2016年06月11日
百六十四話 お題:樵(きこり、山林の木を切り出すことを職業とする人) 縛り:不適任(適任でないこと)
祖父から聞いた話である。
祖父は数年前まで樵として働いていたのだが、同僚の一人にあまりにも樵には不適任な男性がいたという。
「まぁ職場じゃ若い方だったよ。と言っても三十超えてたけどな。最初はそんなおかしなところはないと思ってたんだが、段々と切られる木の悲鳴が聞こえる、とか、木はまだ生きたがってるのにどうして切るんだ、とか妙なことばっかり言うようになって、ついに首になったんだ。そしたら俺達の仕事を邪魔しに来るようになってな。ある時なんか俺達が木を切ってる最中に襲いかかってきて、仲間が一人殺されちまったよ」
その男性は山の中に逃げ込み、今も捕まっていないという。
「もしかしたらもう死んでるのかもしれんけど、ただ今も時々木を切ってたやつが殺されたってニュースでやるからなぁ。俺は多分そいつの仕業だろうと思ってるよ。昔だったら話に尾ひれ背びれがついて妖怪だの鬼だの言われてたのかもしれんなぁ」
そう言うと祖父は喉が乾いたのか、お茶をゆっくりと啜った。
祖父は数年前まで樵として働いていたのだが、同僚の一人にあまりにも樵には不適任な男性がいたという。
「まぁ職場じゃ若い方だったよ。と言っても三十超えてたけどな。最初はそんなおかしなところはないと思ってたんだが、段々と切られる木の悲鳴が聞こえる、とか、木はまだ生きたがってるのにどうして切るんだ、とか妙なことばっかり言うようになって、ついに首になったんだ。そしたら俺達の仕事を邪魔しに来るようになってな。ある時なんか俺達が木を切ってる最中に襲いかかってきて、仲間が一人殺されちまったよ」
その男性は山の中に逃げ込み、今も捕まっていないという。
「もしかしたらもう死んでるのかもしれんけど、ただ今も時々木を切ってたやつが殺されたってニュースでやるからなぁ。俺は多分そいつの仕業だろうと思ってるよ。昔だったら話に尾ひれ背びれがついて妖怪だの鬼だの言われてたのかもしれんなぁ」
そう言うと祖父は喉が乾いたのか、お茶をゆっくりと啜った。
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