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2022年09月22日

地学×歴史で日本を見てみる

学校で日本列島の成り立ちを習う。地学の先生、理科の先生が、大陸から日本が少しずつ少しずつ移動してきたとか、プレートのマグマの動きと、日本列島の動きはどうだとか、それからフォッサマグナとか。日本の南の方、九州南部、四国南部、紀伊半島みたいのはちょっと地層が違う。で、北九州、中国地方。それから北陸、山陰の方っていうのは、かなり違うという説明を受ける。

そういうのを習って眠くなってくると、何か僕らの人生に関係があるのか。岩石なんか一所懸命調べたって、何もおもしろくないというような印象がありますよね。それからしばらく経って、実世界に出ていろいろ旅行なんか行きます。伊勢神宮とか、諏訪大社とか、鹿島神宮なんて行きまして。そうすると日本史の常識として、伊勢神宮は奈良に近いし、天照大神が祭られている神社ですから、それは古いだろうなぁと思うわけです。少し飛び離れて、長野県の山奥の諏訪大社。ものすごくでかいお寺さん。荘厳な感じ。あそこは諏訪湖が凍りますと、御神渡り(おみわたり)とか色んなのがあって、随分歴史が古いみたいだけど、こんな長野県の山奥に、なんでこんなのがあるのかな、いつの時代からあったんだろうなと思いますよね。

そのうち石油化学コンビナートとかの仕事の関係で茨城県の九十九里の北の方に行くと、鹿島神宮っていうのがある。またこれがでかくて。その近くに香取神宮っていうのがあってこれもでかい。
日本史なんか習うと、大体九州に日本人の文化ができたとか。それから神武統制なんかがあって、瀬戸内海近辺から紀伊半島に入って、大阪から奈良とか伊勢とかそこらへんに大きな神社があったり古い話があったりするのは納得できるけど、茨城県の海岸淵に、なんでこんなでかい古いやつがあるんだろうかと、頭の中が混乱してきます。

飛鳥時代とか古墳時代とか言うと、ほとんどが京都まで行かない。摂津とか、大阪の海沿いとか、奈良の中とか。神武天皇っていうと瀬戸内海と、せいぜい紀伊半島。神武天皇が出港されたのは、宮崎県の海岸の美々津。そういう話ばかり聞くのに、なんでこんな飛び離れた山の中とか海のそばに、諏訪大社とか鹿島神宮なんて、でっかいものがあるのかなと思いますでしょ?

スクリーンショット (75).png
(画像をクリックすると拡大します)

ところがこの地図をよく見てもらいますと、この地図の九州からずっとこう行ってるこの赤い線、これは日本の大きな断層なんです。断層って、現場に行ってみると面白い。なんか変な谷みたいのがドカーンと出て来て、向こうの山は砂、こっちの山は、岩石だったりする。この赤い道路は、ややどっちかというと、大陸の方から離れて、こっちからこう来たと。これは砂の堆積岩みたいのがあるんですね。ここが日本列島の谷間だったり、つなぎ目だったりしてる。

で、その断層っていうのは、地下深ーくから、なんか地層がむきだしたりしているところもあるんです。中央構造線っていう地質学の名前が付いている。日本列島が横にも縦に割れてるんです。それは日本列島だけじゃなくて、どの大陸でも、どっかに割れ目があったり、つなぎ目があったりするんですけどね。日本列島の場合には、移動してきたこともあるし、砂地が隆起して、プレートが沈み込んだために、隆起したりしてるってとこもあるので、こういう構造をしてる訳です。
青い薄黄緑のところが砂地です、どっちかというと。ピンクのところが、流れて来たまあまあ古い岩石です。それから断層帯みたいなところもある。それでまた北半分は、ちょっと構造が違う。

それで、見ると変なことに気がつく訳です。大雑把に言うと、神武天皇は、話によると宮崎県の九州の東から船出をして、瀬戸内海か四国の北の方か、それとも中国地方の岡山とかそこらへんにお寄りになりながら、近畿地方に到達して、大阪辺りで一戦を交えて負けちゃうので、ぐるっと紀伊半島を回って、もう1回奈良に上陸して来るというお話がありますよね。神武東征の話。それで奈良に都を定めて、それからもうちょっと東に行ってみようかと思って東に行ったら、伊勢湾が出て太平洋があった。これは海だと思ったら、そこがどうも神聖な土地らしいと言うんで、伊勢神宮を作る。それから海を渡って愛知県の方に行くと、ここに熱田神宮っていうのがありまして、これは日本武尊の根拠地みたいなところなんです。まぁだいたいそこらへんの枠の中ですね。それからずうっと行きまして、なぜか山の方に入っていく。なぜ昔の人が山の方に入って行ったか考えますと、この赤い線上なんですよ。つまり大和に来て、伊勢神宮に来て、熱田神宮に来るまでは、だいたい分かるんですけど、それからこういう風に、山の中に入って来るんですね。それで諏訪湖に至る訳ですよ。それで、諏訪大社なんか作る訳ですよ。それから不思議なことに、そのまま真っすぐ行かずに、今度は曲がって、茨城県の鹿島の海岸に出る。で、鹿島神宮を作る。

そうすると、自分の頭の中では何だろうなおかしいと。諏訪大社に行くと、おかしいな、こんな山の中に古い神社があって、伊勢神宮みたいな神社だなぁと。それから鹿島神宮って言ったら、こんな所、なんか野蛮人しかいなくて、鹿島の人には失礼しますよ、それはまあ古い時代ですから。今から約2000年から2500年、下手したら3000年くらい前だったでしょう。そうするとこの線の、日本人はねぇ、これで頭の中が洗脳されてますから、西の方から人が来たと思ってますからね。九州から来て瀬戸内海を通って、近畿地方を通って山の中に入って諏訪に達して、ちょっと道を間違って鹿島まで行ったのかと。

後からよく調べてくると、これは中央構造線の上だ。なんか取れたのか。岩石と岩石がぶつかったり、地殻と地殻がぶつかるところは、色んな金属が出る。典型的には水銀です。日本は非常に水銀と親しいんです。もともと土地柄が火山と、岩石移動みたいのがありますので、どうしても地殻に割れ目が入って、そこから金、銀、銅、鉛、ヒ素、水銀、こういうものが出る。だいたい銅族元素、10円玉の銅です。山陰の方には石見(いわみ)銅山とか、金山とか(注:石見銀山?)、この辺で取れる。

神武天皇、東征奈良の都、伊勢神宮熱田神宮諏訪大社鹿島神宮ってなるほどそうか。昔の日本人って、この断層を沿って生きてたんだなそう思うと、興味が湧きます。男女のコツなんか興味ある人は、こういった沿線上の男女の話なんていうのもいっぱいありますから、まあそういうのに興味を持ってもいいでしょう。
それから宗教に興味ある人は、宗教っていうのは、こういうところで、宗教的な考えが生まれるんだなあと思ってもいいし、僕なんかものの因果関係なんかが好きですからね。

なるほど昔の人は金属が必要だったんだなあ。水銀なんかないと、金箔が塗れませんからね。
金アマルガムっていうので、ハケで仏像の上かなんか塗って、松明で乾かすと金だけが残って、金箔が残る。昔は金を叩いて伸ばすっていうことは、あまりうまく出来なかったもんですから。特に水銀が取れるところでは、金アマルガムを塗って金箔を貼るという技術がありました。

こうなってんだなあ。あそうか、諏訪大社とか鹿島神宮っていうのはやっぱり古い歴史があるんだなあと思いますとね、次に、はたして日本って九州半島の方から来たのかなと、中国の方から来たっていうけども違うかもしれないな、もしかした逆で、鹿島神宮が最初で、それから諏訪大社に行って、ずーっと近畿の方に移動して来たんじゃないかとかいう話に、ついついなる。それで西から来たのは本当かなと思って、最近研究されているDNAをベースとした民族の関係というと、もう全然中国人と日本人と違うじゃないですか。あれっ、こんな風にはならないなと思う。
言語はもっとそう。中国から漢字が移って来たっていう。漢字が来れば当然言語にも影響するだろう。例えばいろんなものに共通点があるとか、発音が共通点があるとか。まあ文法は全然違っても、なんかそういうのがあるかというと、ない。日本語と中国語って本当に一番離れているって言ってもいいんです。どうしてそうなっちゃったんだとそういう疑問が湧いて、それからだんだん夢が膨らんで、ネットを見るのも楽しくなる。日本列島の構造つまり、地学の問題と歴史の問題と、日本の分布がどこに来たかっていうこととは、密接に関係あるって事ですね。

日本だけなんですね、先進国で文科系、理科系って分けてるのが。そろそろもう分けないで、文科系、理科系が一緒に勉強するようになると、こういった問題もかなりクリアーに、判明してくるんじゃないかという風に思います。

武田邦彦 ヒバリクラブ
地学×歴史を掛け合わせて日本を見てみよう【武田邦彦の科学教室P】 から編集
2022年9月15日
https://youtu.be/fnjDaH-JGb8

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