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2024年04月14日

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に6

【シナジーのメタファーのプロセス】
@ 知的財産が自分と近い作家を選択する。
A 場面のイメージのDBを作成する。場面が浮かぶように話をまとめる。
B 解析イメージから何かの組を作る。言語解析は構文と意味が対象になる。
C 認知科学のモデルは、Lのプロセス全体に適用される。例、前半は言語の分析、後半は情報の分析。
D 場面ごとに問題の解決と未解決を確認する。
E 問題解決の場面では、信号がLに縦横滑ってCに到達後、人体を一周してから、再び解析イメージに戻る。問題未解決の場面では、すぐにリターンする。
F 各分野の専門家が思い描くリスク回避を参考にしながら、作家の執筆脳の活動を想定する。
G 問題解決の場面を中心にして、テキストの共生について考察する。

@、A、Bは受容の読みのプロセス、Cは認知科学の前半と後半、D、Eは異質のCとのイメージ合わせになり、Fで作家の脳の活動を探り、Gでシナジーのメタファーに到達する。(花村 2015) 

@ 一文一文解析しながら、選択した作家の知的財産を追っていく。例えば、受容の段階で文体などの平易な読みを想定し、共生の段階で知的財産に纏わる異質のCを探る。この作業はAとBでも行われる。
A 場面のイメージが浮かぶような対照表を作る。
B テキストの解析を何れかの組にする。例えば、トーマス・マンは「イロニーとファジィ」、魯迅は「馬虎と記憶」、鴎外は「感情と行動」という組にする。組が見つからなければ、@からBのプロセスを繰り返す。
C 認知プロセスの前半と後半を確認する。
D 場面の情報の流れを考える。問題解決と問題未解決で場面を分ける。
E 問題解決の場面は、信号が異質のCに到達後、人体を一周してから解析イメージに戻る。問題未解決の場面は、すぐに解析イメージにリターンする。こう考えると、システムがスムーズになる。
F 各分野のエキスパートが思い描くリスク回避と意志決定がテーマである。緊急着陸、救急医療、株式市場、震災そして環境問題などから生成イメージにつながるようにリスク回避のポイントを作る。そこから、作家の意思決定を考える。
G これにより作家の脳の活動の一例といえるシナジーのメタファーが作られる。「ゴーディマと知能」というシナジーのメタファーは、テキスト共生に基づいた組のアンサンブルであり、文学をマクロに考えるための方法である。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に5

【Lのストーリー】

◇縦に受容:言語文学(ゴーディマ)→言語の認知→空間と時間(無限)
◇横の共生:空間と時間→情報の認知→意欲と知能(リスク回避と適応能力)

 社会系や理系と同様に、文学の分析にもミクロとマクロの研究を想定している。ミクロは、対照言語の専門分野が研究の対象となり、マクロは、一つが地球規模、人文の場合、国地域の比較(東西南北)であり、また一つが研究のフォーマットのシフトが評価項目となる。フォーマットのシフトとは、Tの逆さの認知科学の定規を縦横に崩して、縦に言語の認知、横に情報の認知をとるLのフォーマットのことであり、購読脳(受容)と執筆脳の活動(共生)を考察の対象にする。(図1と図2を参照すること。)
 筆者はこれまで文学作品をランダムに比較研究し、その際に作家を一種のエキスパートと見なして、作品に見るリスク回避という内容で論文を作成している。三人とも20世紀前半という同時代に活躍した作家である。一般的に作家は、エキスパートとしてしばしば警鐘を鳴らすことがある。例えば、魯迅は、作家として中国人民を馬虎という精神的な病から救済するために小説を書き、鴎外は、明治天皇や乃木大将が亡くなってから、後世に普遍性を残すために歴史小説を書いた。また、トーマス・マンは、20世紀の最初の四半世紀に、ドイツの発展が止まることを危惧して論文や小説を書いている。 
 ミクロは、研究者個人の工夫が評価の対象となる。一方、マクロの場合は、誰が考えてもある作家が作品を執筆している時の脳の活動は〇〇である、というように結論づけたい。これをシナジーのメタファーと読んでいる。例えば、「トーマス・マンとファジィ」、「魯迅とカオス」、そして「鴎外と感情」がこれまでに考案したシナジーのメタファーである。 (花村 2005、花村 2015、花村 2017)

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に4

3 ミクロとマクロ
 
 ヘンドリック・フェルブールト首相(在任期間は1958−1966)に象徴されるアパルトヘイト全盛の時代は、政治や法律によって南アフリカ国民は強く拘束されていた。意欲や計画があっても、挫折や頓挫は日常のことで、状況を打開するまでには至らない。
 アフリカ民族会議やそこから分裂した過激派のパンアフリカ会議と並ぶ白人による反アパルトヘイト運動、アフリカ抵抗運動も、当時、盛んにサボタージュを繰り返した。1964年7月の全国一斉捜査で、活動家が逮捕され、その中にアフリカ抵抗運動の指導者マークも含まれていた。福島(1994)によると、彼の所持していた文書や供述からアフリカ抵抗運動の活動が明るみになり、10年前後の判決を受けた。
 転職を繰り返すマックスは、こうした白人のサボタージュ運動に属していて、運動初期の段階で逮捕された。結局、死を選ぶため、社会に適応する能力がなかったことになる。
 重大な生活上の変化やストレスに満ちた生活が原因となる適応障害は、個人にとって重大な出来事(就学、独立、転居、結婚、離婚、失業、重病など)が症状に先んじて原因となる。本人の性格や考え方の癖、また、ストレスの感じ方も大きな影響を及ぼす。日本成人病予防協会(2014)によると、一般的に誰でもつらい出来事や思いどおりにならないこと(社会生活上のストレス)により、不安やイライラが強くなったり、憂鬱になったり、ときには投げ出したくなったりもする。しかし、適応障害の場合、ストレスに対する反応が強く現れ、精神的にも身体的にも特有の症状がみられる。

表2 適応障害の症状
適応障害 精神症状  
症状 憂鬱な気分や不安感が強くなるため、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になったりする。ほかに気分の落ち込み、集中力の低下、自信の欠如、意欲の低下、対処能力の低下などがみられる。また、無断欠席や無謀な運転、喧嘩、物を壊すなどの行動面の症状がみられることもある。
適応障害 身体症状
症状 不安が強く緊張が高まると、ドキドキしたり、汗をかいたり、めまいなどの症状がみられる。ほかにも倦怠感、頭痛、腰痛、焦燥感、神経過敏、怒り、不眠、起床困難、食欲不振、下痢などがみられる。
悪化した場合 会社では職場不適応、学校では不登校、家庭では別居や離婚といった形に変わり、ひどくなると酒やギャンブルの中毒に陥ることもある。ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているため、その原因から離れると、症状は次第に改善する。ストレスの原因となっている環境から離れられない場合には、症状が慢性化することもある。

 どうにもならない無限の状態を表す「空間と時間」は、意欲を介して適応能力となり、理解、思考、判断などの総合的な能力が、南アフリカの将来を見据えたゴーディマのリスク回避につながっていく。作家もエキスパートであり、作品執筆時には特定の脳の活動があるためである。なお、一般的に空間は右脳が処理をし、時間は感覚的にも論理的にもイメージできるため、左右の脳が関係する。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に3

 感情には、本能のことをいう情動と人間特有の感情といえる畏敬があり、時間的な見方をすると、情動は瞬間的な思いであり、畏敬は継続的な思いになる。また、感情には、喜怒哀楽のようにどちらにも入るものがある。情動の起因には、内的要因(創発)と外的要因(誘発)による反応があげられる。(花村2017)では、鴎外の歴史小説にも内的要因と外的要因による思考があり、誘発が主の作品として「山椒大夫」を分析している。合わせてDBも作成し、鴎外の執筆脳の活動を感情として、「鴎外と感情」というシナジーのメタファーについて考察した。 
 思考は、課題や問題が与えられたときに生じる一連の精神活動の流れで、周囲の状況に応じた現実的な判断とか結論へ至るものである。花村(2015)では、意識と無意識そして思考といった精神活動を調べながら、魯迅の「阿Q正伝」や「狂人日記」を考察し、その結果、「魯迅とカオス」というシナジーのメタファーを作ることができた。
 意欲は、人が何かの行動を起こすとき、欲求や衝動、願望などが行動の動機づけとなって、意味や目的を持って行動しようとする意志の働きである。この行動を制御する意志と欲求を合わせて意欲といい、物事を積極的に行おうとする精神作用を指す。食欲、性欲、睡眠などがその例である。
 判断は、物事の真偽、善悪、美醜などを考え決めることであり、知能は、人間が環境に適応していく能力を表し、理解、思考、判断などの総合的な能力のことをいう。知能の障害は、精神の遅延や認知症などでみられる。(日本成人病予防協会2014)

表1 人間の精神的な活動

人間の精神活動 言語
説明 人間が情報を伝達する際に用いるツールの一つ。
人間の精神活動 記憶
説明 新情報を受け入れて既存の情報と調節しながら、必要なものを蓄える。その際、長期と短期のものがある。
人間の精神活動 感情
説明 本能のことをいう情動と人間特有の感情といえる畏敬があり、時間的な見方をすると、情動は瞬間的な思いであり、畏敬は継続的な思いになる。また、感情には喜怒哀楽のようにどちらにも入るものがある。
人間の精神活動 思考
説明 課題や問題が与えられたときに生じる一連の精神活動の流れで、周囲の状況に応じた現実的な判断とか結論へ至るものである。
人間の精神活動 意欲
説明 人が何かの行動を起こすとき、欲求や衝動、願望などが行動の動機づけとなり、意味や目的を持って行動しようとする意志の働きである。
人間の精神活動 判断
説明 物事の真偽、善悪、美醜などを考え決めること。
人間の精神活動 知能(適応能力)
説明 人間が環境に適応していく能力を表し、理解、思考、判断などの総合的な能力のことをいう。

 この小論では、特に、意欲と適応能力に焦点を当てて、ゴーディマの執筆脳について考察していく。ゴーディマが「ブルジョワ時代の終わりに」を書いた1960年代前半の南アフリカは、厳しい弾圧の時代であり、いくら適用能力があっても、政治や法律によりそれを発揮できなかった。従って、心の働きでは意欲が強くなり、それに伴う意志の働きも含めた前頭前野皮質の活動が論点になる。
前頭連合野は、側頭葉、頭頂葉、後頭葉などの連合野から記憶の情報を統合して適した行動を生み出すため、考察の対象にする。そこには、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)そしてPQ(前頭葉の知能指数)のような指数を測る概念もある。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に2

2 人間の精神活動

 人間の精神的な活動とは、心の表出と言われる言語、記憶、感情、思考、意欲、判断、知能(適応能力)などのことである。これらの活動は、一般的に脳によって生み出されている。
 脳を部位ごとに見てみると、前頭葉の前頭前野皮質は、人の脳の活動でも特に、意志、計画、意欲、感情を管理し、前頭葉の上部では運動を、側頭葉の近くでは言語の発音を処理している。頭頂葉は判断や理解を管理し、前頭葉との境界に体性感覚が走っていて、触覚、痛覚などの皮膚の感覚、内臓の痛覚などを調節する。また、側頭葉との境界に味覚の機能がある。後頭葉は、視覚の情報を処理している。(片野2017:3)

大脳皮質の役割分担
区分 役割
区分 前頭葉・前頭連合野
役割 思考、意志、計画、意欲、感情、判断、自己抑制
区分 前頭葉・運動連合野
役割 運動の開始や手順を計画
区分 前頭葉・運動野
役割 運動連合野の指示に基づき、運動の指令を発信
区分 頭頂・体性感覚野
役割 触覚、痛覚、深部感覚などの受け取り
区分 頭頂連合野
役割 判断、理解、感覚情報の統合 
区分 側頭葉・聴覚野 聴覚情報の受け取り
役割 側頭連合野 知識、記憶、言語の理解
区分 視覚連合野 視覚情報の判断、認識
役割 視覚野 視覚情報の受け取り
区分 ブローカー野
役割 言語の表出:書く、話す
区分 ウェルニケ野
役割 言語の理解:読む、聴く

 当初から言語や記憶には関心があり、魯迅の「阿Q正伝」(1922)を題材にして側頭葉にある海馬について考察したことがある。(花村2015) 
 魯迅の文体は、従容不迫(落ち着き払って慌てないという意味)で、持ち場は短編である。「阿Q正伝」(1922)に対する解析を「記憶と馬虎」にし、これを「記憶とカオス」という生成イメージに近づけるため、場面を作業単位にしてL字の解析と生成を繰り返す。すると馬虎という無秩序状態にある人々の予測不可能な振舞い(非線形性)及び刑場に向かう阿Qと荷車運搬人の近似入力が全く異質の出力になる様子(初期値敏感性)が見えてくる。  
 記憶を司る部位として海馬は、側頭葉を覆う大脳皮質のすぐ裏側にあり、ニューロンの集まりでその断面にはS字に似た筋があり、そこに細胞が沢山詰まっている。(片野2017)によると、ニューロンのシステムでは、脳の全ての部位で一つ前のシナプスから受容体が神経伝達物質を受け取り、電気信号に形を変えて、先端のシナプスから次のニューロンへ信号が伝わる。もちろん、側頭葉には聴覚の機能もあるという。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に1

1 ゴーディマの意欲

 1950年代の南部のアフリカは、反アパルトヘイト運動が崩壊状態にあった。しかし、ナディン・ゴーディマ(1923−2014)は、この革命に白人がどのように関与できるのかを自問し、世の中の流れと逆流している自国の現状に危機感を抱き、何かの形で革命に関わりたいという意欲を持っていた。こうした作家の脳の活動は、この革命が南アフリカの将来を見据えたリスク回避であることを想定させる。
 無論、白人リベラリズムが全盛のときに、何を訴えても焼け石に水である。2017年の今だからこそ、当時の改革案は正当化される。何とかしようという意欲はあっても、外部からの規制により大抵は気持ちが空回りしてしまう。空回りした気持ちは、「空間と時間」という組み合わせでしか表現できない。しかし、メディカル表現がそれを補足する。補足というよりも、意欲は、一般的に前頭葉の前頭前野皮質が管理をし、それとリンクする適応能力は、脳全体の機能により説明される。ゴーディマがいう無限を表すための組み合わせ「空間と時間」にまつわる適応能力を考察するには、前頭前野皮質だけの働きではなく、脳全体、つまり身体全体の働きを考察の対象にするとよい。
 この小論で取り上げるゴーディマの作品は、主人公が過ごした一日を問題にしており、パートナーのマックスの自殺が鍵を握る。自殺するまでには、何かのストレス障害が発生していると考えられる。例えば、意欲があっても政治や法律により拘束され、社会への適応が阻害されることもある。ネルソン・マンデラ(1918−2013)も27年間牢獄に監禁されていた。
 なお、ここでの分析法は、花村嘉英著「日本語教育のためのプログラム」(2017)で森鴎外の「山椒大夫」のために採用したものと同じである。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
プロフィール