2020年12月03日
出雲大社と因幡の素うさぎ 〜歴史は常に勝者によって編纂されていく〜
出雲大社と因幡の素うさぎ
〜歴史は常に勝者によって編纂されていく〜
教科書では縄文時代が終わってもっと進んだ弥生時代が始まった、という風に習った。しかし、当時すでにその論に疑問を投げかけていた友人がいた。
縄文時代の土器が弥生時代の土器より時代が古く劣っているなんてそもそも間違っている、縄文時代の土器の方が技術的にずっと優れている、と友人はそのとき言った。
そのときはあまりピンとこなかったが、どちらが優れているかどうかは別として、時代が変わったために土器が変わった訳ではなく、そもそもまったく別の人たちが作ったものが残っているから時代が変わったと看做されていたのだろうと思う。
縄文時代:狩猟採集社会(紀元前145世紀〜10世紀)
弥生時代:農耕社会(紀元前10世紀〜紀元後3世紀)
135世紀も継続した縄文時代は平和な時代でもあったのだろう。自然と一体化した精神性の高さはアイヌに名残を留めているように思われる。それから、東北のアテルイの時代も。
その太平の日本に、九州北部あたりに外から入ってきたのが稲作文化を持つ弥生人だ。フロー(流れる)文明にストック(資本蓄積)文明が入ってきた。ストック文明は土地がほしいので、弥生時代になると一転、争いの国土となっていく。
国譲り神話では、大国主神は、「私には何の異存もありません。ただひとつ、国を譲る代わりに私の住居として、大きく立派な御殿を建てていただきたい。自分の子供たちは、事代主神が率先して天つ神(あまつかみ)の子孫に仕えるのであれば、それに従わない者はいない」と、自ら退いたように語られている。
素ウサギ神話というのは。
オオナムジ(大国主命)は、スサノオ命の子のひとりで、80人もの兄弟神(八十神)がいた。兄弟神たちは、皆、稲羽の八上神を妻にしたいと考え、連れだって稲羽に向かった。オオナムジは袋を背負わされ、従者のようなかっこうでつき従っていった。
やがて一行が気多の前にさしかかると、そこに赤裸に皮をむかれたウサギが伏せていた。
赤裸にむかれて苦しむウサギに向かって、兄弟神たちはいった。
「おいウサギよ、海の塩水を浴びたあと、風にあたってみたまえ。高い山の尾なら、風もずいぶんふきさらしだろうから、そこに伏せているとよくなるだろう」
いわれたとおりにしたウサギは、一層ひどい痛みにもだえ苦しんだ。そこにオオナムジが通りかかり、わけを問うた。
「私は於岐の島のウサギでございます。かの島からこちらに渡りたいと思いましたが、方法がございません。そこでワニをだまして彼らをズラリと岸まで並べ、その背を跳びながらこの岸に渡ったのですが、そのときついた嘘がバレて赤裸に皮をむかれ、おまけに八十神の教えに従ったらこのざまです」
そこでオオナムジは、真水で身を洗い、蒲英をまき散らしてその上を転がると癒えることをウサギに教えた。いわれたとおりにしたウサギの体はもとどおりになり、稲羽のウサギ神となった。そのウサギ神の申すよう―。
「あなたの兄弟神は八上姫を得ることはできますまい。袋などかつがされているとはいえ、八上姫と結ばれるのは貴神です」
という物語である。
ウサギは月と結びついている。これは広く東アジアの伝説中に見ることができる。中国では月を「玉兎」という。また、ウサギを「名月の精」ともいう。中秋の名月を楽しむ風習は、もちろん日本だけのことではない。中国では「兎児爺(トルイエ)」という牡ウサギの土人形を月神に見立てて飾った。月の中に住むウサギはオスだ。このオスが月を定期的にはらませる。というのも、月は女性、あるいは無意識の普遍的象徴だからだ。
このことから、ウサギは無意識世界と意識世界を結ぶ動物だということがわかる。
さて、九州に上陸した外来の弥生人が、土着の縄文人を支配していく。そして支配がなった後に、それを正当づけるために編まれるのが歴史書(「古事記」(712年)や「日本書紀」(720年))だ。
記紀の中で、葦原中国(あしはらのなかつくに=日本)は、高天原(たかまがはら)を拠点とする天津神(天の神:弥生勢力?)によって平定されている。国津神(国の神:縄文勢力?)の最後の抵抗勢力は大国主(スサノオの子、出雲大社の祭神)だったようだ。記紀の中では、その大国主が国を譲って天津神は正当な統治者となる。これが権威の根源である。
縄文日本には津々浦々まで龍神が祭られていた。伊勢の地にも、ニギハヤヒ(別名:天照大神アマテルオオカミ:男神)と一対で祭られていた龍神(女神)がいた。それが瀬織津姫である。
持統天皇は、全国的に勢力を持つ瀬織津姫を封印しなければならなかった。それが縄文(国津神)の女神だったからだ。そこで、伊勢神宮の祭神を天照大神(アマテラスオオミカミ)の女神(一神)とし、記紀から瀬織津姫の名を省き、地域の各神社の祭神を瀬織津姫以外に変えるように命令した。
持統天皇は、「千と千尋の神隠し」で千尋の名を奪った湯婆婆のごとく、瀬織津姫の名を全国から奪っていった。抵抗する神社は迫害にあったり、殺されたりすることもあったようだから容赦はない。命まで奪っていく非常さの裏に、凄まじい孤独と不安の闇が見える気がする。
この、持統天皇は女帝でありその生い立ちは数奇なものだった。
大化の改新(645年)の中心人物である天智天皇(中大兄皇子)は、蘇我入鹿を打ち破ったときの同志である蘇我石川麻呂の娘遠智娘(おちのいらつめ)を嫁(の一人)としてもらう。が、右大臣となり勢力を増す石川麻呂に脅威を感じたのか、「裏切り」の濡れ衣を着せて攻め滅ぼす。夫に両親を殺された遠智娘は悲嘆のあまり亡くなり、2人の娘が残された。
その次女が13歳の時に天智天皇の弟大海人皇子に政略結婚させられた。その次女が後の持統天皇である。
夫(父の弟)に祖父母及び母の仇である父を討たせた持統天皇は、天武崩御後、実権を掌握。子に先立たれたが、孫のバックについて日本初の上皇(太上天皇)となって政治を支配し続けた。
このように見ると、家庭崩壊、一族滅亡、国家滅亡までも見せられてきた持統天皇は、何が何でも安定した強い国作りをしようとしたのではないだろうか、と家族カウンセリングを行うカウンセラーさんは見ている。法治国家を推進したのも(「大宝律令」を完成(701年))、中国に倣って日本で初めて都城制による城郭都市を建設(藤原京)したのも、不退転の決意と執念を感じさせる。
策略家と言われている持統天皇だが、内実は、怯えた女の子(外から見ればブラックホール)が完璧な安心を得るために、自分を守る城塞、人を罰する刑罰など、あれもこれも整備していったのかもしれない。
生まれてこの方、人の裏切りを見過ぎてきた持統天皇。壁を作り、罰則を作っても安心できない。問題は人の心の中にあるからだ。そこで、人々が決して自分に向かってこないように、自分の権力を絶対的なものにする必要があった。そして人々の心を権威に向かって統一する必要があった。悲しい人生である。
素ウサギは、出雲と深い関係があり、ウサギが無意識に関係するということは、魂の故郷にも通じているのではないかと思われます。
神話の世界を旅してみると、日本人のルーツにも思いを馳せることが出来ます。各地に残る伝承、文字を持たなかった地域の歴史を探ってみると思わぬ宝物が埋もれていることに気付くかも知れません。
〜歴史は常に勝者によって編纂されていく〜
教科書では縄文時代が終わってもっと進んだ弥生時代が始まった、という風に習った。しかし、当時すでにその論に疑問を投げかけていた友人がいた。
縄文時代の土器が弥生時代の土器より時代が古く劣っているなんてそもそも間違っている、縄文時代の土器の方が技術的にずっと優れている、と友人はそのとき言った。
そのときはあまりピンとこなかったが、どちらが優れているかどうかは別として、時代が変わったために土器が変わった訳ではなく、そもそもまったく別の人たちが作ったものが残っているから時代が変わったと看做されていたのだろうと思う。
縄文時代:狩猟採集社会(紀元前145世紀〜10世紀)
弥生時代:農耕社会(紀元前10世紀〜紀元後3世紀)
135世紀も継続した縄文時代は平和な時代でもあったのだろう。自然と一体化した精神性の高さはアイヌに名残を留めているように思われる。それから、東北のアテルイの時代も。
その太平の日本に、九州北部あたりに外から入ってきたのが稲作文化を持つ弥生人だ。フロー(流れる)文明にストック(資本蓄積)文明が入ってきた。ストック文明は土地がほしいので、弥生時代になると一転、争いの国土となっていく。
国譲り神話では、大国主神は、「私には何の異存もありません。ただひとつ、国を譲る代わりに私の住居として、大きく立派な御殿を建てていただきたい。自分の子供たちは、事代主神が率先して天つ神(あまつかみ)の子孫に仕えるのであれば、それに従わない者はいない」と、自ら退いたように語られている。
素ウサギ神話というのは。
オオナムジ(大国主命)は、スサノオ命の子のひとりで、80人もの兄弟神(八十神)がいた。兄弟神たちは、皆、稲羽の八上神を妻にしたいと考え、連れだって稲羽に向かった。オオナムジは袋を背負わされ、従者のようなかっこうでつき従っていった。
やがて一行が気多の前にさしかかると、そこに赤裸に皮をむかれたウサギが伏せていた。
赤裸にむかれて苦しむウサギに向かって、兄弟神たちはいった。
「おいウサギよ、海の塩水を浴びたあと、風にあたってみたまえ。高い山の尾なら、風もずいぶんふきさらしだろうから、そこに伏せているとよくなるだろう」
いわれたとおりにしたウサギは、一層ひどい痛みにもだえ苦しんだ。そこにオオナムジが通りかかり、わけを問うた。
「私は於岐の島のウサギでございます。かの島からこちらに渡りたいと思いましたが、方法がございません。そこでワニをだまして彼らをズラリと岸まで並べ、その背を跳びながらこの岸に渡ったのですが、そのときついた嘘がバレて赤裸に皮をむかれ、おまけに八十神の教えに従ったらこのざまです」
そこでオオナムジは、真水で身を洗い、蒲英をまき散らしてその上を転がると癒えることをウサギに教えた。いわれたとおりにしたウサギの体はもとどおりになり、稲羽のウサギ神となった。そのウサギ神の申すよう―。
「あなたの兄弟神は八上姫を得ることはできますまい。袋などかつがされているとはいえ、八上姫と結ばれるのは貴神です」
という物語である。
ウサギは月と結びついている。これは広く東アジアの伝説中に見ることができる。中国では月を「玉兎」という。また、ウサギを「名月の精」ともいう。中秋の名月を楽しむ風習は、もちろん日本だけのことではない。中国では「兎児爺(トルイエ)」という牡ウサギの土人形を月神に見立てて飾った。月の中に住むウサギはオスだ。このオスが月を定期的にはらませる。というのも、月は女性、あるいは無意識の普遍的象徴だからだ。
このことから、ウサギは無意識世界と意識世界を結ぶ動物だということがわかる。
さて、九州に上陸した外来の弥生人が、土着の縄文人を支配していく。そして支配がなった後に、それを正当づけるために編まれるのが歴史書(「古事記」(712年)や「日本書紀」(720年))だ。
記紀の中で、葦原中国(あしはらのなかつくに=日本)は、高天原(たかまがはら)を拠点とする天津神(天の神:弥生勢力?)によって平定されている。国津神(国の神:縄文勢力?)の最後の抵抗勢力は大国主(スサノオの子、出雲大社の祭神)だったようだ。記紀の中では、その大国主が国を譲って天津神は正当な統治者となる。これが権威の根源である。
縄文日本には津々浦々まで龍神が祭られていた。伊勢の地にも、ニギハヤヒ(別名:天照大神アマテルオオカミ:男神)と一対で祭られていた龍神(女神)がいた。それが瀬織津姫である。
持統天皇は、全国的に勢力を持つ瀬織津姫を封印しなければならなかった。それが縄文(国津神)の女神だったからだ。そこで、伊勢神宮の祭神を天照大神(アマテラスオオミカミ)の女神(一神)とし、記紀から瀬織津姫の名を省き、地域の各神社の祭神を瀬織津姫以外に変えるように命令した。
持統天皇は、「千と千尋の神隠し」で千尋の名を奪った湯婆婆のごとく、瀬織津姫の名を全国から奪っていった。抵抗する神社は迫害にあったり、殺されたりすることもあったようだから容赦はない。命まで奪っていく非常さの裏に、凄まじい孤独と不安の闇が見える気がする。
この、持統天皇は女帝でありその生い立ちは数奇なものだった。
大化の改新(645年)の中心人物である天智天皇(中大兄皇子)は、蘇我入鹿を打ち破ったときの同志である蘇我石川麻呂の娘遠智娘(おちのいらつめ)を嫁(の一人)としてもらう。が、右大臣となり勢力を増す石川麻呂に脅威を感じたのか、「裏切り」の濡れ衣を着せて攻め滅ぼす。夫に両親を殺された遠智娘は悲嘆のあまり亡くなり、2人の娘が残された。
その次女が13歳の時に天智天皇の弟大海人皇子に政略結婚させられた。その次女が後の持統天皇である。
夫(父の弟)に祖父母及び母の仇である父を討たせた持統天皇は、天武崩御後、実権を掌握。子に先立たれたが、孫のバックについて日本初の上皇(太上天皇)となって政治を支配し続けた。
このように見ると、家庭崩壊、一族滅亡、国家滅亡までも見せられてきた持統天皇は、何が何でも安定した強い国作りをしようとしたのではないだろうか、と家族カウンセリングを行うカウンセラーさんは見ている。法治国家を推進したのも(「大宝律令」を完成(701年))、中国に倣って日本で初めて都城制による城郭都市を建設(藤原京)したのも、不退転の決意と執念を感じさせる。
策略家と言われている持統天皇だが、内実は、怯えた女の子(外から見ればブラックホール)が完璧な安心を得るために、自分を守る城塞、人を罰する刑罰など、あれもこれも整備していったのかもしれない。
生まれてこの方、人の裏切りを見過ぎてきた持統天皇。壁を作り、罰則を作っても安心できない。問題は人の心の中にあるからだ。そこで、人々が決して自分に向かってこないように、自分の権力を絶対的なものにする必要があった。そして人々の心を権威に向かって統一する必要があった。悲しい人生である。
素ウサギは、出雲と深い関係があり、ウサギが無意識に関係するということは、魂の故郷にも通じているのではないかと思われます。
神話の世界を旅してみると、日本人のルーツにも思いを馳せることが出来ます。各地に残る伝承、文字を持たなかった地域の歴史を探ってみると思わぬ宝物が埋もれていることに気付くかも知れません。
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