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2024年04月14日

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に16

【連想分析2】

表7 情報の認知(医学情報から人工知能)

クイーンとアランの結婚式で、マックスがスピーチする場面
情報の認知1 情報の認知2 情報の認知3 人工知能1
A …don't let the world begin and end for you with the - how many is it? four hundred? - people sitting here in this - the Donnybrook Country and Sporting Club today. These good friends of our parents and Allan's parents, our father's regional chairman and the former ministers of this and that and all the others, I don't know the names but I recognize the faces, all right - who have mode us, and made this club, and made this country what it is.'
情報の認知1、2 情報の認知2、2 情報の認知3、1 人工知能1、1

B 'There's a whole world outside this.' 'Shut outside. Kept out. Shutting this in … Don't stay inside and let your arteries harden, like theirs … I'm not talking about the sort of thing some of them have, those who have had their thrombosis, I don't mean veins gone furry through sitting around in places like this fine club and having more than enough to eat-'
情報の認知1、2 情報の認知2、2 情報の認知3、1 人工知能1、1

C 'What I'm asking you to look out for is - is moral sclerosis. Moral sclerosis. Hardening of the heart, narrowing of the mind; while the dividends go up. The thing that makes them distribute free blankets in the location in winter, while refusing to pay wages people could live on. Smugness. Among us, you can't be too young to pick it up. It sets in pretty quick. More widespread than bilharzia in the rivers, and a damned sight harder to cure.'
情報の認知1、2 情報の認知2、2 情報の認知3、1 人工知能1、2

D There was a murmurous titter. The uncle beside me whispered anxiously, 'He's inherited his father's gifts as a spesker.' 'It's a hundred per cent endemic in places like this Donnybrook Country and Sporting Club, and in all the suburbs you're likely to choose from to live in. Just don't be too sure they're healthy, our nice clean suburbs for white only.'
情報の認知1、2 情報の認知2、2 情報の認知3、2 人工知能1、2

E '-and your children. If you have babies, Queenie and Allan, don't worry too much about who kisses them - it's what they'll tell them later, that infects. It's what being nicely brought up will make of them that you've got to watch out for. Moral sclerosis - yes, that's all I wanted to say, just stay alive and feeling and thinking - and that's all I can say that'll be of any use …'
情報の認知1、2 情報の認知2、2 情報の認知3、1 人工知能1、2

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に15

【連想分析1】

表6 言語の認知(文法と意味)

クイーニーとアランの結婚式でマックスがスピーチする場面
A …don't let the world begin and end for you with the - how many is it? four hundred? - people sitting here in this - the Donnybrook Country and Sporting Club today. These good friends of our parents and Allan's parents, our father's regional chairman and the former ministers of this and that and all the others, I don't know the names but I recognize the faces, all right - who have mode us, and made this club, and made this country what it is.'
文法2 1、2 意味1 2 意味2 1 意味3 1 意味4 1

B 'There's a whole world outside this.' 'Shut outside. Kept out. Shutting this in … Don't stay inside and let your arteries harden, like theirs … I'm not talking about the sort of thing some of them have, those who have had their thrombosis, I don't mean veins gone furry through sitting around in places like this fine club and having more than enough to eat-'

文法2 1 意味1 2 意味2 2 意味3 1 意味4 2

C 'What I'm asking you to look out for is - is moral sclerosis. Moral sclerosis. Hardening of the heart, narrowing of the mind; while the dividends go up. The thing that makes them distribute free blankets in the location in winter, while refusing to pay wages people could live on. Smugness. Among us, you can't be too young to pick it up. It sets in pretty quick. More widespread than bilharzia in the rivers, and a damned sight harder to cure.'

文法2 1、4 意味1 4 意味2 2 意味3 2 意味4 2

D 'It's a hundred per cent endemic in places like this Donnybrook Country and Sporting Club, and in all the suburbs you're likely to choose from to live in. Just don't be too sure they're healthy, our nice clean suburbs for white only.'
文法2 1、2 意味1 6 意味2 5 意味3 1 意味4 2

E '-and your children. If you have babies, Queenie and Allan, don't worry too much about who kisses them - it's what they'll tell them later, that infects. It's what being nicely brought up will make of them that you've got to watch out for. Moral sclerosis - yes, that's all I wanted to say, just stay alive and feeling and thinking - and that's all I can say that'll be of any use …'
文法2 1、2、4 意味1 2 意味2 5 意味3 1 意味4 2

分析例
(1)マックスが妹のクイーンとアランの結婚式でスピーチする場面。
(2)文法2 テンスとアスペクト、1は現在形、2は過去形、3は未来形、4は現在進行形、5は現在完了形、6は過去進行形、7は過去完了形。 
(3)意味1 喜怒哀楽、意味2 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、意味3 課題や問題の受入または拒絶、意味4 振舞いの直示と隠喩。

テキスト共生の公式
言語の認知による購読脳の組み合わせを「空間と時間」(space and time)とする。地上に広がる無限は空で空間となり、これは時間と双子の表現である。つまり、「空間と時間」は、無限を表すための唯一の表現になる。
文法2のテンスとアスペクトには、一応ダイナミズムがある。また、空間には、ドニーブルック・カントリースポーツクラブが設定されている。連想分析1の各行の「空間と時間」を次のように特定する。

A:空間と時間=妹の結婚式場、テンスは現在形と過去形。 
B:空間と時間=妹の結婚式場、テンスは現在形が使われている。
C:空間と時間=妹の結婚式場、テンスとアスペクトは現在形と現在進行形。 
D:空間と時間=妹の結婚式場、テンスとアスペクトは現在形と過去形。
E:空間と時間=妹の結婚式場、テンスとアスペクトは現在形、過去形及び現在進行形。

結果
上記場面は、「空間と時間」という無限を表すための条件を満たしている。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に14

6 DBの作成法と分析
 
 DBの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味4)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。DBの数字は、登場人物を動かしながら考えている。(花村2017:107)
 こうしたDBを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容はそれぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。特に、問題解決の場面で、作家の脳の活動は強くなる。

表5 DBのカラム
文法1【内容】ヴォイス【説明】能動、受動、使役。
文法2【内容】テンス、アスペクト【説明】現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法3【内容】モダリティ【説明】様相の表現。可能、必然、推量、義務など。
意味1【内容】喜怒哀楽【説明】情動との接点。瞬時の思い。
意味2【内容】五感【説明】視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味3【内容】内容 思考【説明】課題や問題を受け入れるまたは拒絶する。
意味4【内容】振舞い【説明】ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
医学情報【内容】病跡学との接点【説明】受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「集団と知能(適応能力)」を共生にスライドさせるため、メディカル情報をここに置く。
情報認知1【内容】感覚情報の捉え方【説明】感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイル、グループ化、条件反射。
情報認知2【内容】記憶と学習 説明 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。さらに作品から読み取れる記憶を拾いながら、記憶を下位分類する。短期、作業記憶、長期(陳述と宣言)。
情報認知3【内容】計画、問題解決、推論【説明】受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
AI 1【内容】エキスパート【説明】意欲が空回りすることなく、社会への適応能力(知能)があるかどうか検討する。
AI 2【内容】エキスパート【説明】リスク回避を目的とした行動にも注目する。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に13

5.3 前頭葉と道徳の発達

 側頭葉は言語の発達に関わり、後頭葉は視覚の発達に関わっている。では、前頭葉は何の発達に関わっているのか。それは、道徳の発達だという。前頭葉は、18歳位で発達が完成する。脳の成熟度の目安に、神経経路の有髄化(髄鞘の完成)がある。脳の様々な部分と繋がっている長い経路の軸索は、エミリンという白い脂質組織に覆われている。このエミリンが経路に沿って進む神経の信号伝達速度を上げるため、脳の各領域間の伝達は素早く、確実になる。前頭葉は、他の様々な脳領域の活動を調整しており、長距離の伝達はとりわけ重要である。18歳位になると、前頭葉と遠く離れた脳領域を繋ぐ経路が完全に有髄化されて、前頭葉は様々な役割を完璧に果たすことができるようになる。(Goldberg 2007:183)
 語り手の白人女性は18歳のときに妊娠して、マックスと結婚し子供を産む。彼の父は、統一党の代議士であり、体面を重んじるファン・デン・サント家のしきたりには合わない。しかし、マックスも結婚して、妻と自分の赤ん坊を授かり、儀式や忠誠がわかる大人になったため、妹のクイーニーと花婿アランのために乾杯の音頭をうまくとれる。 
 細くて背丈は中位で手首が太くブルーで小さな目をしたマックスは、母方に似ていた。クイーニーも美しい。結婚式のスピーチの冒頭では、新郎新婦の幸せと二人の努力を心から祈る。ここでも前頭葉の活動が重要になる。前頭連合野には、困難な状況下で最適な行動を導くための一般知性とともに、社会的、感情的な知性が存在し、これが成功するための鍵になるといわれている。
 結婚式のスピーチの中では、人生に役立ちそうなことをいうものである。外部者を締め出して、居心地のいいクラブの中で必要以上の物を食べていると血管がボロボロになる。しかし、一方に独善と欺瞞に染まった精神的な心の動脈硬化があり、白人地区はすべてこれに感染していて、しかも治療が難しい。白人地区のやり方で子供を育てると精神的な動脈硬化になるという。マックスのスピーチは、お説教のようでもあり、果たして結婚式で言うべきことなのであろうか。たわいもないように核心をつく。道徳は発達している。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

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表4 前頭葉の性差

1 比較項目 適応的意思決定 大脳皮質男性 状況依存型を好む。 女性 状況独立型を好む。
2 比較項目 状況依存型の意思決定 大脳皮質男性 左前頭前野皮質が活動する。女性 左右両側の後部皮質(頭頂葉)が特に活動する。
3 比較項目 状況独立型の意思決定 大脳皮質男性 右前頭前野皮質が活動する。女性 左右両側の前頭前野皮質が特に活動する。
4 比較項目 大脳皮質の機能的なパターン 大脳皮質男性 左右の脳の違いが著しい。女性 前部と後部の脳の違いが著しい。
5 比較項目 言語情報の処理 大脳皮質男性 左半球の前部と後部がともに活動する。 女性 左右の大脳半球の前頭葉がともに活動する。
6 比較項目 前頭葉機能障害 大脳皮質男性 かかりやすい。 女性 かかりにくい。
7 比較項目 脳内の結合部 片側の大脳皮質男性 大脳半球の前後を繋いでいる白質繊維束が大きく、片側の大脳半球の前後の機能的統合が顕著で、分化が小さい。女性 左右の大脳を繋ぐ脳梁の部分が太くて、大脳半球間の機能的統合が顕著で、機能的分化は小さい。

 「ブルジョワ世界の終わりに」は、特定の一日という独立した状況でマックスの作業記憶について手繰りながら、当時の南アフリカの革命に関わる白人としての意欲を描いているため、女性であるゴーディマの執筆時の脳の活動は、左右両方の前頭前野皮質が活動していたと想定できる。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

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5.2 前頭葉と作業記憶

 前頭葉は、刻々と変化する決定、選択、切り替えのプロセスを経て記憶を制御している。この種の記憶は作業記憶と呼ばれていて、特に、思い出すという行為は、この作業記憶と前頭葉との関係である。前頭葉は、どの情報がどこに蓄えられているのかを知っており、情報の貯蔵場所を突き止めると、脳のその部分に連絡をとって、該当する記憶(記憶痕跡)を含んだ回路を活性化するため、当の記憶を思い出すことができる。Goldberg(2007)によると、作業記憶は、優先事項に基づいた適応型の意思決定と関係がある。一方、真実、つまり唯一の答えを探す決定論型の意思決定がある。
 ゴーディマとマックスの意欲は、適応型の意思決定(反アパルトヘイト)であるため、そこに解決策を求めていく。適応型の意思決定では、状況依存型と状況独立型がうまくバランスを取れると良いが、一概にそうはいかいない。集団で見た場合、女性は状況独立型を、男性は状況依存形を好む。また、比較的変化のない状況では、独立型の方が懸命であろうし、不安定な状況では、依存型の方が好ましい。
 前頭葉は、そもそも性差があり、右前頭葉が左よりも突き出ているのは男性の方で、女性はそれほどでもない。状況依存型の意思決定は、男性の場合、左前頭前野皮質が活動し、女性の場合、左右両側の後部皮質(頭頂葉)が特に活動している。また、状況独立型の意思決定は、男性の場合、右前頭前野皮質が活動し、女性の場合、左右両側の前頭前野皮質が特に活動する。
 男性と女性の大脳皮質の機能的なパターンの相違として、男性の脳では左右の違いが女性よりも明白であり、女性の脳では前部と後部の違いが男性よりも著しい。言語情報を処理する場合、男性は、左半球の前部と後部がともに活動するのに対し、女性は、左右の大脳半球の前頭葉がともに活動している。(Goldberg 2007:127)

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

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5.1 前頭連合野とやる気
 
 前頭連合野は、思考や推測などの学習能力を支えるとともに、人間らしく振舞うように指令を出す。学習能力を向上させるには、動機づけや学習意欲を保ちながら、やる気を引き起こすことが大切である。このやる気の調節に前頭葉が関与している。
 学習能力は、神経伝達物質ドーパミンの分泌を高めることにより向上する。喜びや達成感、褒められたり愛されたりしたときの精神的な報酬が大脳辺縁系にある側座核を刺激することにより、ドーパミンの分泌が高まる。片野(2017)によると、ドーパミンは、脳幹の中脳にある黒質緻密部と腹側被蓋野という神経核から分泌され、視床下部や大脳皮質など脳全体に届けられる。黒質緻密部は、運動の調節と関わりがある。適度な運動をすると気分が爽快になり頑張ろうと思うのは、運動によりドーパミンが高まるからである。
 ドーパミンは、目標を立てたときと目標を達成したときに分泌が高まる。「ブルジョア世界の終わりに」の中で見ると、当時の南アフリカで男を望むとしたら、グレアムが良い。語り手の私は、18歳で結婚して子供を作り、その後マックスと離婚した。マックスが刑務所にいたとき、グレアムは嘆願書を提出する手助けをしてくれた。彼の妻は髄膜炎で亡くなった。政治告発されている人たちを弁護していて、身に降りかかるものがあってもひるまずに活動している人たちである。ヨーロッパの黒い森に行って二人で楽しく過ごした。結婚を望めばそうなるだろう。グレアムは、諦めず、やり遂げて、約束を守る。磁石に吸い寄せられるように引き付けられることに気がつく、そういう関係である。 
 目標の設定は、適度に難しく、頑張れば達成できるぐらいがよい。自分の部屋で文字にして目視できるようにすると、ドーパミンの補給にもなる。頑張って目標に到達したら、自分であれ家族や仕事仲間であれ褒めてあげると、次の目標に向けてまた頑張ろうという気になる。それが学習能力向上のサイクルとなる。例えば、学習目標設定→ドーパミン分泌→モチベーションUP→勉強する→学習目標達成→ドーパミン分泌→次の目標のためにモチベーションUP→学習目標設定。(片野2017:18)
 「ブルジョア世界の終わりに」の中で見ると、マックスの死が重要な問題になる。マックスは大学をやめて仕事についた。しかし、長続きせず、大学時代に共産党の細胞メンバーだったため、COD(民主主義者会議)に入りアフリカ人の政治運動と直接協力しながら活動した。その後、ンマガンドラというアフリカ社会主義運動のグループの師匠格となり、民衆(黒人のこと)に近づいていく。アフリカ社会主義方法論の原稿は押収されることはなかった。離婚後、私の前から姿を消してはまた現れ、白人の革命グループと地下で付き合いがあるという噂も聞かされたが、マックスは、まんまと死ぬことに成功した。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に9

5 ゴーディマの執筆脳

 表2で説明したように、意欲とは、人が何かの行動を起こすとき、欲求や衝動、願望などが動機づけとなって、意味や目的を持って行動しようとする意志の働きである。「ブルジョワ世界の終わりに」を書きながら、ゴーディマは、反アパルトヘイト運動が成立しない白人社会の終焉のために、白人が南アフリカの変革にどのように関与できるのか、問いかけていた。しかし、意欲を持って計画をしても、欲求が満たされないことがある。意欲、計画、欲求に関する脳の作用は、主に前頭葉が担っているため、前頭葉のあらましについて以下で説明する。
 前頭葉は、頭頂葉や側頭葉や後頭葉といった他の連合野と相互関係にあり、聴覚、体性感覚、視覚と結びつきがある。また、本能を司る視床下部とか情動や動機づけに対して判断を下す扁桃体と結びつきが強い。(Goldberg 2007:57)
前頭葉には、意志、計画、意欲、感情、言語の発音、運動の統合などの働きがある。また、思考や推測などの学習能力は、前頭連合野が支えており、五感から入った情報は、最終的に前頭連合野に送られて、何をするべきかが判断される。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に8

表3 ゴーディマのメディカル表現
メディカル用語の使用場面(原文頁)
He died, Bobo. They sent me a telegram this morning. It’ll be in the papers, so I must tell you -- he killed himself. (15)
用語の説明 自殺。自分で自分を殺すこと。

I was excited with hatred of her self-pity. The very smell of her stank in my nostrils. Oh we bathed and perfumed and depilated white ladies, in whose wombs the sanctity of the white race is entombed! (25)
用語の説明 鼻腔は、顔面の中央、鼻の側面、頭蓋の前後にある空洞。前方は外鼻腔によって外界に通じ、後方は後鼻腔によって咽頭に通じている。機能は、発生時の共鳴作用、呼気の加湿、加温などである。子宮は、人や哺乳類の体内で胎児を育てるところ。茄形の筋肉管。

I don’t know whether they ever knew that he was a member of a Communist cell, probably not. (25)
用語の説明 生物体を組成する構造的、機能的単位。分裂によって増殖する。核を持つ真核細胞と、それを持たない原核細胞とがある。核以外の部分を細胞質と呼び、各種の細胞小器官や顆粒を含む。

I suppose that was why she was inclined to take with sophisticated tolerance, unlike my won parents, the fact that I got myself pregnant at eighteen. (26)
用語の説明 妊娠は、女子が体内に受精卵またはそれが発育した胎児を包容している状態。正常器官、即ち受精から分娩までの期間は、最終月経から数えて約280日。

What I'm asking you to look out for is - is moral sclerosis. Moral sclerosis. Hardening of the heart, narrowing of the mind; while the dividends go up. (31) ….
用語の説明 動脈硬化とは、老化とともに、動脈内にLDLがたまり、内腔が狭くなっていき、弾力性を失ったりした状態をいう。そこから精神的な動脈硬化を引き出す。
I'm not talking about the sort of thing some of them have, those who have had their thrombosis, I don't mean veins gone furry through sitting around in places like this fine club and having more than enough to eat. (31)
用語の説明 血栓とは、血管内にできた血のかたまり、動脈がぼろぼろになる。動脈硬化のこと。

More widespread than bilharzia in the rivers, and a damned sight harder to cure. (31)
用語の説明 住血吸虫とは、吸虫類の住血虫科の扁形動物の総称。雄雌異体。雄虫は体調約1.5センチ、外見は細長い。後体は幅広く左右から覆面に向かって巻き込まれ、通常この中にメスを抱き込んでいる。雌虫は体調約2センチ、細長くて紐状。前端に口吸盤、腹面に腹吸盤があり、人畜の静脈、門脈系内に寄生して血液を吸う。

It's a hundred per cent endemic in places like this Donnybrook Country and Sporting Club, and in all the suburbs you're likely to choose from to live in. (31)
用語の説明 感染地区とは、細菌、有毒物質、放射性物質などにより、汚れること。

He had a wife once; she was a girl he'd gone know with since they were schoolchildren, and she died of meningitis when she was younger than I am now. (36)
用語の説明 脳脊髄膜炎と同じ。一般に発熱し、脳脊髄液の圧力上昇のため、激しい頭痛、嘔吐、頸部強直の圧力上昇などが現れる。流行性のものは法定伝染病で、髄膜炎双球菌によって起こり、治療後も神経障害を残すことが多い。結核性のものや化膿性のものもある。

Boao and I went down for two weeks at Christmas and every day the three of us walked along the cliff road above the sea, where the polyps of seaweed reach up from far down in the water. (53)
用語の説明 皮膚、粘膜などの面から突出し、茎を持つ卵球形の腫瘍。慢性炎症から生じるものと、良性腫瘍性のものとがあり、鼻腔(鼻茸)、胃腸、子宮、膀胱などにできやすい。

Among the very small white-haired old ladies, the dying diabetic, taking so long to die, was till there, humped on her side, smoking. (57)
用語の説明 血液中のブドウ糖が多いと、血管や神経、腎臓や目など、全身の様々な組織に障害がでる。食後は血中ブドウ糖(血糖値)が増えるが、同時にインスリンが分泌されブドウ糖が処理されて、やがて血糖値が下がる。しかし、インスリンの分泌が少なくて働きが悪かったりすると、食後の血糖値が下がらず、血糖値の高い状態が続く。それが糖尿病。

Well, your gums was sore this morning, grannie, don't you remember? (58)
用語の説明 歯の昆布を包む口腔の粘膜層。骨膜と固く結合し分泌腺がない。
Angina attacks (58)
用語の説明 狭心症の発作。

I'm not a doctor … it sounds like middle ear. (76)
用語の説明 聴覚器官の一部。中耳腔と耳管からなる。外側は鼓膜を隔てて外耳道に、内前方は耳管によって咽頭に開き内耳に接する。内部に3個の耳小骨(ツチ、キヌタ、アブミ)が連なり、鼓膜の振動を内耳に伝える。

That's what's up there, behind the horsing around and the dehydrated hamburgers and the televised blood tests. (93)
用語の説明 血液検査は健康診断の基本項目である。ガンの腫瘍マーカーはガンの発見や治療に利用されている。アトピーやスギ花粉や食べ物に対するアレルギー反応についてもわかる。また、エイズ、貧血、白血球、動脈硬化、心疾患、脳血管疾患などの発病のリスクもわかる。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に7

4 ゴーディマのメディカル用語

 医学の分野には、世界中でし烈な競争が繰り広げられている細胞レベルのミクロの研究と身体全体に通じる外部環境も含めた体内時計のようなマクロの研究がある。システム系もミクロは電子レベルの研究であり、マクロは地球規模の環境問題や交通とか震災システムのような研究である。経済でも、ある企業と日本全体の問題とか日本国内と世界の国、地域からなるミクロとマクロの研究がある。  
 いずれもミクロの研究は、個人やグループのアイデアが評価の対象となり、マクロはそれに基づいたグローバルな分析から結論を導いていく。こうしたミクロとマクロの発想や調節を人文科学、特に文学分析にも適用していきたい。個人が個人の研究をすればよいのでは、文系脳で頭打ちとなり、20世紀型で時代遅れも甚だしい。
 中でも特に注目する点は、問題解決の場面である。問題未解決の場面に比べて、作家の執筆脳は強く働いていると思われる。例えば、どうにもならない精神状態を説明するときに、ゴーディマは、メディカル表現を用いて問題解決を試みる。以下に、作品の中で使われているメディカル表現を抽出して用語を説明し、その場面を紹介する。

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プロフィール
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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