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ペン牛といいます。子供の頃から怖い話が好きで、ブログを始めたいけどネタがない、と悩んでいたところ辞書からランダムに選んだ言葉を使って怖い話を書けないかと思いつき、やってみたら案外できることが判明、気がついたらブログを開設していた。こんなですが、どうぞよろしくお願いします。なお当ブログはリンクフリーです。リンクしてもらえるとすごく喜びます。にほんブログ村アクセスランキング、人気ブログランキング、アルファポリスに参加中です。 


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2016年04月29日

百二十一話 お題:幅広(普通のものより幅が広いこと) 縛り:乳母日傘(乳母に世話をさせたり日傘をさしかけたりして子供を保護しすぎること)、艫(とも、船の後方の部分)

 地元の友人から聞いた話である。

彼はいいところのお嬢さんと結婚し、今子供を育てているのだが、
「嫁と嫁の実家が息子を甘やかしすぎるんだよ。乳母日傘って言うのかな。もう息子のためならなんでもしてやるって感じでさ。正直よくないと思うんだ」
 彼の息子は三歳になるが、他の子と比べて明らかに臆病で、自分でできることも少ないという。
「テントウムシすら怖がって泣き出すくらいだからさすがに心配でさ。こうなったら俺は俺で息子のためになることをしようと思って」
 まずは自然に触れさせようと、子供と一緒に船に乗り、船を降りたら今度は有名な山に登る計画を立てたのだという。奥さんや奥さんの実家には猛反対されたそうだが、彼はそれを強行した。
「船に乗ってデッキから海を眺めてたら、息子はやっぱり怖がってたんだけど、怖がり方がちょっと普段と違っててさ」
 息子は船の艫の側の海面を指さして、あれ怖い、あれ怖い、と繰り返し言っていた。見ると海面に幅の広い巨大な影があり、まさかクジラか、と彼が思っていると、
「幅10メートルくらいかなぁ、そのくらいある人の手が海から出てきてさ。すぐに引っこみはしたんだけど、俺はびっくりしちゃってしばらく動けなかったんだ。でも息子は出てきた手を見て面白そうに笑っててさ。あぁ、こいつ俺より勇気があるじゃないかって思えて、なんだかすごく嬉しかったんだ」
 それから彼は長い間息子の将来が楽しみだ、きっと大物になるぞ、などと言い続けていた。どうやら彼は奥さんや奥さんの両親とは違うタイプの親馬鹿のようである。

posted by ペン牛 at 11:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い話
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