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2025年01月27日

雨の約束@短編小説





古びた喫茶店の窓際、静かに雨が降る中、遥(はるか)は一杯のコーヒーを前にして待っていた。店内には小さな時計の音と、カップが触れ合う控えめな音だけが響いている。

約束の時間を少し過ぎていた。彼は来ないのだろうか。

「遅れてごめん。」

ドアのベルが鳴り、傘をたたみながら彼――直人(なおと)が現れた。少し濡れた髪に、彼のいつもの無邪気な笑顔が浮かぶ。

「全然、平気だよ。」遥は微笑みながら彼の向かいに座る姿を見守った。

「雨の日にこんな所で待たせるなんて悪かったな。」直人は少し恥ずかしそうに頭をかいた。

「それも悪くないよ。雨の日って、なんか特別じゃない?」遥は窓の外を見つめた。濡れた道路に映る街灯の光が、静かに揺れている。

「特別?」

「うん。空気が変わる気がする。普段見逃していることが、全部鮮明に見えるみたいな。」

直人はふと真面目な表情になり、彼女の言葉を嚙みしめるようにうなずいた。「確かに、そうかもな。こういう日は、いつもより感情が近い気がする。」

二人はしばらく言葉を交わさず、ただ雨音に耳を傾けた。

やがて直人が口を開く。「あのさ……今日伝えたいことがあったんだ。」

遥の胸が少し高鳴る。「何?」

「俺、来月から転勤なんだ。」

その言葉は、雨音と共に遥の心に深く沈んだ。

「そう……なんだね。」

「でも、これで終わりにしたくない。遥と、これからも一緒にいたいんだ。」

遥は驚いた表情を見せた後、静かに笑った。「雨の日の約束、覚えてる?」

直人は少し考えるようにして頷いた。「忘れるわけないだろ。いつか一緒に旅をしようって、あの時もこんな雨の日だったな。」

「じゃあ、その約束、これからも守ってくれる?」

「もちろんだよ。」

雨は少しずつ弱まり、二人の間に新しい未来が静かに流れ始めた。


posted by こーら at 15:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説
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