2016年05月14日
百三十六話 お題:ペナルティー(処罰) 縛り:割合(全体の中でそれが占めている比率)
行きつけのバーのマスターから聞いた話である。
彼は先代のマスターの下で修業し、この店を受け継いだそうなのだが、その先代のマスターの指導が半端なく厳しかったのだそうだ。
「先代はカクテルを作る時のお酒の割合に病的なこだわりがありましてね。理想の割合と実際の割合がほんの一滴でも違えば味が台なしになると言って、それはもう厳しく教えられました」
そう言うとマスターは来ていたシャツの袖をまくり、腕を私に見せた。腕にはびっしりと点が並んでおり、皮膚病の跡ですかと私が聞くとマスターは、
「これらは全て先代につけられたんですよ。カクテルの配合を間違える度に焼いた針で私の腕を刺したんです」
と言った。私は驚き、どうして逃げなかったんですかと聞いた。するとマスターは、
「それだけ先代の作るカクテルが素晴らしかったからですよ。焼いた針で腕を刺される痛みは本当に辛いものでしたが、それでも私は先代のカクテルを自分のものにしたかった。その一念で、ずっと苦しみに耐えたんです」
正直に言ってしまうと、その話を聞いて私はマスターが実はとんでもないマゾヒストではないかと疑ってしまった。すまない、マスター。
彼は先代のマスターの下で修業し、この店を受け継いだそうなのだが、その先代のマスターの指導が半端なく厳しかったのだそうだ。
「先代はカクテルを作る時のお酒の割合に病的なこだわりがありましてね。理想の割合と実際の割合がほんの一滴でも違えば味が台なしになると言って、それはもう厳しく教えられました」
そう言うとマスターは来ていたシャツの袖をまくり、腕を私に見せた。腕にはびっしりと点が並んでおり、皮膚病の跡ですかと私が聞くとマスターは、
「これらは全て先代につけられたんですよ。カクテルの配合を間違える度に焼いた針で私の腕を刺したんです」
と言った。私は驚き、どうして逃げなかったんですかと聞いた。するとマスターは、
「それだけ先代の作るカクテルが素晴らしかったからですよ。焼いた針で腕を刺される痛みは本当に辛いものでしたが、それでも私は先代のカクテルを自分のものにしたかった。その一念で、ずっと苦しみに耐えたんです」
正直に言ってしまうと、その話を聞いて私はマスターが実はとんでもないマゾヒストではないかと疑ってしまった。すまない、マスター。
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