2016年04月28日
百二十話 お題:町外れ(町の家並みが終わろうとする辺り) 縛り:洟(鼻水)、ゴリラ(霊長目ヒト科ゴリラ属に分類される哺乳類の総称)、自棄酒(自棄になって前後の見境もなく飲む酒)
酒の席で友人から聞いた話である。
「酒と言えば、俺前にゴリラと酒飲んだことがあるんだよ」
彼の話はこのように始まった。なんでも今住んでいる町の動物園からゴリラが脱走したことがあり、町外れでその逃げたゴリラに出会ったのだという。
「そいつどうも特別なゴリラみたいで、人間の手話ができるんだよ。俺も手話はできるから話をしてみたら、なんか動物園の暮らしが嫌になったらしくて、洟すすりだしてさ。かと言って俺にはどうしようもないし、酒でも飲んだら少しは気が紛れるかと思って自販機でビール買ってさ。ゴリラの自棄酒につきあったんだよ」
ゴリラはビールを飲みながら、手話を使ってずっと彼に愚痴を言い続けていたという。相手が人間なら鬱陶しく思うところだったが、ゴリラがビールを飲みながら愚痴を言っているという状況の面白さのために、彼は別段不快に思うこともなく愚痴を聞き続けていたそうだ。
「ゴリラはビール一缶あけたらなんか落ち着いたみたいでさ。このままいたら色々迷惑になるから動物園に帰るって言ったんだ。ビール気に入ったんなら動物園まで差し入れてやろうかって聞いたら、動物園にいる時の自分を見られたくないから来ないでくれって断られたよ。でもそいつものすごく寂しそうな顔しててさ。行った方がいいのか、行かない方がいいのか、どっちなのかなぁ」
彼はもうずいぶんとそのことを考え続けているそうなのだが、中々結論が出ないという。
「酒と言えば、俺前にゴリラと酒飲んだことがあるんだよ」
彼の話はこのように始まった。なんでも今住んでいる町の動物園からゴリラが脱走したことがあり、町外れでその逃げたゴリラに出会ったのだという。
「そいつどうも特別なゴリラみたいで、人間の手話ができるんだよ。俺も手話はできるから話をしてみたら、なんか動物園の暮らしが嫌になったらしくて、洟すすりだしてさ。かと言って俺にはどうしようもないし、酒でも飲んだら少しは気が紛れるかと思って自販機でビール買ってさ。ゴリラの自棄酒につきあったんだよ」
ゴリラはビールを飲みながら、手話を使ってずっと彼に愚痴を言い続けていたという。相手が人間なら鬱陶しく思うところだったが、ゴリラがビールを飲みながら愚痴を言っているという状況の面白さのために、彼は別段不快に思うこともなく愚痴を聞き続けていたそうだ。
「ゴリラはビール一缶あけたらなんか落ち着いたみたいでさ。このままいたら色々迷惑になるから動物園に帰るって言ったんだ。ビール気に入ったんなら動物園まで差し入れてやろうかって聞いたら、動物園にいる時の自分を見られたくないから来ないでくれって断られたよ。でもそいつものすごく寂しそうな顔しててさ。行った方がいいのか、行かない方がいいのか、どっちなのかなぁ」
彼はもうずいぶんとそのことを考え続けているそうなのだが、中々結論が出ないという。
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