2020年09月04日
残り全部バケーション 伊坂幸太郎 集英社文庫
「実はお父さん、浮氣をしていました」
実に伊坂幸太郎らしい始まり方だ。深刻なはずの家族の修羅場を「家族の解散」と呼び、最後になぜかお互いの秘密を暴露する展開になるが、そういう話ではない。父親の携帯に一通のメールが届いて、そこから物語が始まる。
伊坂幸太郎の作品おなじみの「なんかわからないダークサイドの請負屋」というのが、この作品にも出てくる。この請負屋にもいくつか類型があるが、今回登場するのは、単純でわかりやすい溝口と心優しい岡田の二人。他にも二人ほど請負屋は出てくるが、まあ、こっちは脇役。といっても、この脇役が他の作品では主役となって出てくるのが伊坂幸太郎なので、油断がならない。
見えつ隠れつしながら岡田を中心に物語は転がる。途中で岡田はいなくなってしまうが、時間や場所を変えながら進んでゆく。ただ、最後に集結はしない。いつもの伊坂幸太郎のあと味だ。
岡田や溝口というニューロンがシナプスを交感し、脳となった物語が他の器官と連結し、メガストーリーを作り出す。そして、メガストーリー同士がネットワークで接続して、メガメガストーリーが現れる。伊坂幸太郎って、そういうサイボーグなんじゃないか。
こんなのも見つけました。
斉藤壮馬、伊東健人、江口拓也、高橋李依が、集英社の「ナツイチ2020キャンペーン」作品を朗読する「よまにゃチャンネル」。面白いですね。森本レオとかでやってくれないかな。
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