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2020年06月30日

極楽カンパニー 原宏一 集英社文庫

定年を迎えた須河内は図書館通いくらいしかやることがない。そこで同じ境遇の桐峰と出会い、自分たちがどうしようもなく会社人間だったことにいまさらながら気付く。会社は楽しかった。会社は面白かった。じゃあいっそ、定年後の趣味として「会社ごっこ」をしてみたら? いきつけの喫茶店のマスターも巻き込み始まった「会社ごっこ」は、定年後に居場所のなくなった日本中の元企業戦士たちに口コミで拡がっていく。

「会社ごっこ」を起案し実行していく須河内たちの子供のようなはしゃぎ具合が小気味良い。高度経済成長期には、会社というのはスケールの大きい遊び場だったんだろう。協力し、裏切り、暗躍し、蹂躙し、ありとあらゆる手段を使って会社を発展させることが正義だった時代。いわば、高校野球の敵同士だった選手が、卒業後に出会ってお互いを称えあい、そして草野球チームを結成するようなものか。

物語はコミカルに描かれていくが、やがて背景に横たわる高齢化社会や高齢者のメンタルケアの問題が首をもたげてくる。好みとしては、そのあたりには言及せずに軽いタッチで書ききって欲しかった気もするが、中盤から家族を描くことにシフトしていき、読み終わった後に「家族小説だったんだ」と理解する仕組みには、まあ納得。

アイデアが秀逸な一冊ではあるが、ちょっと力業だったかな。

極楽カンパニー (集英社文庫) [ 原宏一 ]

価格:572円
(2020/6/30 15:33時点)
感想(4件)


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