a.それじゃ、そろそろ希望ヶ丘をあとにしようか、
b.ここからは高低差70mほどの下り坂を一気に、公園を出ると名神高速にそって味気ない道がつづく、
a.ふと気づいたけど、今まで見たことないほどピカピカや、タイヤとかホイールとか、
b.アスファルトの路面だったから、雨が洗車したみたいになってる、
a.坂を下り終えて、当時まだ何も無かった三井アウトレットパークあたりを右折、松が丘ニュータウンを右に見ながら祖父川にかかる橋へさしかかる、
b.青田のなかの一本道、きれいっすね、シラサギが数羽、田んぼのカエルやザリガニを食べてるのか、
a.シラサギは良いなあ、レインウエア着ないで良いから、
b.そうすね、我々人間は蒸れると分かっても、これ着ないと体温うばわれてしまう、夏でも、
a.でもきれいやなあ、ひたすら、雨の竜王町、カラダはべちゃついて気持ち悪いけど、
b.向こうの山すそに向かって行くんすか、
a.うむ、あの山並みにそって左へ進めば、いずれ新幹線の高架が見えて来て、それをくぐるとじきにJR近江八幡駅、
b.どっかの家で昼ごはん食べたい気分、出来ればそうめんとか、
a.腹へると人恋しいなあ、ところで何時や今、
b.午後2時6分、
a.「コンビニの コの字も無いな このあたり」、
b.川がむこうの山へ向かって曲がり始めた、地味だけど、なんとなく優美なあの山並み、
a.雪野山っていう300mほどの小山、山頂の古墳が平成元年に未盗掘のままで発見され話題になったらしい、このへんはむかし蒲生野(ガモウノ)と呼ばれた万葉集ゆかりの土地、どおりで雰囲気ええはずや、
b.では蒲生野で一句、
「蒲生野(ガモウノ)か それより早う 帰りたい」、
b.もっとまじめにお願いします、
「蒲生野に 群れるシラサギ 青田雨」、
a.ふりかえると、雪野山にそってまっすぐ伸びる赤い自転車道、ここも好きでよう走ったなあ、
b.日野川を渡って一路、近江八幡市街へ、
「降りしきる 日野川ごしに 雪野山」、
a.しかし、こっからがけっこう長い、ていうのもこんな土手道を迂回してるからや、
b.そりゃまたどうして?
a.12年前は今以上にクルマとかぶらない道を真剣に探してたんや、
「良いながめ クルマ走らぬ 細道に」、
b.さ、ようやく雪野山を振り返るとこまで来ました、あともうすこし、
a.こっから見るとなおさら姿が良いな、雪野山・・・あの右手にさっきその土手を走った日野川が細長い森のように見える、雨で不快やったけど、もう終わりが近いと、なぜか名残惜しい、
b.近江八幡の歴史的集落へ入ってきました、神社の境内に何かお祭りの準備でしょうか、せっかく作ったのにずぶ濡れ、
a.雨で気の毒や、ていうか、さらにきっつう降ってきた、最初から最後まで俺らがいちばん気の毒や、
b.この雨にこりて、もう雨輪行はやらなくなったとか、
a.それはある、だから余計にこの日のことが今でも鮮明によみがえる、
b.そして、JR近江八幡駅より電車にゆられて小一時間、最後の一枚はJR京都駅の改札、時刻は午後4時前、祇園祭のちょうちんがステキですね、
a.この圧倒的なにぎわい、いつもの生活圏やのに、ほかの星からワープしたようなちぐはぐな感じ、ココロは今しばらく異星人のままや、
b.そういえば、今日はずっと雨に打たれながら、植物ばかり相手にしてましたから・・・