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2022年10月30日

原子力発電所と健康 被爆の基準

IMG_2528_2.JPG 専門的に言えば、原子力発電所の安全性ということはですね、今、多重防御と固有安全性のこの極めて大切な2つだけをやりましたが、それ以外に、取水ポンプの問題であるとかですね、それから今度のことで分かりましたけれど、地震による建物の亀裂の発生とかですね、いっぱい付随的なものがありまして、それらを全部議論しなきゃいけないんですが、本当にいっぱい議論することがあるということを頭に入れていただいて、ここでは少し足早く進んでですね、原発講座の7として健康に関することに少し触れてみたいと思います。

まず第一に、非常に重要なことは、被曝には安全ということはないんですよね。別にこれは隠しても何でもないんです。私は反原発じゃないんで、そういうレッテルを貼らないでほしいんですが、被曝には安全はないんですよ。それはどうしてか。
安全である限度を調べようと思って、ずいぶん研究したんですね。メガマウス計画って100万匹のマウスを動物実験で使ったりして、これはまあ動物愛護からいったら非常に問題なんですが、なにしろ安全性をはっきりさせろ、はっきりさせろっていうことで反原発運動が起こっているもんですから、それに応えなきゃいけないということで、100万匹のマウスを使った被爆実験をやったんですね。
ものすごくマウスは苦しんで死んでいった。人間本位にやると、こういう人間本位っていうのは皆さんが言ってる自然との調和っていうのと、どういうふうに関係するのかなと、僕なんか思うんですが、まあ人間だからしょうがないってことに今なってるんですね。

その結果、結局被曝の安全限界っていうのをを決めることができなかったんですよ。これも変な話なんですね。私はタバコは肺ガンの原因ではないんじゃないかっていうことで、ずいぶん疑問を述べているんですが、被爆とかタバコって、ちょっと似てるんですよね。
自然界にもあるんです。タバコも自然界にいくらでもあるんです。煙ですからね。煙に対するみんなの嫌悪感っていうのは、すごく強くて、今度のタバコの追放運動っていうのは人間の持ってる煙に対する嫌悪感が出たんじゃないかと思うんですが、被曝もそうでですね。自然界に放射線はいくらでもあるんですね。もちろん太陽からも来ますし、土の中にも被曝する放射性元素がありますしね。それからさらに地殻の中っていうか、地球の奥の方にはいくらでもあります。だから自然放射線ってのは、いっぱいあるんですね。
極端な例をあげますと、オクロの自然原子炉っていうのがアフリカにありましてね、ウランがこう溜まってるところがあるんですね。そこで自然に減速材なんかが土とかそういうのが働いてですね、17億年ぐらいの長くに渡って、原子炉として熱を出してたっていう所もあるんですよ。
つまり地上には放射線もあります。放射線っていうのは、波長が長くなれば紫外線になり、可視光になり、ってなるわけですから。もちろんそういうのが人間の細胞に影響を及ぼすことがあるんですね。ですから自然界と同じくらいだったらいいだろうっていうことで、安全基準っていうのを決められるんじゃないかというふうに思ってたわけですね。

これは広島、長崎なんかと同じように、ずっと長い問題で、ずいぶんやられたんですね。それから実際に、人間に、広島、長崎とか事故とかそういうので、患者さんが出てきます。甲状腺ガンなんかが一番典型ですが、心臓にセシウムが貯まって心筋に影響を及ぼしたりですね、妊婦とかそういう細胞分裂が盛んな人とかそういう人にはいろんなところに障害が出る。これは国立がんセンターの被爆による各臓器ごとの、どのくらいガンみたいのができるのかということを見ていただくと分かるんですが、それで決めようと思ったんですよ。一所懸命実験もしたんです。研究もしたんですね、正直に。ところが分からないっていうことが分かったわけですよ。

もう一つはですね、遺伝子にも損傷を与えるんですね。遺伝子だけに損傷を与えるわけじゃないんですが、遺伝子にも損傷を与えるわけですね。ホメオパシーの原理がありますから、放射線のような毒物が少量当たれば健康に良いという面もあるんですよね。だけど遺伝子にも同時に影響を及ぼすので、どのくらいまで子孫に影響があるようにするかということで、現在の基準は一応、子供、孫ぐらいまでですね、ある程度安全であるという領域にしようということで、1年1ミリシーベルトっていうのが決まっているわけですね。

で今、皆さんほとんどの人は間違ってて、僕は虎ノ門ニュースでずいぶん丁寧に解説したので、そのあと有識者は少し発言を控えているようです。安全の範囲であるじゃないか、とか言ってる人がいっぱいいたんですが、それがいなくなった。
「社会の容認限度」という名前をつけているんですね。英語の訳ですから、いろんな日本語もあるんですけれども、「受忍限度」って言ったりするんですね。我慢できる範囲、つまり、必ず被曝っていうのは、ある程度ガンだとか臓器の疾患なんか起こるけれども、それは発電っていうメリットあるから我慢しようじゃないかと。我慢の限度。安全基準じゃないんですよ。安全は分からない。だけど、我慢しようっていうんで、それが1年1ミリシーベルトなんですね。ですから1年1ミリシーベルト以上浴びても大丈夫じゃないかとか、医療はもっと被爆してるじゃないか、とかって言うんですけど、一応1年1ミリシーベルト。で裁判の運用としてはですね、1年5ミリシーベルト以上浴びて白血病になった場合、白血病ってガンなんですが、白血病になった場合は労災に認定するという、現実にもそういうことが行われているわけですね。ですから受忍限度がある。まあこのぐらいだったらいいだろうっていうのがあると。

これは、そんなんじゃ、原子力発電所をやっちゃいけないじゃないか、ということはないんですよ。それは自動車はそうですね。自動車っていうのは、一時は1年に1万人も死んだ。それから減って、交通戦争が終わって交通事故が減って、1年に5,000人くらいになってもですね、事故でケガする人は100万人くらいいたんですよ。今はかなり減りましたけどね。だけどちょっと今は、インチキ交通事故死亡の基準を使ってますんでね、ちょっとデータとしては信頼できないんですよ。今は交通事故で亡くなっても、24時間以上経過した場合は、交通事故としないっていう、その変な説がありましてね。そのために、結局交通事故死を見かけ上減らそうということですね。ですから交通事故で即死の場合は別ですけど、病院に担がれて、死にそうなときは医者にちょっと頼んで延命措置をしてもらうとですね、その人は24時間生きてれば、交通事故死にならないということで、警察の点数が上がるというつまらないことが行われているので、ちょっと最近の交通事故死の統計はあまり信用はできないんですよ。ずいぶん減ってるので、もうごく普通にですね、交通事故で亡くなった場合は、交通事故死にした方が僕はいいと思いますけど、日本社会がそういうことになっちゃったんで、もうしょうがないですね。

交通事故で死ぬ人が5,000人、今は少し減ってますが、5,000人程度いるのにも関わらず、それから交通事故で負傷する人が50万人以上いるにもかかわらず、自動車が走ってるんですよ。だから安全じゃなくてもやっていいんですよね。これは僕がじゃないですよ、日本社会がそれを認めてるわけですよ。安全なものしかやらないっていうんじゃないんですよ。交通事故がありますからね。だから原子力も交通事故程度の被害以下っていうことでやってるんで、その意味じゃ誠意があるんですよ。

安全基準は決められない。つまりこれは安全ですかとか、今度の福島の被曝は安全ですかって聞かれたって、僕は安全ですと一切言ってない。1年1ミリシーベルト以下を安全とも言ってません。それは皆がそれでしょうがないと思っている限度だっていうことを一所懸命言ってるんですけど、原子力推進の人は、安全だ安全だって言ってます。
自分の意見がどうであれ、やはり正しいことを社会に伝えて、社会がどう判断するかっていうのが、もし自分と意見の違いを説得するのはいいですけどね、説得はいいけど、ウソをつくっていうのは良くないですね。僕は、そういうのをウソって言ってるんですよね。被曝には安全限界はありませんよ。だけど社会が交通事故と同じように、このくらいなら車売ってもいいですよと自動車会社に言える範囲がありますということですね。 自動車会社は自動車会社で、それを隠そうとしますけど、隠す必要ないんですよ。だって交通事故があることは明らかなんだ。だけど自動車はものすごく便利だから、自動車がなけりゃものすごく多くの人が死にますからね、救急車も走れませんから。だからそういうバランスで決めてるんだってこと。まず基本を理解しないとですね、ケンカの原因になりますから。そういうことですね。

武田邦彦 ヒバリクラブ
【武田邦彦のブログ】2022年3月24日 科学的哲学的論考 右向き三角1原発講座(7)健康  被ばくに「安全」はない社会の容認限度だけ
https://youtu.be/BIt-cP8tQww



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