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2019年08月16日
THE THIRD STORY 純一と絵梨 <42 破傷風>
破傷風
金曜日の夜10時ごろインターホンが鳴った。僕が不愛想な声で「はい」と返事をすると「夜分にすみません。浜野です。」という声が聞こえた。
途端に梨央が羽が生えた小鳥のように玄関に駆け出して行った。サンダルをつっかけて浜野に駆け寄った。僕たちが後から出ていくと二人が抱き合っているのが見えた。
ああ、本物だと思った。梨央は僕たちの懐から本当に浜野の懐へ飛び立っていったのだ。梨沙は呆然と二人を見ていた。
その夜のうちに神戸へ帰るというのを無理やり引き留めた。浜野のあごにうっすらとひげの影が見えた。疲れているのだろう。そのまま返して事故でも起こされては大変だと思ってその夜は泊まるようにいった。父親としての気遣いとちょっとした意地悪だった。しかも浜野には客間を用意してやった。ざまあみろ!
きっと梨央がベランダ伝いにあの男の部屋に忍んで行くに違いない。昔の絵梨のように。そして目にいっぱい涙をためて男の胸に飛び込むのだ。男はきっと力いっぱい抱きしめるのだろう。昔絵梨が僕の胸に飛び込んできたときのことを思い出した。恋愛ドラマなんてみんな同じようなストーリーなんだよ。
土曜日の朝早く二人は神戸に向かって出発した。嬉しいような寂しいような複雑な気分だった。絵梨は二人が出て行くやいなや泣き出した。泣きながら笑っていた。梨沙も笑っていた。「浜野さん、いい人よねえ。梨央幸せね。」といった。ふっと寂しそうな眼をしたような気がした。
浜野が迎えに来た時、梨央は慌ててサンダルを片方だけつっかけて飛び出した。浜野は梨央の片方の足が裸足だと気づいて玄関で這いつくばるようにして、梨央がけがをしていないか足を調べたらしい。そして、「こういう時の小さな傷が悪化すると破傷風になるんだよ。」と言ったそうな。
浜野が席を外したすきに梨沙が梨央に「浜野さんて大げさね。」というと梨央が「あの人何言ってんだかわかんなかったの。」というと久しぶりに母娘3人が笑い転げた。
その日から我が家では破傷風という言葉が流行語になった。ああ、雨が降ってきた洗濯物早く入れなくちゃ破傷風になっちゃう。こんなもの、ほったらかしにして破傷風になっったらどうするの?という具合だ。もちろん梨央には内緒だ。
梨央の幸福な結婚を目の当たりにして僕たち夫婦は梨沙の縁談に本気になった。見合い結婚は割といいというのが僕たちの気持ちだ。しかし、梨沙は縁談には耳を貸さなかった。「私はいい。」の一点張りだ。梨沙も幸福になってほしかった。
続く
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途端に梨央が羽が生えた小鳥のように玄関に駆け出して行った。サンダルをつっかけて浜野に駆け寄った。僕たちが後から出ていくと二人が抱き合っているのが見えた。
ああ、本物だと思った。梨央は僕たちの懐から本当に浜野の懐へ飛び立っていったのだ。梨沙は呆然と二人を見ていた。
その夜のうちに神戸へ帰るというのを無理やり引き留めた。浜野のあごにうっすらとひげの影が見えた。疲れているのだろう。そのまま返して事故でも起こされては大変だと思ってその夜は泊まるようにいった。父親としての気遣いとちょっとした意地悪だった。しかも浜野には客間を用意してやった。ざまあみろ!
きっと梨央がベランダ伝いにあの男の部屋に忍んで行くに違いない。昔の絵梨のように。そして目にいっぱい涙をためて男の胸に飛び込むのだ。男はきっと力いっぱい抱きしめるのだろう。昔絵梨が僕の胸に飛び込んできたときのことを思い出した。恋愛ドラマなんてみんな同じようなストーリーなんだよ。
土曜日の朝早く二人は神戸に向かって出発した。嬉しいような寂しいような複雑な気分だった。絵梨は二人が出て行くやいなや泣き出した。泣きながら笑っていた。梨沙も笑っていた。「浜野さん、いい人よねえ。梨央幸せね。」といった。ふっと寂しそうな眼をしたような気がした。
浜野が迎えに来た時、梨央は慌ててサンダルを片方だけつっかけて飛び出した。浜野は梨央の片方の足が裸足だと気づいて玄関で這いつくばるようにして、梨央がけがをしていないか足を調べたらしい。そして、「こういう時の小さな傷が悪化すると破傷風になるんだよ。」と言ったそうな。
浜野が席を外したすきに梨沙が梨央に「浜野さんて大げさね。」というと梨央が「あの人何言ってんだかわかんなかったの。」というと久しぶりに母娘3人が笑い転げた。
その日から我が家では破傷風という言葉が流行語になった。ああ、雨が降ってきた洗濯物早く入れなくちゃ破傷風になっちゃう。こんなもの、ほったらかしにして破傷風になっったらどうするの?という具合だ。もちろん梨央には内緒だ。
梨央の幸福な結婚を目の当たりにして僕たち夫婦は梨沙の縁談に本気になった。見合い結婚は割といいというのが僕たちの気持ちだ。しかし、梨沙は縁談には耳を貸さなかった。「私はいい。」の一点張りだ。梨沙も幸福になってほしかった。
続く
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