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2019年08月08日
THE THIRD STORY純一と絵梨 <35 行方不明>
行方不明
梨央は絵梨の帰りが遅くなる日は多少の家事を片付けたりする、学校でも家でも目立ったトラブルもないいたって平凡な女子学生だった。親としては、相当の美人だと思っていたが姉の梨沙が目立つタイプの美人なので梨央は影が薄かった。家が大好き家族が大好きで、余り出歩かないし夜遅くなることもない。
その夜は梨央は夜9時を過ぎても帰ってこなかった。普段は夕食が要らない日は出かける前か外出先から連絡が入る。梨沙も絵梨も、「たまにはこんな日もある。まだ10時なんだから。」とタカをくくっていたが僕は落ち着かなかった。
11時を過ぎた時点で絵梨が心当たりの友人に連絡しだした。梨沙も落ち着かなくなった。どの友人にも心当たりはなかった。その日一緒に講義を受けた友人は夕方の5時過ぎには別れたといった。僕は警察に連絡したかったが、女二人は取り合ってもらえないだろうといった。
12時を過ぎてたまりかねて警察に電話した。丁寧に対応してくれたが、それでも「事故の案件では該当する人はないですね。深夜でも気兼ねせずお友達に確認してみてください。」という返事だった。世の中には、一晩くらい帰らない娘が普通にいるらしかった。
翌朝になっても梨央は帰らなかった。家族は誰も寝なかった。僕と絵梨は警察に行った。捜索願を出すときには警察はそんなに深刻に受け止めてはいなかった。よくある事らしい。
梨沙も朝から梨央の友人に電話をかけまくった。友人たちもお互いの心当たりを当たってくれた。皆、梨央に異性関係があるとは思っていなかったし、無断で一晩家を空けるなど想像もつかなかった。
梨沙の恋人も親身になって心当たりに電話をかけてくれた。梨沙と恋人の共通の友人には梨央を知っている人もいたようだった。そういった、ほんの顔見知り程度の友人にも連絡を取ってくれたが、梨央の行方は分からなかった。
梨央は2日目の夜も帰らなかった。さすがに警察も本腰になった。食事もとれない状況で絵梨は横になったまま動けなかった。梨沙は気丈に電話番や食事係を引き受けてくれた。
「どうか無事で。どうか無事で。」とそればかり考えていた。
3日目の昼頃から警察が家に張り付いた。誘拐を念頭においていた。しかし誘拐されて向こうから連絡あるのは身代金目当てのときだけだと念を押された。ただ、拉致することが目的の場合には連絡は入らない、若い娘の拉致の場合には身代金目的の割合は低いという。恐ろしくて涙も出なかった。
3日目の夜11時を過ぎたころ警察から家に詰めている刑事に足立区でぼや騒ぎがあったと連絡が入っていた。僕たちはなんでこの場の刑事にそんな連絡が入ったのかわからなかった。
よそのぼや騒ぎなんてどうでもよかった。うるさく感じていた。しかし、刑事の表情が明るくなって、こちらを向いた。「お嬢さん見つかりました。存命です。病院へ運ばれましたが、大きなけがはない模様です。」といった。
家族三人思わず「よかった。」と抱き合った。がその間1分だった。すぐにでも顔を見ないことには安心できなかった。存命といったって、どんな怖い目にあわされたのかを考えると心臓が縮んだ。
続く
梨央は絵梨の帰りが遅くなる日は多少の家事を片付けたりする、学校でも家でも目立ったトラブルもないいたって平凡な女子学生だった。親としては、相当の美人だと思っていたが姉の梨沙が目立つタイプの美人なので梨央は影が薄かった。家が大好き家族が大好きで、余り出歩かないし夜遅くなることもない。
その夜は梨央は夜9時を過ぎても帰ってこなかった。普段は夕食が要らない日は出かける前か外出先から連絡が入る。梨沙も絵梨も、「たまにはこんな日もある。まだ10時なんだから。」とタカをくくっていたが僕は落ち着かなかった。
11時を過ぎた時点で絵梨が心当たりの友人に連絡しだした。梨沙も落ち着かなくなった。どの友人にも心当たりはなかった。その日一緒に講義を受けた友人は夕方の5時過ぎには別れたといった。僕は警察に連絡したかったが、女二人は取り合ってもらえないだろうといった。
12時を過ぎてたまりかねて警察に電話した。丁寧に対応してくれたが、それでも「事故の案件では該当する人はないですね。深夜でも気兼ねせずお友達に確認してみてください。」という返事だった。世の中には、一晩くらい帰らない娘が普通にいるらしかった。
翌朝になっても梨央は帰らなかった。家族は誰も寝なかった。僕と絵梨は警察に行った。捜索願を出すときには警察はそんなに深刻に受け止めてはいなかった。よくある事らしい。
梨沙も朝から梨央の友人に電話をかけまくった。友人たちもお互いの心当たりを当たってくれた。皆、梨央に異性関係があるとは思っていなかったし、無断で一晩家を空けるなど想像もつかなかった。
梨沙の恋人も親身になって心当たりに電話をかけてくれた。梨沙と恋人の共通の友人には梨央を知っている人もいたようだった。そういった、ほんの顔見知り程度の友人にも連絡を取ってくれたが、梨央の行方は分からなかった。
梨央は2日目の夜も帰らなかった。さすがに警察も本腰になった。食事もとれない状況で絵梨は横になったまま動けなかった。梨沙は気丈に電話番や食事係を引き受けてくれた。
「どうか無事で。どうか無事で。」とそればかり考えていた。
3日目の昼頃から警察が家に張り付いた。誘拐を念頭においていた。しかし誘拐されて向こうから連絡あるのは身代金目当てのときだけだと念を押された。ただ、拉致することが目的の場合には連絡は入らない、若い娘の拉致の場合には身代金目的の割合は低いという。恐ろしくて涙も出なかった。
3日目の夜11時を過ぎたころ警察から家に詰めている刑事に足立区でぼや騒ぎがあったと連絡が入っていた。僕たちはなんでこの場の刑事にそんな連絡が入ったのかわからなかった。
よそのぼや騒ぎなんてどうでもよかった。うるさく感じていた。しかし、刑事の表情が明るくなって、こちらを向いた。「お嬢さん見つかりました。存命です。病院へ運ばれましたが、大きなけがはない模様です。」といった。
家族三人思わず「よかった。」と抱き合った。がその間1分だった。すぐにでも顔を見ないことには安心できなかった。存命といったって、どんな怖い目にあわされたのかを考えると心臓が縮んだ。
続く