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2025年01月29日

最後の停電@短編小説





町全体が暗闇に包まれたのは、午後11時を少し過ぎたころだった。

「またかよ……」

アパートの一室で、健太はため息をついた。最近、この町では停電が頻発していた。老朽化した電力設備が原因らしいが、復旧作業が終わる気配はない。

スマホのライトをつけ、冷蔵庫を開ける。薄暗い光の中で、冷えた缶ビールを取り出した。電気が戻るまでの暇つぶしに、一人で飲もうと思ったのだ。

缶をプシュッと開けた瞬間、不意に窓の外がぼんやりと明るくなった。停電中のはずなのに、奇妙な光が空を漂っている。

「なんだ、あれ……?」

ベランダに出ると、光の正体がはっきりと見えた。それは、ゆっくりと空を滑るように進む巨大な発光体だった。飛行機やドローンとは明らかに違う、まるで生き物のような動き。

次の瞬間、健太のスマホが勝手に点滅を始めた。画面には見たことのない言語が表示され、ノイズ混じりの音声が流れる。

「……通信成功……移行開始……」

その言葉の意味を理解する前に、健太の意識は急激に遠のいていった。

目を覚ますと、見知らぬ場所にいた。周囲には同じようにぼんやりと立ち尽くす人々。皆、町の住人たちだった。

しかし、その町の空には、もう太陽も月もなかった。

そして電気も二度と戻らなかった。

posted by こーら at 23:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説
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