2016年06月03日
百五十六話 お題:山吹色(ヤマブキの花のような色) 縛り:振り返る(後方へ顔を向ける)、シミュレーション(現実に想定される条件を取り入れて、実際に近い状況をつくり出すこと)、後(残った部分)
大学の同期の話である。
彼は大学を卒業後、大手の広告会社に就職したのだが、ある時重要な企画のプレゼンが迫っているにも関わらず上司から大量の仕事を押しつけられたという。
「あのクソ野郎、俺がプレゼンのシミュレーションもまともにできてない状態なのに仕事押しつけやがって、後よろしくね、じゃねぇんだよ。上司じゃなかったらほんと殴り飛ばしてたよ」
彼は時間の経過も忘れて仕事に没頭していたのだが、不意に背後から光が差してきたことで我に返った。
「あー、朝になっちまったかと思ってさ。休憩もかねて朝日を見ようとしたんだよ」
彼は後ろを振り返り、窓の方を見た。だが朝日を見ることはできなかった。
「振り返った方の窓全部が山吹色に光ってて外が全く見えないんだよ。一体何が光ってるんだろうと思って、窓の方に歩いていったら」
気がつくと、彼は窓を開けて外に飛び出していたという。彼の職場はビルの20階にあった。
「医者から助かったのは奇跡だって言われたよ。というか俺もそう思うしな。ただ、もう二度とまともには歩けないらしいから、これからのことを考えると気が重いよ」
私が窓の外には何があったんだ、と聞くと、
「いや、何もなかったよ……せめて何かあってくれたら、飛び降りたのをそいつのせいにできたのにな」
彼はひどく残念そうにそう言った。
彼は大学を卒業後、大手の広告会社に就職したのだが、ある時重要な企画のプレゼンが迫っているにも関わらず上司から大量の仕事を押しつけられたという。
「あのクソ野郎、俺がプレゼンのシミュレーションもまともにできてない状態なのに仕事押しつけやがって、後よろしくね、じゃねぇんだよ。上司じゃなかったらほんと殴り飛ばしてたよ」
彼は時間の経過も忘れて仕事に没頭していたのだが、不意に背後から光が差してきたことで我に返った。
「あー、朝になっちまったかと思ってさ。休憩もかねて朝日を見ようとしたんだよ」
彼は後ろを振り返り、窓の方を見た。だが朝日を見ることはできなかった。
「振り返った方の窓全部が山吹色に光ってて外が全く見えないんだよ。一体何が光ってるんだろうと思って、窓の方に歩いていったら」
気がつくと、彼は窓を開けて外に飛び出していたという。彼の職場はビルの20階にあった。
「医者から助かったのは奇跡だって言われたよ。というか俺もそう思うしな。ただ、もう二度とまともには歩けないらしいから、これからのことを考えると気が重いよ」
私が窓の外には何があったんだ、と聞くと、
「いや、何もなかったよ……せめて何かあってくれたら、飛び降りたのをそいつのせいにできたのにな」
彼はひどく残念そうにそう言った。
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