ここでの問題点は、例文(36)に示されている。形容詞leibhaftig の形態統語的な修飾は、確かに名詞Hundに掛かっているが、意味的な修飾は、この名詞ではなく動詞になるからである。それ故、本書では、leibhaftigをファジィ論理でいうある種のヘッジとして扱い、さらに、イディオム自体もヘッジと見なすことができるという立場でこの問題を処理している(イディオムの原理)。
その理由は、Fleischer (1982)が説くように、慣用句がイゾトピー(同位元素性)のようなテキスト内の様相パラメータを 特別な方法で識別することができると考えているからである。これにより、Montague Grammarのイディオム分析は、拡張されることになる。なお、Fleischer (1982)は、イディオム性を語彙の構成要素の意味と文全体の意味の間に存在する不規則な関係としている。
花村(2022)「イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より
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