2016年05月25日
百四十七話 お題:ライター(点火する器具) 縛り:オープンカー(屋根のない自動車)
私の兄が体験した話である。
兄は車好きで、特に日差しが照りつける中オープンカーで走るのが大好きなのだという。
「その日はもうとにかく暑くって、走るには絶好の日和だったんだ。それで朝からずーっと車走らせてたんだけど夕方になったら雲が出てきて、夕立が来そうな感じになったんだよ。そしたら急に煙草が吸いたくてたまらなくなってさ。降ってくる前に一本吸っちまうかと思って煙草に火をつけたら」
上の方からすっ、と葉巻を持った手が下りてきたという。思わず兄が見上げると、上空の雲から途方もなく長い人の腕が兄のところまで伸びていた。直後、その腕に気を取られていた兄は目の前に迫っていたカーブを曲がりきれずガードレールに衝突し、入院する羽目になった。
「できれば幻覚だと思いたいけど、もしそうじゃなかったらと思うとぞっとするよ。ただあの葉巻がなぁ、火をつけてもいないのに滅茶苦茶いい香りだったんだよなぁ。畜生、吸ってみたいなぁ」
とりあえず馬鹿なこと言ってないで禁煙しろ、と叱っておいた。
兄は車好きで、特に日差しが照りつける中オープンカーで走るのが大好きなのだという。
「その日はもうとにかく暑くって、走るには絶好の日和だったんだ。それで朝からずーっと車走らせてたんだけど夕方になったら雲が出てきて、夕立が来そうな感じになったんだよ。そしたら急に煙草が吸いたくてたまらなくなってさ。降ってくる前に一本吸っちまうかと思って煙草に火をつけたら」
上の方からすっ、と葉巻を持った手が下りてきたという。思わず兄が見上げると、上空の雲から途方もなく長い人の腕が兄のところまで伸びていた。直後、その腕に気を取られていた兄は目の前に迫っていたカーブを曲がりきれずガードレールに衝突し、入院する羽目になった。
「できれば幻覚だと思いたいけど、もしそうじゃなかったらと思うとぞっとするよ。ただあの葉巻がなぁ、火をつけてもいないのに滅茶苦茶いい香りだったんだよなぁ。畜生、吸ってみたいなぁ」
とりあえず馬鹿なこと言ってないで禁煙しろ、と叱っておいた。
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