『ファイナルファンタジーVIII』 以下 FF8
※ネタバレ注意
よくFF8は思春期をテーマにした物語だと言われるが、
FF8のテーマは思春期ではないように思う。
まず、思春期という言葉の意味や定義について確認しておこう。
調べてもらえば確認していただけると思うが、
つまるところ思春期というのは
性的な成長に伴って生じる異性に対する考えや意識の変化のことだと言えるだろう。
異性と恋愛をしたり交際をしたり、体を意識するようになったり、
好みの異性に対して積極的に関りを持とうとしたり、
あるいは逆に、揶揄われることを恐れて極端に異性を遠ざけたり・・・、
そんな心の動きのある時期が思春期というものだろう。
スコール・レオンハート 17歳
FF8の主人公である彼は現実世界で言えば高校生くらいの年齢であるため、
たしかに思春期を迎えている可能性は低くはないが
彼が思春期であるか否かという点は問題ではない。
作品のテーマが思春期なのか、思春期を描いたストーリーなのかという点が重要だ。
「だったら壁にでも話してろよ」のセリフに代表されるように
物語が開始してから暫らくは閉鎖的な性格をしているのがスコールと言うキャラクターだ。
この「だったら壁にでも話してろよ」というセリフは
キスティスという女性のキャラクターに向けて発せられたものだが、
もしもFF8というゲームのテーマが思春期であるならば、
スコールはキスティスを女性として意識したため突き放した、
ということになってしまう。
実際はどうなのか?恐らく違うだろう。
スコールが他人を自分から遠ざけるのには他に理由がある。
スコールには幼い頃、姉のように慕っていた人物がいた。
エルオーネというキャラクターだ。
彼は彼女と一緒に孤児院で過ごしていたが
ある日、突然エルオーネはスコールの元を去ってしまう。
その出来事にスコールは大きなショックを受け、その考え方に大きな影響を及ぼした。
もう大切な人を失う苦しみを味わいたくないという考えを持つと同時に、
エルオーネを心配させまいと一人でも強く生きていくという決心をしたのだ。
それ以来、スコールは他人を自分から遠ざけるようになる。
しかし、本編の物語ではスコールはエルオーネの事を忘れてしまっていた。
彼は何故そんな大事なことを忘れてしまっていたのか。
それは、G・Fにはその力を利用すると記憶を失ってしまうという副作用があったからだ。
こうして、自分が一人で強く生きていく決心をした大切な理由も忘れ、
ただ漠然と一人で強く生きようとする悲しき孤独の青年が出来上がってしまった。
それがスコール・レオンハートというキャラクターだったのだ。
そんな彼の考え方も物語の後半では変わってくる。
それはメインヒロインであるリノアを筆頭に多くの仲間と関わったことによる。
そして、エルオーネとの再会や、実の父親であるラグナとの出会いなど・・・。
ズバリ、FF8という作品はテーマとして「愛」を謳っているが、
それは、思春期に関する恋愛というよりは、
兄弟愛や家族愛、そして友達や仲間との友情、そういった「愛」なのではないだろうか。
名づけて『愛と友情、勇気の大作戦』だ!
ところでFF8には幻の列車イベントと呼ばれる通常のプレイでは見ることのできない、
いわゆる没イベントというものがあると言われている。
気になる方は是非、検索して確かめてみて欲しいのだが、このイベントでは、
スコールの女性というものに対する考えを知ることが出来るはずだったのだ。
だが実際には、没イベントや幻という名の通り、
通常のプレイでは知ることが出来ないものとなってしまった。
ここで、こうなってしまった理由を少し考えてみたい。
このイベントを作ってはみたものの、結局は没になってしまった。
これが、意図的に没になったのか偶然没になったのかは断定できないが、
もしも意図的に没になったのだとしたら、当然そこには思惑があったはずだ。
それは、この作品のテーマに関わることではないだろうか?
スコールの女性に対する考え、これは思春期に関する話題であると言える。
そんな思春期に関する話題のイベントを作ってはみたものの、
結局は意図的に没にしたのだとしたら、それは製作者が、
そういう話題をプレイヤーに意識して欲しくなかったのだと考えられないだろうか?
思春期に関するイベントを没にしたということが、
FF8の「愛」というテーマが、
恋愛のような思春期に関するものとは、また違った愛であることを裏付けている、
あるいは強調していると言えるかもしれない。
と、ここまで長々と語ったが
当然、物語をどう解釈するかはファンの一人一人の自由である。
この記事に賛同できる人も、そうでない方も
視点を変えて作品と向き合ってみると、何か新しい発見があるかもしれない。
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