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2022年10月28日

福島原発爆発の真相 科学的哲学的論考5

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科学的哲学的論考の原発講座の5番ですね。
福島原子力発電所爆発のもう一つの原因についてご説明をします。

もう一つの原因、非常に難しいんでですね、もう諦めて説明はあんまり聴かなくてもいいかもしれませんが、名前はちゃんと覚えとかなきゃいけないわけですね。

一つが多重防御でありまして、これはもうすでに4番までにお話しましたが、一番典型的には電源ですね。原子力発電所ではウランがずっと継続的に核分裂していますから、常にその水を取り除かなければいけないということで、水を循環させてですね、普通海水なんです、海水を循環させて熱をとるということをやってるわけで、その海水を循環させるのにポンプを使う。ポンプを回すには電気を使うということで、福島の場合は、東北電力から電気の送電を受けて、そしてそれでポンプを回していたわけですね。

このポンプが第一ポンプなんですけど、これが地下にあった。地下なんかに設置したので、津波ではなくて床下浸水でポンプが止まっちゃった。海水なんかも入ってくるわけですから、もちろん通電して電気がショートしてダメなわけです。そのために第2電源は少し離れた丘の上に置いておくということだったけど、それはサボってというか、コストを削減しようとして、地下室に置いておいた。
第3電源は、東北電力が電気を送電できなくなることありますからね、その場合は今度は、トラックの上に載せたディーゼル発電機のでっかいやつがあって、それでディーゼル油でやると。しかしそれもダメな時がある。ということで、最後の手段としてバッテリーを8時間分くらい用意しておいて、それを使うということですけど、まぁあの福島第一原発は全部それが第1から第4まで、バッテリーは少し上の方に置いてあったらしいんですが、いずれにしても使えなかった。地下室なんかに置いといたら、もちろん床下浸水でもやられちゃいますからね。っていうことで効かない。だけど多重防御の考え方は真面目にやってれば、つまり東京電力がサボらなければ良かったわけですね。考え方は別に間違ってありませんでした。ただサボったから事故になったというわけですね。

もう一つはですね、こういう安全性というのがあるんですね。原子力発電所のことをちょっと勉強した人は、最初に原子力発電の種類というのが出てきて、辟易とするわけですね。軽水炉、軽水炉でも加圧水型軽水炉とかですね、いっぱい出てきて、黒鉛減速炉とか、重水炉とか、高速増殖炉とかトリウム炉とか、溶融塩炉だとか、もう山ほど出てきてですね、何が何だか分からなくなっちゃうわけですね。

日本は軽水炉1本で行ってます。東日本の方が沸騰水型軽水炉というもので、西日本の方が加圧水型軽水炉っていうものなんですけど、これはもうほとんど両方も同じですね。ここではその差はあまりに小さいものなので、安全性で少し違うんですけど、今度の事故とはあまり関係がないんで割愛します。これは何かというとですね、ウランっていうのは普通爆発させる、つまり核分裂させると、広島の原爆みたいにドカーンて行くんですよ。ドカーンて行く奴をゆるゆると核分裂させて、少しずつ熱を出させるというのが、原子力発電所なんですね。爆弾というのは、一発で瞬間にバーンっていくんですが、原子力発電所はそうじゃない。一つ分のウラン原子がなんかの起爆剤で分裂しますと、2.4個の中性子を出すんですね。中性子がパーッと散っていくわけですよ。パーッと散っていった2.4個の中性子が、次のウランにぶつかると、そのウランに吸収されて、そして核が非常に不安定になって、そこが核分裂をするわけ。核が分裂するためには、核が不安定にならなければいけませんからね。不安定になって分裂する。それが、どんどんどんどん続いて、瞬間的に行けば原子爆弾になり、ゆるゆると行けば原子力発電所になるんですね。っていうことは、原子力発電所はどうしなきゃいけないかっていうと、2.4個出たものを、2.4個そのままぶつかると、1が2になり、2が4になり、4が8になるって、どんどんあっという間にものすごい熱が出るので、2.4個出たうち、1個の中性子がぶつかって、1.4個はどっかになくなってしまわなきゃいけないんですね。そのために水とホウ素っていうのを使う。

水は普通の水です。これは核分裂を早める。水の中性子が水の中を通りますと、中性子のスピードが遅くなる。ウランの核から出てくると、ピューっていうスピードで中性子が出るので、次のウランにぶつかっても、通過しちゃうんです、あまりに早すぎて。それを遅くしなきゃならない。遅くすると次のウランにぶつかったときに吸収してくれる。ところがそれだと、今度は2.4から2個ぐらい吸収しちゃうんで、やっぱり爆発が爆発みたいになる。
そこにホウ素を差し込むと、ホウ素がその中性子を吸収してくれる。水とホウ素で適当にコントロールできる。
ウランの核からものすごく出た、ものすぐスピードの速い中性子が水によって、スピードが遅くなって、それで次のウランにぶつかると、核分裂する。それがちょっと行き過ぎると、ホウ素の棒を少し差し込む。そうするとみんなそこに吸収されちゃう。
ホウ素の棒を引き上げると、どんどん核分裂が増える。
運転員が熱の出方を見て、ホウ素棒を出したり入れたり、精密なコントロールをしますと、ちょうど臨界、つまり1.0が1.0のままずっと続くっていう離れ業ができる。これが原子力発電所が実用された理由なんです。

水、つまり軽水を循環にも使う。原子力では重水っていうですね、重水素と酸素の結合した重水っていうのも結構対応するので、多く使うものですから、それと区別するために、ただ水って言ったら分かりにくいんで、軽水炉と言っている。

循環する水が減速しますから分裂が早まる。
今、水が入ってて通常に原子炉が動いている時に、温度が上がるとしますね、何かの事故が起こって。事故が起こる理由はとにかくとして、事故が起こって温度が上がるとします。そうすると水が蒸発します。そうすると、本来水というものが中性子を減速してスピードを下げて、そして分裂を早めているのに、水がみんな蒸発してカラカラになっちゃうと、減速しません。だから次のウランにぶつかっても通過してしまって、これは衝突断面積って難しい言い方があるんですが、通過してしまって、爆発が起こらないわけです。
事故が起こって温度が上がると、水が蒸発する。ホウ素はそのままそこにある。そうすると今までバランスが取れてて一定の熱が出てたのが、熱が出なくなる。全部蒸気になって水が吹き飛んでしまいますから。ということで、軽水炉というのは固有安全性、つまり自分自身で、自分自身何もしなくても事故を防げる。

循環水がなくなったら温度が上がります。温度が上がると減速材の水が蒸気になっていなくなっちゃうので、冷却もできないけど中性子も減速しないから、爆弾にならない。ということで、これはいいですよね。

例えば自動車でも、衝突する寸前に自動車のエンジンがパチッと止まって、ブレーキがバっとかかれば、大丈夫ですね。つまり装置自身が安全性を持ってるっていうのが、固有安全性。それで日本政府は、政府なり専門家、我々原子力の関係者をですね、恥ずかしながら日本は原子力発電所の安全性を十分にするために、ロシアのように黒鉛減速炉なんか使わずに、軽水炉減速でやりますと。
ロシアは黒煙を使っている。チェルノブイリは、黒煙は炉があったかくなっても別に溶けることもないし、蒸発することがないので、ああいうことになったけれども、日本の原子力発電所は水ですから、蒸発して中性子がその早い速度で外に出ちゃうので大丈夫です。爆発しません。これが、固有安全性と言っておりました。これがもう一つは間違っておりました。これは次の時にご説明しますが、これは故意に間違ったのか、っていう可能性も実はあるんですが、それから本当にアホだったのか、ということは今のところまだ明らかにはされておりません。

武田邦彦 ヒバリクラブ
【武田邦彦のブログ】2022年3月22日 科学的哲学的論考 右向き三角1原発講座(5)福島原発爆発のもう一つ 多重防御と固有安全性
https://youtu.be/ghqJ-09xq4I



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