外を歩くには盲導犬の助けが必要だった。彼はレコードショップに友達の妹を連れていくかどうか悩んだが、
「盲導犬なら大丈夫だろうって思って連れていったんだよ。仮に怒られたとしても事情を説明すればわかってもらえると思ったしな。でも」
彼と友達の妹がそのレコードショップに入ると、中は廃墟になっていたという。
「友達の妹さん、悲痛な顔になっちまってさ。俺は俺でそのレコードショップがもう馴染みの店みたいになってたからかなりショックだったし。人生であそこまで気まずかったことって多分ないんじゃないかな」
彼は友達の妹と近くの駅で別れ、家に帰ったという。家に入ると中は泥棒に入られたように荒らされており、床中に動物の糞と尿、足跡が残っていた。そして問題のレコードショップで買ったレコードが一枚残らず消えていたそうだ。
「泣きっ面に蜂っていうかあん時確か本当に泣いたんだよなぁ、俺。あーあ、思い出したらなんか気が滅入ってきた。甘いもんでも食べて気分変えよう」
そう言うと彼は快気祝いにもらったという鳥の子餅を出してきてくれた。
「学生の頃の話なんだが、大学の側の商店街にとんでもないレコードショップがあったんだよ」
そのレコードショップは気をつけていても見落としかねないほど地味な佇まいで、中は貴重なレコードの宝庫だったという。
「1960年代のデキシーのレコードのオリジナル版がほぼ完璧な保存状態でゴロゴロ置いてあるような店だったからなぁ。ただ、店の中に妙な貼り紙がしてあってさ」
その貼り紙には、
『犬を連れての入店、絶対にお断り! もし犬を連れて入店された場合永久入店禁止の上これまで購入された全ての商品を回収させていただきます』
と書いてあったという。
「犬を連れて店に入ることなんてないから特に気にしてなかったんだけど、ある時大学の友達から、妹をそのレコードショップに連れていってやってほしい、って言われたんだよ」
友達の妹は目が不自由で、外を歩くには盲導犬の助けが必要だった。彼はレコードショップに友達の妹を連れていくかどうか悩んだが、
「盲導犬なら大丈夫だろうって思って連れていったんだよ。仮に怒られたとしても事情を説明すればわかってもらえると思ったしな。でも」
彼と友達の妹がそのレコードショップに入ると、中は廃墟になっていたという。
「友達の妹さん、悲痛な顔になっちまってさ。俺は俺でそのレコードショップがもう馴染みの店みたいになってたからかなりショックだったし。人生であそこまで気まずかったことって多分ないんじゃないかな」
彼は友達の妹と近くの駅で別れ、家に帰ったという。家に入ると中は泥棒に入られたように荒らされており、床中に動物の糞と尿、足跡が残っていた。そして問題のレコードショップで買ったレコードが一枚残らず消えていたそうだ。
「泣きっ面に蜂っていうかあん時確か本当に泣いたんだよなぁ、俺。あーあ、思い出したらなんか気が滅入ってきた。甘いもんでも食べて気分変えよう」
そう言うと彼は快気祝いにもらったという鳥の子餅を出してきてくれた。
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