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2008年09月26日

或真敷バラン最悪説




※逆転裁判シリーズの重大なネタバレ注意。特に逆転裁判4


或真敷と言えば逆転裁判4以降に登場する大魔術集団の一座である。
その中でも或真敷ザックという重要な登場人物が、逆転裁判4という作品のストーリーの中でも、
最も迷惑な存在として語られる傾向がある。
彼を弁護した事で過去作の主人公である成歩堂龍一が弁護士の資格を失う事になった。
師である或真敷天斎を殺害した或真敷ザックの容疑を覆す事が出来ず、
捏造された証拠品を提出した責任を問われ成歩堂は弁護士の資格を剝奪され、
或真敷ザックは有罪判決が下される直前に法廷から逃走してしまった。

同じく或真敷天斎に師事している或真敷ザックの弟弟子に或真敷バランという人物がいる。
彼は検察側の証人であると同時に事件の容疑者の一人でもあった。
そんな彼と事件の7年後に成歩堂は再会し、話をする事になる。



この7年間。決して、
ラクな道ではなかった‥‥

天斎氏の演目を
上演できなかったから、ですか?

見そこなわないでいただきたい。
バランの技は“ホンモノ”。
師匠の助けなど。
むしろ。我が道をジャマしたのは、
兄弟子でしたな。


或真敷 ザック‥‥

‥‥7年前。
法廷での、あのミゴトな消失。
あれで、すべてが解決した‥‥
そう思ったのですが。

≪或真敷 ザックが師匠を殺害、
 その罪から逃れるために消えた≫
‥‥7年前。あなた自身、
そう言ってましたね。

‥‥ついさっきのコトのように
おぼえていますよ。
しかし。ザンネンながら、
そのようには行かなかった。
このバラン自身の“疑惑”が
消えなかった!
兄弟子・ザックが、
この私をかばって消えた‥‥
そんなコトを書くマスコミもあった。
‥‥信じられますか!


そうだったんですか‥‥

‥‥しかも。
その同じマスコミが‥‥
今度はこの、史上最大のショーを
おもしろ半分に取材に来る。
そして私は、それにニコニコと
答えなければならない。
これを茶番と呼ばずして、
なんでしょうかッ!

でも‥‥それは。あなたたちが
ハッキリさせなかったからです。
天斎氏の“ 死”を。
ぼくは今日、今度こそ、
そのコタエを知るために来たのです。

観客は、ステージに
上がることはできない。
客席から、スポットライトを
ながめておればよいのです。



この様に或真敷バランは兄弟子のザックや新聞記者の葉見垣に憤っている。
この時点では師匠を殺害した罪を逃げたザックに着せられたとでも言わんばかりの論調である。



この7年間。私は耐えてきた。
今こそ! 遅ればせながら、
私の時代が幕を開けるのです!
我が一座が生み出した奇跡の数々は、
今。この私のモノになるのだ!

バランさん。
コイツがあるかぎり‥‥
あなたが“奇跡”を上演するのは
ムズカシイかもしれません。

もっと早く、持ってくるべき
だったようです。
天斎氏の≪奇跡≫の上演権利‥‥
その権利者を示す書類です。

ば、バカなッ!
或真敷‥‥ザック‥‥だと‥‥
しかも、なんだ!
我がムスメにゆずる、だと‥‥

奈々伏 みぬき‥‥今は、ぼくの
ムスメということになっていますが。

あり得ぬッ! あのオトコは‥‥
ザックは、消えたハズではないか!

この書類は、ホンモノです。
‥‥ザック氏は、生きていた。
公証人と、ぼくが証言します。

ど、どうして‥‥なぜだッ!
なぜ、運命は、私をもてあそぶ‥‥
なぜ私の人生は、死者に
操られなければならないのだッ!
天斎を撃ったのは‥‥そう!
ザックなのだ! そうなのだッ!
あのザックが逃げたばかりに‥‥
我が魔術師人生は、闇に閉ざされる。

“或真敷 天斎氏を殺害したのは、
或真敷 ザックである”‥‥
それが“立証”されれば、
あなたは救われる‥‥
そういうコトですか?

それならば‥‥今でも、
遅くはないかもしれません。
世間に対して“立証”できる
証拠品があればいいのですから。
天斎氏を殺害したのが
“本当は、誰だったのか?”‥‥
‥‥ここに、あなたの
“お望みのもの”があります。
或真敷 ザックが書いた、
もう1通の書類です。
“或真敷 天斎を殺害した”‥‥
彼は、そう認めています。
‥‥よかったですね。
これで、あなたの思いどおりだ。


私は‥‥大魔術師。
人をダマすのがシゴトだ。
観客をダマして、ひとときの
夢を見せる‥‥
いつのまにか。
自分自身が観客になっていた。
私は、私をダマしつづける‥‥

ザックさんは、ぼくの目の前で
コイツを書き上げました。
‥‥彼に、あなたの置かれた
立場を説明したときに。

‥‥わかっているのだろう?
その≪自白≫が、ウソっぱちだ、と。

はい。或真敷 ザック氏は、誰も
殺害していないと考えています。

“それなら、ハナシはカンタンだ”
‥‥そう思ってるのだろう?
脅迫状を受け取ったのが、2人。
そのうち1人が無実だとしたら‥‥
残る1人が、ハンニンだ。
ステージの相棒をかばって、
その姿をくらます‥‥か。
これはたしかに、美談だ。

あなたが‥‥撃ったんですね?
或真敷 天斎氏の、ヒタイを。

‥‥それを知って、どうする?
警察に駆け込む、かな?
‥‥好きにしたらいい。
私には、もう何も残っていない。
‥‥さよう。
私には、たいした実力はない。
師匠・天斎の演目が欲しかった。
‥‥あのときの私は、大魔術の
悪魔にとりつかれていたのだろう。
あなたには、ザンネンだが。
我が師匠を撃ったのは、
このバランではないッ!
脅迫状を受け取ったのは、たしかに。
ザックとバランの2人のみ。
しかし‥‥もうヒトリだけ。
ピストルを撃つことができる
ニンゲンがいたのです。
‥‥ここまで言えば、
さすがに、おわかりでしょう?
‥‥そのとおり。
或真敷 天斎”本人”です。

或真敷 天斎は‥‥自殺だった、
ということですか?
正直なトコロ‥‥
想像もしていませんでした。

あの晩、私が訪れたとき。
老人は生きていた。
眠っている‥‥
そのように見えました。
私は、あの老人を撃てなかった。
背を向けて、
病室を出ようとしたとき‥‥
老人が、私を呼び止めたのです。

‥‥或真敷 天斎と
ハナシをしたんですか。

ええ。だから、
私は知っていたのですよ。
天斎が、兄弟子‥‥或真敷 ザック
に、上演権を譲渡したことを。

そう、だったんですか‥‥
‥‥どうやら。お詫びを
言わなければなりません。
“天斎氏を撃ったのは、あなただ”
‥‥ぼくは、そう考えていました。

詫びる必要はないでしょう。
あるイミ‥‥
私の罪は、殺人よりも重い。
私は‥‥知っていたのですよ。
脅迫状が2通、あったことを。
兄弟子は、隠しゴトができない。
探り出すのはカンタンだった。
‥‥私には、師匠の計画がわかった。
“どちらかの手で
死のうとしている”‥‥
まさか、上演権の譲渡まで
考えているとは知りませんでしたが。
しかし‥‥そのとき。
‥‥私のココロに
悪魔が宿ったのです。
‥‥告白しましょう。
私は、天斎を撃つつもりでいた。
そして‥‥その“罪”を、兄弟子に
負わせる計画を立てたのです。
私は、あの晩‥‥“あるもの”を
用意して、天斎の病室へ向かった。
点滴の薬液ですよ、モチロン。
見舞いに行ったとき、調べておいた。
ザックが撃たなかったときは、
この自分がトドメをさす!
そして‥‥この薬液を使って、
彼を“殺人者”に仕立てあげる‥‥
それが、私の計画だったのです。
しかし‥‥
やはり。私には撃てなかった。
私の中の悪魔は去ったのです。
そして‥‥天斎が、私を呼び止めた。

『‥‥おまえには悪いが‥‥
‥‥ワシのトリックは
ザックにゆずることにしたよ‥‥
‥‥おまえにはまだ、
客を集めるチカラはない‥‥
‥‥できれば、
ザックをささえてやってくれ‥‥』

病室を出て‥‥
私は、立ちつくしていた。
ショックで‥‥動けなかった。
そのとき‥‥聞いたのだ。
運命の、あの銃声を‥‥
そして、私のココロに
悪魔がよみがえってしまった。
‥‥“ザックが殺した”コトに
するのだ‥‥
‥‥そうなれば、
上演権は、私のものになる‥‥
私は‥‥現場に偽装をほどこした。
天斎の手からピストルを取りあげ、
指紋をふき‥‥そして。
持ってきた薬液を、注射器で
点滴に注入したのだ‥‥

結果的に‥‥あなたの思った
とおりの展開になったワケですね。
天斎氏は亡くなり、その罪を
ザックさんにかぶせようとした‥‥

“思ったとおり”‥‥か。
現実は多少、ちがう展開を
見せたワケですがね。
さあ‥‥いかがですか?
信じますかな?
私の、この物語を‥‥

7年前のことです。
ぼくには、わかりません。
ただ‥‥‥
あなたのクチから聞きたかった。
話していただけて、うれしいです。

‥‥礼を言うべきなのは、
こちらです。
すべてを失って‥‥
やっと、決心がついた。

‥‥警察へ、
出頭するつもりですか?

兄弟子が消えようとも、
私の罪は消えない。
罪が消えないかぎり、私のまわり
からは、すべてが消えていく。
仲間‥‥上演権‥‥
そして、大魔術。
もう、消えるのはタクサンですな。
≪死者に操られた人生≫‥‥
今までずっと、そう思っていました。
しかし、そうではなかった。
或真敷 ザックは、
生きていたのですからね。
もしかすると。
生きていたのは、彼だけでは
なかったのかもしれない。
今になって、考えてみると。
私‥‥いや。私たちは、一度も
見ることがなく、終わってしまった。
そう。‥‥“彼女”の遺体を。
‥‥いや。考えすぎでしょう。
忘れてください。
‥‥いつか。我が兄弟子、
或真敷 ザックに会う日が来たら。
そのときは、我がアヤマチを
詫びるコトにしましょう。
今日は、お話しできてよかった。
‥‥ありがとう。



‥‥ん? ちょっと待てよ‥‥?
つまり、事件当時、或真敷バランだけが天斎の自殺という真実を知っていた事になる。
それにも拘わらず、唯一真実を知っていたはずのバランが、
ザックに罪を着せる為に事件現場に偽装を施し、更に裁判で証人として偽証をした事になる。
おまけに担当の弁護士は出所も分からない怪しい証拠品を裁判で提出し、立場は不利になる一方だった。
これらの要素をザックの視点で冷静に見てみると、なかなか理不尽なものである。
無実の罪で捕まりそうになり、且つ逃げ切る事が可能であるならば、
逃げると言う選択肢を取るのも仕方がなかった部分もあるかもしれない。
実の娘を置いて逃げると言う行動の是非は置いておくとして。

当時、或真敷バランが偽装と偽証をしなければ、
7年前の事件は単なる天斎の自殺として終わるはずだったと考えると、
彼は逆転裁判4という作品のストーリーにおいて中々に罪深い人だったと言えるのではないだろうか。
一時は天斎の死に関わる自身の疑惑が消えなかった事に憤っていたが、
現場への偽装と裁判での偽証が暴かれれば無理もない。それは流石に自業自得である。
バランの疑惑を記事にしていた葉見垣も実は事件の本質を見抜いていたのかもしれない。



他の登場人物の罪深さについても考えてみる。要は誰が悪いのか。

或真敷ザック
・ポーカーで人格を判断し、前任の弁護士を解任、牙琉霧人の怒りに触れた。
怒るのは兎に角として、流石に証拠の捏造や殺人に平気で手を出す牙琉霧人に問題がある。
そもそも牙琉霧人は、この物語の黒幕なので悪くて当たり前なのだが。
霧人が用意した、捏造された証拠品を提出した点は弁護人の落ち度が大きい様に思える。
仮にザックが逃亡しなかったとしても、成歩堂の弁護士の資格が剝奪されるという展開には、
あまり影響しなかったのではないだろうか。
どちらかと言うとザックが本物の証拠品を成歩堂に託さなかった事が最大の分岐点だろうか。
成歩堂が捏造された証拠品を手に入れる前から姿を消す準備をしていた様なので、
最初から無罪判決は望んでいなかったのかもしれない。

或真敷 天斎
・脅迫と自殺
自分の娘を傷つけられた恨みがあるとは言え、
2人の弟子を脅迫して呼び出した上に、その直後に自殺をすると言うのは中々に迷惑な行動である。

成歩堂龍一・牙琉響也・裁判長
・問題の裁判
捏造された証拠品を提出してしまった。出所も分からない証拠品を使うとは、流石に迂闊である。
また、その様な証拠品が提出されるまで裁判を進行させようとしない検察や裁判官にも問題がある。
弁護人に真犯人を暴く義務があったり、その場のライブ感で証拠品が提出されるという様な、
この世界の裁判のシステム自体に大きな問題があると言ってしまえば、それまでだが。
根本的に、起訴のハードルが低く、無罪のハードルが高すぎるのである。



再会した成歩堂と話を終えるまでは、或真敷バランは兄弟子のザックを殺人の罪に陥れ、
師匠である天斎から受け継いだ演目を上演する気でいた様なのだが、
ザックがバランを庇って嘘の自白を書き残した事を知り出頭を決意した。
この様な兄弟子の愛情に感化されて彼も考えが変わったのだろうか。
バランは仲間が消えていく事に苦しんでいる様子だった。
描写は少ないが彼らの兄弟弟子としての絆は想像よりも強い物だったのかもしれない。
そんな兄弟子にバランが一時は殺人の罪を着せようとまでした原因は‥‥、
やはり自分で用意したイカサマ師を瓶で殴る様なザックの日頃の行いだろうか‥‥。

考えてみるとザックは撃たなかったはずの天斎が銃弾で死に、自分に容疑が掛かった時点で、
自分に対するバランの敵意に誰よりも早く気が付いたはずである。
それでもザックは裁判でバランと正面から争う事はせずに姿を消す事で身を引いたのだ。
ザックが上演権を娘に譲渡した事でバランの奇跡の上演が難しいと述べられている一方で、
自白書によってザックの罪が立証され、バランは救われ思い通りになるとも述べられている。
この辺りの権利の関係がどうなっているのか、筆者の理解も曖昧ではあるのだが、
ザックは娘の将来を保障する為に動いていると同時に、バランをも気に掛けていたという事だろうか。
ザックが本当に自分の娘の事だけを考えていたならば、何も裁判で姿を消さずとも、
本物の証拠品を成歩堂に託してバランの偽装と偽証を看破すれば良かった。
そして自分と娘で上演権を行使して魔術師として親子で幸せに生きていく道も選べたはずだ。
ザックはポーカーを通じて、当時、最も優秀な弁護士だった霧人を解任し、
その上で成歩堂を高く評価していたので、無罪判決が無理だと思っていたとも考えにくい。
ザックはバランが天斎を射殺したと思い込んでいた様なので、
葉見垣が記事に書いた様に、自分や娘の為ではなく、
本当にバランを守る為に裁判で姿を消したのかもしれない。
バランが師匠を殺してしまったという事実を、ザックは彼なりに重く受け止めていたのかもしれない。
ザックが霧人に殺されずに生き延びた場合、今後はどうするつもりだったのだろうか。
みぬきとバランが2人で仲良く上演権を共有して生きていくのが望みだったのだろうか。

ザックが成歩堂に迷惑を掛け過ぎているという感想も多く見受けられるが、
成歩堂も弁護士の仕事として依頼を引き受けているはずなので、
希代の魔術師であるザックから、主に娘に関するアフターケアの分も含め、
相応の料金の支払いがあったのではないだろうか。
みぬきが養っているとは言え、資格を剥奪されたにも拘わらず、そこまで生活に困っている様子も無い。
高い依頼料で仕事を引退し、楽器を嗜み奔放に生きる成歩堂の生き様は、ある意味で原典であるシャーロック・ホームズを思わせる。
何より大逆転裁判2のホームズが黒幕を追い詰める方法が逆転裁判4のものと酷似している。
この辺りの展開は成歩堂が当初は探偵の設定だった名残だろうか。

ビジネスの関係だからこそ、ザックも遠慮なく成歩堂に迷惑を掛けていた部分があったのかもしれない。
みぬきだけでなく、自分に罪を着せようとしたバランでさえも、ザックにとっては守る対象であった為、
それだけ成歩堂への負担が大きかったのかもしれない。

成歩堂にとって弁護士である事は手段であって目的ではなく、
あくまでも彼の目的は大切な人を守る事である為、
たとえ資格を剥奪されようと裏で事件の闇と戦い続けていたのだろうと思う。
思えば過去作の時点で彼は御剣に再会する為だけに芸術学部の学生から弁護士に至ったのだった。
奇しくも逆転検事2では御剣が大切な人を守るために検事バッジを返上する場面がある。
この様な本質を大事にするという信念は通じ合っているのかもしれない。

シリーズを通してキャタツとハシゴの論争が何度も登場し、本質を重視しようという結論に終わるのも、
実は本質を大事にするべきだという制作者達の強いメッセージだったのではないだろうか。

‥‥って、なに良い感じに締めようとしてんだ!

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待て〜!




posted by くさよ at 10:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム
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