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2023年12月20日

介護ストレスにフライトシミュレーター


じゃあ、お父さんが他界する数年前に、

入院する前で、それなりに元気やったころ、ふと実家の外回りや水回りについて、じっさいに歩きながらくわしく説明を始めて、

そのとき、母親の介護を頼まれたと、

むかしから子供達にはナンも言わん父親から、「頼むから(暮らしてる京都から地元に)帰ってきてくれんか、お母(かあ)ちゃまが頼りなくて心配なんじゃ」と、かつて無いほどの熱量でお願いされ、

それほど頼まれたら、実家にもどるしか無いと、

兄弟のなかにあっては、フリーターで独身というお気楽担当の自分以外に適役はいないし、京都は京都で、雨漏りがひどくなったおんぼろアパートから、「そろそろ出て行って欲しい」と、大家さんからもじんわり圧がかかってたし、いつまでものんきに京都で暮らしたかったけど、そろそろ人生の潮時(しおどき=変わり目)なのか、とも考えるようになり、

それで父親の死をきっかけに、30年におよぶ京都暮らしに終止符を打って、ふるさとの実家で母親と二人きりで暮らし始めると、

介護とは言っても、それほどボケが進んでるわけでも無く、かといってまったくボケていないわけでもなく・・・これはこれで意外と大変だったりして、

と言いますと、

ずっとボケてるなら、こちらも医療機関に相談したりして緊張感をもって対処できるけど、半分ボケてる程度だと、油断することも多く、突然ドえらいミスをやらかしたりするわけで、

アレは恐ろしかったですね、プラスチック製の保温調理器をまるごと火にかけてしまうという、

沸騰したナベをコンロから下ろして、ひとまわり大きい保温容器にそのまま入れて、余熱で調理するんやけど、ちょっとボケた母親は、その保温用プラスチック容器を丸ごと火にかけて、

お母さんひとりだけなら、まちがいなく家屋(かおく)全焼すね、

あの時だけは青ざめた・・・なんか変な匂いがするんで台所に行ってみたら、コンロの火にあぶられたプラスチック容器がポタポタと溶け始めていて、そこから火がチロチロと燃え移り、臭い煙も台所の天井に広がり始め、

しかも、自分がやらかした重大事にお母さん本人が気づいてないという、

となりの部屋で平然とテレビを観ていて、そんな母もまた猛烈に悲しく腹立たしく、

じゃあ、母親を世話するのも、想像以上に大変で、

京都ではずっと、玉(たま=お宝)のようなネコちゃんと気ままに暮らしてたし、なおさらきつかったなあ、

しかも、そんな危なっかしい事をされたら、心配であまり遠出も、

なもんで、自転車で走る範囲も徐々に狭(せば)まり、そうなると母親が美容院や定期検診で家を空ける1〜2時間が信じられないほど解放感にあふれて来て、一人きりの時間がこれほどありがたいものかと、

じゃあ、まさにこの音楽どおりの気持ちだったと、

そう、囚人がほんのわずかの時間だけ日光浴(にっこうよく)を許され、ささやかな解放感にひたるこのシーンそのまんまや、



フライトシミュレーターにハマったのも、こういう閉塞感(へいそくかん=息がつまるような重い雰囲気)が背景にあったから、

間違いないなあ、なんでもええから、とりあえず自由に羽ばたける空間が欲しかった、

で、2015年あたりから X-Plane10(エックスプレイン・テン)で、あちこち気ままに飛び始めて、

やり方が分かってくると、追加の無料ソフトを入れることで、日本国内の細かい川筋や、くわしい道路網(もう)や鉄道網が正確に再現されて、

これが大人気の『水曜どうでしょう』と化学反応を起こして、

2015年当時、まだ規制もゆるいYouTubeで『四国八十八カ所』三部作を何度も観てるうちに、自分もじっさいに全部のお寺を回りたくなって、

しかし家にはお世話すべき母親もいるということで、

X-Plane10なら細かい道筋も追えるし、試しに徳島県の一番札所(ふだしょ)あたりをヘリ(ヘリコプター)で飛んでみようと、

じっさいどうでした、

『水曜どうでしょう』2回目の巡拝(じゅんぱい)にならって、徳島空港から一番札所に向かって、タブレットでグーグルマップをにらみながら飛んでみたけど、一番札所にはそれらしきお寺もなくガッカリ、けど道筋だけはじつに正確で、かなり細い路地まで再現されてるんで、これなら寺の所在地がピンポイントで特定できることも分かり、

一番札所から順々に回り始めることになったと、

このころの大泉さんがええんや!!


X-Plane10は、録画やカメラワークがたいへん操作しやすくて、それならせっかくやし『水曜どうでしょう』の音声や好きな音楽と組み合わせて飛行巡拝ビデオでも作ろうかということになり、

誰が観るでもない YouTube動画をアップロードし始めたと、

こういう一連の作業をしてる時は、介護の閉塞感から完全に解放されたし、無職であり余るほど自由時間もあったから、しだいに乗り乗りになり、けっきょく八十八カ所完全巡拝に成功、

『モノは試(ため)し』とはよく言ったもんすね、

まさか88もの寺を動画編集しながら四国一周するなんて、じぶんでも続くわけ無いと思ってたもんで・・・なにごとも、思い立ったら取りあえずやってみるもんやな、

で、そのあと北米大陸に舞台を移し、

飛びはじめのころとりわけ印象的だったコネチカット川を、源流から河口まで念入りにたどろうということになって、さらに河口からほど近いロングアイランドを一周・・・その西に広がるニューヨークの観光もすませ、今度は、風光明媚(ふうこうめいび)なカナダ西海岸のバンクーバーアイランドを一周、その勢いのまま、その北に位置するハイダ・グワイ諸島をめぐり、そのままカナダ内陸部に分け入って時計回りに一周、バンクーバーからアラスカ方面にむかって沿岸部を北上し、アリューシャン列島からカムチャツカ半島をへて千島(ちしま)列島ぞいに北海道へ、最後は、知床(しれとこ)半島から市役所や町役場をピンポイントで訪ねながら時計回りに北海道を一周、

で、北海道を旅している最中に母親が亡くなると、

生前(せいぜん=生きてた時)は、とにかく自分がしっかりせなあかんという猛烈な義務感と、少しずつ壊れていく母親に対する、侘(わび)しさや苛立(いらだ)ちしか無かったけど、葬儀がすべて終わってしばらくたったころ、大したことは何もできなかったけど、曲がりなりにもお世話できて本当に良かったと心から思えるようになって、

ちなみに、2016年から2020年まで丸4年間、動画編集しながら X-Plane10で空を飛び続けたことになるわけですが、そのチャンネルは、

残念ながら、その後に制作した『 さまぁ〜ず×さまぁ〜ず 』の再編集動画が、1日3回の著作権侵害というありえへん仕打ちを食らって、自分のチャンネルはYouTubeから永久追放されて、

どういうことすか、

グーグルの人工知能による著作権チェックをクリアした動画の数々に対して、日にちもだいぶ過ぎてからテレビ朝日が著作権侵害のクレームを入れ返して来て・・・まあYouTubeじたい、このところ許しがたい言論弾圧を平然とやらかしてるんで、追放されても別にええねんけど、

まあそれにしても、動画編集しながら何年も飛び続けたもんすね、

今ふりかえるとよう分かるけど、介護ストレスの解消に、フライトシミュレーターや動画編集って、じつに効果的だったんやな、

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