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2020年08月28日

Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性−モンタギュー文法による形式意味論からの考察24

 (20)、(24)、(25)のもう一つの読み、即ち「あるプロセスの始まり、終了」を規定する樹系図及びILへの翻訳式は、モンタギューのオリジナルの理論から規則づけることはできない。
 この結果は、予期されたものである。なぜならば、様相因子が主語内的、主語外的とは、生成意味論的な手法を改案し、表層統語レベルでの根拠づけを果たすために設けられた分析手段であり、表層に現れた言語現象に見られる曖昧性を取り、真理値の必要十分条件を定めるために設定されたモンタギューの内包論理に基づく意味解釈とは、本質的に異なるからである。
 しかし、この問題を解決する上で見込みがないわけではない。例えば、Cooper(1976)には、生成意味論とモンタギューの文法理論との折衷安が示されており、例として、文に現れる複数の読み(意図性、プロセスの変化)は、統語的に曖昧と考えず、つまり、単一の統語分析を考え、あくまで意味解釈の過程で厳密に分析されるべき問題となっている。
 この論文は、モンタギューの文法理論に対して決して否定的な立場にあるわけではない。言語学の目的の一つに、「ことばの意味に対する説明上妥当な記述を施すこと」というものがある限り、モンタギュー流の厳密な手法に基づく意味解釈の規定とは、それなりに意義があるからである。

花村嘉英(2020)「Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性−モンタギュー文法による形式意味論からの考察」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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